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「のぼうの城」を観ました。+忍城に行きました。 [映画]

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http://nobou-movie.jp/

最近話題の「のぼうの城」を観た。

原作は読んでないが
実話に沿ったかなりの娯楽作品ということで、
ちょっと期待してみにいきました。
多少ネタバレもありますのでご注意を。

まず感想としては予想よりは面白かったし、
145分という長時間もそんなに飽きさせないものがあった。
これは配役がけっこううまくハマっていたこともあると思う。

最初配役みたときは正直?と思った方もいたが、
その実際は想像以上に全員が作品に同化していた。
特に石田三成の上地さんは想像以上の好演だったおかけで、
豊臣側のそれがじつにうまく引き立っていた。

だがなんといっても最大の見ものは野村萬斎さんの演技だろう。
この無垢な怪人ともいえる成田長親を、
ここまで演じられる人はおそらく萬斎さんだけだろう。
その一挙手一投足がほとんど芸術品といっていいくらい凄い。

共演した佐藤浩一さんも触れていた
佐藤さん演ずる丹波守が萬斎さん演ずる長親を投げるシーン、
その飛び方というか投げられ方が尋常ではない。
とにかく全身まったく骨が無いような
それこそクラゲのようなかんじで投げとばされているのだ。
このとき佐藤さんは萬斎さんの重さがぜんぜん感じられなかったと語られているが、
それくらい萬斎さんの飛び方が絶妙だったということだろう。
しかも倒れた場所の床板にはかなり大きな音が響いているのだから、
このあたりはもう長年培った狂言での舞台の凄さを感じさせられるものがあった。

また不安定な船上での田楽踊りもこの人ならではだし、
とにかくその動きだけでも見る価値満点といったところだろう。

最後に三成にみせる凄味のある表情、
そしてこれをして忍城が「のぼうの城」になった、
もしくは「のぼうの城」であったことを如実に示すこのシーン、
そしてそれを大きく受けた上地さんのそれは、
この映画を〆るのに最高のそれだった。

他にも見所は多く、
かなり楽しめるシーンをこれでもかと詰め込んではいるが、
その割に余計というか無駄なシーンもそこそこあるように感じられた。

ただそれが妙に映画が贅沢を許された時代の残影のようなものが感じられ、
これもまたいいのかなという気がしたものでした。

水攻めのシーンは高松城と忍城のそれとが映画中あるが、
かなり迫力があり圧倒的な感じがする出来となっているが、
正直311の津波のそれがフラッシュバックするシーンも少なからずある。
この映画は2010年の8月から11月に撮影され、
地震発生以前に秋公開が決まっていたものの一年公開が延期されていた。
今回この映画の出来をみて「これはしかたないか」と思ってしまった。
正直あのときのことを思い出したくない方にはお勧めできないものがある。

またこの戦でも有名な甲斐姫は
登場シーンはそこそこあるが戦場で戦うシーンは皆無なので、
そういうのを期待されている方は拍子抜けしてしまうかもしれない。

たしかに事実に即しながらもこれだけフィクションを膨らませているのだから、
甲斐姫がもっとでてきてもおかしくないかもしれないが、
これだけの人物がでてきてしまうと、それは無理という気がするし、
これは「のぼうの城」であって「甲斐姫の城」ではないので、
これはこれで良しとすべきだろう。

とにかくなかなか見所の多い作品だ。
完璧を求められる少々穴が多いという気もするが、
(和尚は津波からどうやって逃げ切ったのかとか…)
そういう細かいことを気にしないで楽しむことをお勧めしたい。

「夏草や兵どもが夢の跡」というけれど、
この映画もそういうかんじの、しかもなんかとても爽やかな後味のある
そんな余韻が残るこれは作品でした。
それは終わってみれば悪人など誰もいなかった、
そんなかんじのノーサイド感がここにはあったからなのかもしれません。

因みにTBSの60周年記念作品ということなので語りは安住アナウンサーが担当。
もう少し低い声の方を起用した方がいいような気もしたけど、
出来そのものは安定していました。


さてこの「のぼうの城」。
舞台となった忍城がある行田市にもじつは以前行っています。

かつての忍城の外側の堀跡を利用してつくられた水城公園。
釣りを楽しまれる方でけっこうにぎわっている。

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水城公園から郷土博物館へ行く途中にC57。ちとびっくり。

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ここが郷土博物館。
かつての忍城本丸跡に江戸時代につくられた御三階櫓を外装としてつくられています。
もちろん中にも入れます。

http://www.city.gyoda.lg.jp/kyoiku/iinkai/sisetu/hakubutukan.html

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この最上階(四階)は展望室も兼ねている。
(この城の部分はエレベーターもエスカレーターも無いので、
足腰の厳しい方はなかなかたいへんかもしれません。)


尚ここに行くには最寄の駅として秩父鉄道の「行田市」駅と
それより少し遠い「持田」駅がある。
だがここは本数がひじょうに少ないことと、
特に「持田」駅は駅から博物館まで歩道がラインでしか仕切られていないので、
少々危ないと感じられるところがある。
そしてなによりも秩父鉄道はSuicaもPASMOも使用できません。
いつもニコニコ現金払いとなりますのでご注意を。

むしろJRの「行田」駅からタクシーかバスを利用することをお勧めしたい。
http://www.city.gyoda.lg.jp/13/02/10/0002.html
(バスの時刻表)

あと少し遠いですがJRの「熊谷」からもバスやタクシーがあります。
タクシーはこちらの方が潤沢と思われます。ただしバスは本数かなり少ないです。

もっとも若い人は天気が良ければ歩くべし!
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JR行田駅から歩いてほぼ40分で水城公園に、
さらにそこから15分ほどで博物館に行けるし、
公園をよらなければもっと早く直接博物館に行けます。
ただ途中まわりにあまり何も無いので風に吹きさらされますので、
寒い日は充分ご注意を。

とにかく映画公開でかなり街も気合が入っているようですし、
博物館も係りの人が取材が増えてきて少々驚いているとのことでした。

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11/25まで特別展示もあるそうです。
http://www.city.gyoda.lg.jp/41/06/11/kyoiku/iinkai/sisetu/moyosimono/index.html

興味のある方はぜひどうぞ。
ただし人気のある甲斐姫のことはこの博物館では皆無です。
実在したとされる資料等が皆無なので実在が疑問視されていることを思うと、
あたりまえといえばあたりまえですが一応念のため。

余談ですが石田三成が本陣を構えた丸墓山古墳は健在で、
しかも頂上までのぼることができるそうです。
秩父鉄道「行田市」駅から歩いて40分、JR「吹上」駅から歩いて1時間のところにあります。

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(「丸墓山古墳」写真。以下の公式サイトより。)
http://www.sakitama-muse.spec.ed.jp/?page_id=159
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「ザ・コーヴ」雑感 [映画]

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http://thecove-2010.com/
(公式サイト)

今話題の「ザ・コーヴ」を観た。
劇場前には複数の警備員、
そして上映前には会場前方にも警備員が配置されるという物々しさ。

たしかに街宣車や上映反対運動等によって
不測の事態がおきたときのことを想定してのことだろうけど
ただそれにしては劇場前はとても静かで
ニュースでやっていた土日の喧噪がまるで嘘のようだった。

自分のいった横浜の劇場はとてもローカルな雰囲気の映画館だった。
TVではここの支配人の方が
この作品の上映をぜったい行うとかなり真剣な表情で話されていた。

ここまでいろいろと場外で話題のある作品なのだから
さぞや劇場の中もと思っていたら
平日午後とはいえあまり人は入っていなかった。
東京と神奈川ではここを含めても2館しか上映してないことを思うと
これにはかなり拍子抜け。

上映までしばらく時間があったのでパンフレットを購入(税込600円)。
これを読むと、至極真っ当なことがいろいろと書いてあった。
「これはけっこう真面目につくった作品なのかもしれない。」
とこのとき思った。

というのも事前にいろいろと耳に入ってくるのはあまり良い噂ではなかった。
それらを聞いていると
かつての壱岐のイルカ漁に対する抗議活動の映画のような
それこそ漁民の死活問題そっちのけの映画で
なんか現代版「生類哀れみの礼」みたいな感じの映画なのかなと、
そう思えてきてしまったのだ。
あの壱岐の時は抗議する側の言いたいこともたしかにわかるけど
「じゃあ地元の漁師さんはどうなるの?」
というそれで、とても辛い気持ちになったものでした。

そういうものが映画になった。
しかもアカデミー賞をとった。
これはどういうことなのか。
ちゃんとイーブンにつくられた映画だから賞をとったのか。
と、とにかくいろいろと想像はしたが
観なきゃとにかくはじまらない。

ということで、ようやく観にいきました。

で、はっきり言わせてもらいます。
この映画は問題山積だ。
というより下手したらダメかもしれない。

ドキュメンタリーというから
自分は日本でのそれを想像していたのですが
ディスカバリーチャンネルのモンスターものの方がはるかに良作だ。

というよりまずこれはドキュメンタリーではない。
それこそ「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のパロディではないかとさえ思ってしまった。
しかも冒頭、自分達は中立みたいなテロップがでてくるけど
正直徹頭徹尾、日本に対して嫌悪感むき出しで、
最初から太地町の人を一部とはいえ悪人とよび、
終わりの頃には「…は日本の売春宿になってしまった。」という意見をのせるものの
肯定的なそれはまるでなし。叩くときは徹底的に叩くというものだった。
「日本が嫌いなアメリカの方って、こういう感じで我々をみてるんだな。」
とそれがわかったのが収穫というくらいのこれは作品だ。

だけどそういうのは日本のドキュメントでもよくある。
だからここで太地町の方々や日本のお役人様を
あたかもアメリカの戦争映画にでてくるドイツ軍や日本軍みたいに描くのも
まあありだろうなと思ってしまった。

だが自分がダメというのは「本当は何が言いたいの?」というくらい
とにかく「何故?」という疑問がてんこ盛り状態だったこと。
それらを以下に書くとこうなります。

(1)
なんでオバリー氏のイルカに対する自分史は延々と語るのに
太地町のイルカ漁の歴史には何故触れないのか?
これやんないと片手落ちもいいころなんですけどね。

(2)
日本の文化なら東京や京都の人が知らないのはおかしいというのは何故?
それとも太地町と東京や京都との距離は
アメリカ的な距離感からみればお隣さんにしかみえないのだろうか?

(3)
太地町から徹底的に嫌われ厳しく対応されたからこの映画ができ
あれだけの有志が集まったのだろうけど、
自分達と太地町の関係がそうなった経緯や
そのきっかけを何故教えてくれないのだろうか?
感情的に拗れてもう話したくないということなのだろうか?
そこが描かれていないからそのあたりの説得力がいささか弱くなってしまっているのに。

(4)
イルカは利口で保護すべき生き物という観点で
それを途中から鯨とからませたこれは面白かった。
だけど同じく途中からでてきた水銀のことはどうなったのだろう。
水俣病まであつかったそれはなかなかだったのに、
夜間のカメラ設置以降、終に最後まで水銀にほとんど触れず終いは何故?
もしそれが大事で、作品内それをより知らしめようと言ってるのなら
それらが入り江からどう運ばれどこに行くのかまで追跡するのが筋というもの。
それが何故かプールでイルカと戯れる男性の笑顔のアップでお涙頂戴したり、
最後イルカの殺し方に論点をスライドさせたままにしてしまったりと、
その詰めの甘さは正直ガッカリ以外の何物でもない。
これでは潜入と盗撮、それにイルカ漁のシーンで面白いところが出尽くしたので
あとはどうでもいいというふうに思われても仕方がないような終わり方だ。

(5)
あとあのラストの首からモニターを提げたあれもどうかと…。
もし自分の作品やイルカの事を思うなら
最後にテロップでもよいから調べ上げた数字やその出展元を
ちゃんとあげた方がまだ説得力があったと思う。
あれでは、
「この人なんだかんだいって結局またイルカを出汁にして名前売ってるだけじゃん。」
と言われる危険性があることを何故考えなかったのだろうか。

(6)
そしてどうして観る人にいろいろと考えさせないのだろう。ということ。
最初から中立をうたうのであれば
矢継ぎ早に自分達の意見ばかり言いまくり、
そうでないときはBGMにのせたイルカのシーンや
女性の涙ぐんだシーンとか
そういう感情移入したくなるようなシーンばかり入れて
ひとつの方向にばかり強引にもっていくやり方はいかがなものかという気がする。
冒頭のテロップといい、オバリー氏のイルカへの贖罪という気持ちも
これでは何か「しらっ」としてしまう。

以上です。

特に(6)は自分にはかなり抵抗があり
酷い言い方かも知れないがこれでは「振り込め詐欺」と手法が同じとさえおもってしまった。
あと(5)でも触れたラスト。
それこそあれを「日本のいちばん長い日」のラストみたいに仕上げてたら
おそらく自分のこの映画への考えはかなり変わっていただろう。

あともうひとつ付け加えると、とてもひっかかるシーンがあった。
それは「殴ったら思うつぼ」とオバリー氏側が言うシーンがあるが
その直後住民が激しくオバリー氏側に恫喝するような言い方をするシーンがある。
(住民の顔が日本公開版のみ処理施されている。)
これなどその行為を引き出し、「思うつぼ」を実践したかのようにみえてしかたなかった。
随分と狡猾なやり方に感じたのは気のせいだろうか。

まあとにかくこんな練度の低いドキュメントがアカデミー賞とは正直驚きだ。
最近のアメリカ映画によくある
掴みと最後の見せ場さえできてればあとの?は多少どうでもいいという
それがここでじつによくでてしまったというべき映画だろう。
とはいえこれが賛辞され、アカデミー賞をとるのをみていると
やっぱりアメリカ人にとって日本人って鬱陶しい存在なんだろうなあ。
と考えさせられてしまうものがあります。

とにかく見終わってかなりガッカリの作品だった。
これでは街宣車まで持ち出した右翼の方や命賭けると行った映画館の支配人の方、
そしてなにより当の太地町の方々は
心の底で「なんじゃこりゃ?」ではなかっただろうか。

ただこれがもしドキュメンタリーではなくたんなるフィクションだったら、
これはこれでこの作品、かなりの娯楽作品といえる出来。
カメラワークもなかなかいいし
けっこうベタな演出だけどドキドキワクワクするシーンもある。
これで地元協賛でつくった作品ともなればそれこそ町おこしにもなる。
まさに言うこと無しの最高の話題作だ。

だが不幸にしてこれはそういう作品ではない。
「GODZILLA」を「ゴジラ」と思わなければ面白いというのと同じ…
ではすまない作品なのだ。

とにもかくにもこの映画は問題山積です。(撮影手法も含めて)
まあDVDになって見直したらまた違う発見があるかもしれませんし、
見落としや勘違いもあるかもしれませんが…。

この映画を高く評価したり好きな方には申し訳ありませんが
今のところこれが自分の偽らざる感想です。

しかし本来はもっと重く深刻な話なのに
この観終わった後の軽さというか虚しさというか。
これはいまひとつ真摯に踏み込んでくれなかったことへの恨みのなか、
それとも…。

なんか期待が大きかっただけに観終わってとても疲れました。
なんなんでしょうね、この映画。


(以下 2010,7/7 追加)

7/6の1930から放送されたNHKの「クローズアップ現代」で
この作品のことが取り上げられていた。
そこでは自分が感じていたいくつかの疑問が触れられていたが
それをみていたらこの映画、
暗にシーシェパードを擁護し支援しているのではないかと
さらにその姿勢に疑問を感じてしまったものでした。

あとここでは横浜の映画館の支配人のところに
上映中止をもとめる抗議活動がされたということもふれられていました。
これそのものは別に悪いことでも何でもない。

こういう考えもあるから
ぜひ一考しこちらのそれも聞いてほしいということで
むしろ当然といえることだろう。

だが近隣の人達には何の落ち度もないし
「こうなるのはこいつが悪いからだ」は
逆にこの活動の真意そのものが疑われる可能性があるし
現在世界各地で行われているテロ活動の考えと、
一部重なるものがあるととらわれかねない危険性もある。。
抗議側の立場もわかるだけに
これには支配人だけでなく抗議側に対してもとても心配なものがあった。

けっきょく映画はここだけでなく各地で公開された。

横浜は入りがいまひとつだが渋谷は盛況だったという。
正直アカデミーとったとはいえ
この映画そんなに人が入る類のものではなかった。

それを思うとこの騒動、いったい誰が得をしたのか?
たきつけた監督やオバリー氏を含む映画製作サイドではなかったのか。

すでに上で住民に恫喝させるような行為を引き出し映像化したことをふれたが
これと同じ手法を彼らはここでもとらせていたのではないか?
いわばこの騒動を喜び、予想通りとほくそ笑んでいたのではないか。

映画館の支配人も抗議活動をしていた人も
そしてこの映画をその話題で見に来た人も
全部その手のひらで踊らせていたのではないかと。

たしかにこういう興行ものにはそういう面もあるし手法もある。
だが人の犠牲や熱意までも手玉に取ることははたしてどうなのだろう。

これではイルカ漁をしている太地町の住民を悪というなら
その住民や多くの関係者を利用したこの映画も同じ穴の狢とはいえないだろうか。
言い過ぎかもしれませんが、そう思えてしかたありません。

ほんとうにもうなんともいえない気持ちといいますか
ちょっと言葉にならない感覚を自分は感じはじめています。
こんな気持ちになった映画を観たのは生まれてはじめてです。
(ひょっとして二度目かな?)

最後に。

世界に向けてこれだけのことを映画という媒体を使って発信したのですから
今後は監督もオバリー氏も「伝える人間」としての責任をもって
より真摯な姿勢をもってドキュメンタリーをつくってほしいものです。
それだけの力と行動力は間違いなくあるのですから。


(お詫びと訂正)

「太地町」のことを「大地町」と書いてしまいました。
映画もあれですが自分もかなり情けないですね。反省します。
申し訳ありませんでした。
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大怪獣バラン [映画]

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東宝が1958年に公開した特撮怪獣映画。
おそらく最後のモノクロによる東宝怪獣映画だと思う。

当初はアメリカのTV放送用として製作されたらしいのですが
キャンセルをくらい劇場用に変えられたとのこと。

このためモノクロとなってしまったのですが
作品としてはそれにしてはなかなかよくできている。

たしかに「ゴジラ」や「ゴジラの逆襲」からの転用が
いくつかみられたりしているが
これはこれでなかなか効果的に使用されているし
伊福部サウンドは既存の曲も含めてとにかく健在だし
映画のもつ雰囲気もなかなかいい。

ところでこの作品の雰囲気ですが
「ラドン」や「地球防衛軍」よりも後の作品なのですが
何かそれよりも前
「ゴジラの逆襲」の後くらいにつくられたかのような
古き良き時代のモノクロ怪獣映画、
そんな雰囲気の出来ともいえますし、
もし「ウルトラQ」の劇場版があったら
こんな雰囲気のつくりになっていたかもというような
やや独特の異世界感的雰囲気をもった出来ともいえると思います。

それにしてもこの作品。
その後かなり冷遇されたのか
正直あまり話題にも上りませんし
ラドンやモスラ同様
一枚看板で映画になったにもかかわらず
その後ラドンやモスラがゴジラ映画のセミレギュラーになったにもかかわらず
バランは「怪獣総進撃」のときちょこっと姿をみせたのみで
その後はまったく姿をみせなくなってしまいました。

同作では「キングコングの逆襲」にでていたゴロザウルスも活躍したし
「フランケンシュタイン対地底怪獣」にでていたバラゴンも
平成ゴジラで復活しているがバランは未だまともには…だ。

まあたしかに最後はこの手の怪獣としては
「えっ?これで終わりなの?」
みたいなところもあり
それが災いしたのかもしれない。

またTVでもめったに放送されない作品らしく、
自分も相当以前に日本テレビの日曜夕方にみたような記憶が一度あるだけで
それ以降一度もみたことがない。

現在のようの他チャンネル時代になってからは
ひょっとすると放送されたのかもしれないけれど
とにかくその知名度は現在も低いといえる。

いや名前を知っていても
見た人がおそろしく少ないといといった方がいい作品かもしれません。

まあたしかに「ゴジラ」や「ラドン」を超えるとは言わないけど
極端に低くみられる作品でもないという気がします。
言われているような問題の多い台詞があるからというのも
「そうかなあ?」という気がします。
(たしかにいくつか「あれ?」という台詞があるような気がしますが、
 むしろ「もっと早く走れよ!」といいたくなるシーンの方が…)

現在はDVDでしかみることができないのであれですが
もし見る機会がありましたら
この忘れられた作品をぜひご覧になってみてください。

けっこうそこそこ面白い作品だと思います。

以上です。

(以下余談)
しかし桐野洋雄さん。あっさり死んじゃう役だったなあ。
この人けっこう存在感あって好きだったんだけど
ときどき「ゴラス」といいいきなり早々と退場しちゃうんだよなあ。
うーん残念。
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「火星人地球大襲撃」雑感 [映画]

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イギリスの1967年にイギリスで製作された
クォータマス教授シリーズのSF第3作。
原題「QUATERMASS AND THE PIT」。

まだ自分が子供だった頃
TVでこの作品をみたことがあった。
そのときはTVがそうだったのか画面がモノクロだったせいもあって
何か異常に怖いSFだったという記憶があった。

そんな作品を久しぶりにみた。
今回はオリジナルのカラーということで
かなり印象が違ったけどかなり面白い作品だった。

ただ難点を言えば
超低予算映画だったせいかBGMもそうだけど特撮シーン、
特に肝心の火星人がらみのシーンが
とにかく恐ろしいほどチープだったこと。
もうおもちゃか手おどり人形みたいな
イナゴ火星人が次々とあらわれて
それこそ第一回「なんじゃあこりゃあ?」大会状態に。
あまりにも情けなくて涙も出ないほど
とにかくこの部分だけはみてて凹んでしまったものでした。

これじゃあ日本で劇場未公開になりますよ。まったく。

だがBUTしかし!

ストーリーをはじめとした内容はかなり面白い。
仕掛けばかりでかくて
もし最初の30分だけを対象にしたアカデミー賞があったなら
それこそ毎回受賞しそうな映画ばかりの某監督作品に比べ
遙かにいろいろと盛り込んだ作品となっている。

個人的には「宇宙戦争」や「地球最後の日」と並んで
ストーリーや設定のみなら最高の部類にはいる作品と
自分は思っています。

ただイギリス映画ということで
なんとなく暗い雰囲気で
最後も明るい終わり方とならない。

また邦題のような火星人そのものが大襲来するわけでないので
そういう意味では地味な作品といえるかもしれない。

だけどそれでもかなり面白いし怖い内容となっている。
もし可能ならこれを白黒でみると
さらにその雰囲気が増すだろう。

火星人、人類の進化、ポルターガイスト、残留思念、等々…

とにかくいろいろな要素を盛り込んだ
異色なSF映画だ。

「宇宙戦争」や「地球最後の日」が
リメイクされたりされるという今日この頃。
できればこの「火星人~」もリメイクしてほしいところ。

この作品の良さをそのまま残して
特撮とBGMを一新すればかなり見応えのある作品になるだろう。

あとこの作品
「スペースバンパイヤ」とかなり雰囲気が似ているが
その原型になった作品とも言われているとか。

とにかく知る人ぞ知るSF映画の佳作です。
みる機会がありましたらぜひどうぞ。

まあ面白いか死ぬほどガッカリかは見る人まかせではありますが…。
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妖星ゴラス [映画]

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東宝が1962年の3月に公開した特撮SF映画。

かの名作「世界大戦争」と
「キングコング対ゴジラ」の中間に公開された作品。

ベルリンの壁ができ
キューバを軸にアメリカとソ連が不穏になりはじめ
核実験も行われていた冷戦時代の核への恐怖を
そのまま映画にしたような「世界大戦争」に対し、
そういう世界がすべて一丸となってゴラスの危機に立ち向かうという
ある意味SFというだけでなく
世界がひとつになることをその根底に願いを込めたのが
この「ゴラス」だった。

しかし地球に巨大彗星や惑星等の衝突危機を描いた映画数あれど
地球を動かして衝突から逃れようとするという
そんな発想の映画など自分はこれしか知らない。

突飛というかなんというか
ただとにかくその発想は最高に面白い。

たしかに今見るとちと感覚的に合わないシーンがあったり
ちょっとこのシーンは蛇足かなあ?と思われるところもあったり
それ以上にあんな火の炊き方したら地球が動く前に
地球全体が異常高温に包まれないか?みたいな疑問や
突っ込みどころがなかなか多い作品だけど
みているとそんなことどうでもいいくらいなんかとにかく面白い。

TVの一般家庭普及率が50%近くなっていた時代ではあったけど
まだまだ日本映画が元気だったことを感じさせられる作品だ。

特にゴラスが最接近するシーンの緊張感の盛り上がりは
今見てもかなり見応えのあるシーンとなっている。

それにしても地球の6000倍の質量をもちながら大きさは3/4という設定も面白いが
それ以上に面白かったのが
舞台が1982年だったということ。

「2001年宇宙の旅」もすでに過ぎてしまっているけど
この「ゴラス」はもう舞台設定からすでに30年近くが過ぎようとしている。

未だに37人乗りの秒速11キロの
土星よりも外へ楽々と行ける有人宇宙船などできてはしないが
この映画の当時はあと20年もあれば
そんなロケットができてもおかしくないと
そう誰もが思っていた時代だったのだなあと
なんか不思議というか微笑ましいというか
世界情勢は不穏かつ緊張状態のあった時代だったけど
宇宙に対する夢はとてつもなく大きな時代だったんだなあと
そう感じさせられる作品でもありました。

そういえば翌年からTVで放送された「鉄腕アトム」
そのアトムの誕生日は2003年だとか。
原作開始から約50年後
TV放送開始から40年後が舞台というから
「アトム」も「ゴラス」も
宇宙や科学の未来に対しての夢と希望が詰まりきった
それこそ地球上の犯罪や戦争すべてを根絶できるほどのものを
とにかく人々がこの時代にそれらを強く持っていたことを
色濃く投影した作品だったのかもしれません。

因みに自分がこの映画で特に好きなシーンは
先の地球に最接近するシーンと
土星の輪がゴラスに吸い寄せられるシーンです。

まあ今(2010)から半世紀近く前のSFなので
それらの各シーンも
今からみるとかなり素朴なSF特撮かもしれませんが
自分にとっては先の「ドゴラ」や
一連の初期昭和「ゴジラ」作品群と並んでお気に入りの映画です。
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宇宙大怪獣ドゴラ [映画]

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東宝が1964年8月に公開した特撮映画。
「モスラ対ゴジラ」と「三大怪獣地球最大の決戦」の間に製作
公開された怪獣映画ですが、
東宝の特撮怪獣映画の中でも最も異色な作品。

というのもこの映画にでてくる怪獣は初の宇宙怪獣
しかも形があるような無いような
なんとも不思議で不気味な怪獣なのだ。

いや作中でも言っているけど
怪獣というより宇宙細胞と言った方がいいようなのがドゴラの正体。

ただその雰囲気というか登場するシーンはなかなか緊張感がある。
最初の煙突をもちあげるシーンや
北九州の夜にその全貌を表すシーンは
それほど長いシーンではないけどかなりインパクトが大きい。

また作りも後の子供向きというものが無く
あくまでも一般娯楽作品のひとつという姿勢
アクションありコメディありと
当時の東宝のいろいろを放り込んだ作品で
しかも特撮組からいわせると
ある意味「怪獣やり尽くし感」直後の
実験的な特撮怪獣映画だったとか。

とにかくゴジラやウルトラマンみたいなものを予想すると
けっこう肩すかしを食うかもしれませんが
映画全盛末期の娯楽作品のひとつとしみると
なかなか贅沢な作品といえるかもしれません。

しかも鉄道ファンには新幹線開業前の
当時の特急「さくら」が内装を含めでてきたり、
若林映子さんがなかなかの役で
「007」のボンドガールに抜擢されたのもうなずける艶やかさ。

そしてなんといっても衰退期には入っていたものの
まだまだ炭鉱の需要が少なからずあった
当時の北九州の状況も垣間見られるという
なかなか貴重なシーンもある。

しかもこれだけ詰め込んで81分。
ある意味見事といっていいと思う。

最後は特撮ものとしてちと物足りないかもしれないけれど
今から(2010)半世紀近く前の作品ということを思うと
全体的によくできた作品といえると思うし
北九州を襲う巨大ドゴラの不気味さは秀逸なものがあります。
(ドゴラのそれはまあ「トレマーズ」の1と2のそれが
ひとつの作品にでてきたようなと言えばおわかりかもしれません。)

もし今CGでドゴラをリメイクしてつくったらどんな感じになるのだろう。
個人的には「ウルトラQ」のペギラとともに
リメイクしてほしい怪獣のひとつです。

ただあの北九州襲撃シーンの凄さを再度作るのは無理かなあ。

以上です。

これみてると「火星人地球大襲撃」がみたくなってきました。
「火星人地球大襲撃」はいずれまた。

因みにガンダムSEEDの音楽を担当されていた佐藤俊彦さんは
この「火星人地球大襲撃」あたりのジャンル大好き人間とか。

「ドゴラ」好きかなあ…。

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「劒岳 点の記」雑感 [映画]

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昨年(2009)公開された「劒岳 点の記」のDVDを購入した。

劒岳という山は自分の実家が新潟ということもあり
小さい時からよく知っていた。

その山を舞台にした小説が
同じ作者新田次郎氏の小説「八甲田山」の映画公開時に
新聞で宣伝されていたのをみたのが
この作品を知った最初だった。

だけどなぜかこの小説は気になってたけど
なぜかなかなか読むことをせず
そうこうしているうちに映画になってしまった。

で感想としてはとても好きな映画であり
静かな映画だったということ。

実話を基にしたこの作品。
原作を読んでいないのであれなのですが
静かで強い人達が
大きくかつ厳しい自然の中で
ひとつのことをやりとげるということにつきるのだろうけど、
その静かさが
より自然の厳しさを際立たせている気がしたものだった。

多少これで大けがしないの?とか
頂上に至る直前がなぜか省かれるような演出があるところ
など少し物足りない気がするけど
それでもこれは個人的にとても好きな映画となった。

とにかく次々とあらわれる風景が素晴らしい。
それらをけっこうじっくりとみせてくれるので
印象にどれもこれも残るものがある。

たしかにびっくりしたりするものはないけれど
自分のように登山経験が無いものにとっては
このどれもが強く心に留まるものがあった。

ところで当時の登山は今より遙かに厳しいたというものだったという気がする。
装備といい情報といい今よりずっと貧しい状況だったろう。
ある意味決死の覚悟で剣岳を登っていたであろうことは容易に想像ができる。

そういえばかつて上野から長岡に上越線経由の夜行普通列車があった。
この列車を利用して当時谷川岳を登った人が多かったが
谷川岳でり遭難者が多かったことからこの列車は
「親不孝列車」とよばれていた。
そんなことをこの映画をみていてふと思い出してしまった。

それにしても繰り返し言いますが自然がじつに美しい。
それは厳しさ無くして存在しない美しさなのたろうけど
ほんとうに素晴らしい美しさがある。

おそらく監督もこれらの自然をこよなく愛している方なのだろう。
ひょっとすると頂上直前のシーンがあのようにあっさりとなったのは
愛してるがゆえどうしてもその最高の瞬間が満足に映画に投影できなかった
その結果だったのかもしれない。
惰性や妥協で描くくらいならこの方がいいし
自分にも観客にも嘘をつかなくてもすむ。
それくらい自然に対して強い愛情と畏敬の念をもたれている方なのかもしれない。

劇場の大画面でみたらもっと圧倒されただろうけど
自宅のTVでも充分堪能できた「劒岳 点の記」
山以外のシーンはけっこうあっさりしているので
ラストなどあっさりしすぎていると思われるかもしれないけど
それだけにより剣岳の印象が強く残るものとなっていました。

最後に、
俳優さんもじつにいい人が揃っていました。
特にメインの二人、浅野さんと香川さんがじつによかったです。
香川さんは以前
「双頭の悪魔」というドラマで初めてみたとき
いい役者さんだなという気がしたのですが
今では押しも押されもせぬ名優になられているようです。
ここでも香川さんの宇治長次郎役はじつに見事なものでした。

とにかくほんとうにいい映画でした。


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「明治天皇と日露大戦争」と「日本海大海戦」 [映画]

「坂の上の雲」の放送がNHKで放送されている。
三年がかりで毎年12月に放送されるとのことなので第二部までしばらくの間が空く。

ところで日露戦争を描いた映画というと忘れてはならない作品が二つある。
ひとつは1957年に公開された「明治天皇と日露大戦争」(1957)
もうひとつが1969年に公開された「日本海大海戦」(1969)
である。

最初の作品は当時の天皇誕生日に封切られた作品ですが
観客動員数がなんと1300万人(一説には2000万人)というもので
記録映画の要素が強い作品やアニメーションを除けば
邦画劇場作品の観客動員数では未だ第一位という作品だ。
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD25266/index.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%B2%BB%E5%A4%A9%E7%9A%87%E3%81%A8%E6%97%A5%E9%9C%B2%E5%A4%A7%E6%88%A6%E4%BA%89

明治天皇を中心とした日露戦争全般を描いた映画で
かなり日露戦争をコンパクトにまとめたものとなっている。
ただ戦後十数年でこういう映画がよく撮れたなという気もする。

続く「日本海大海戦」はその12年後の作品で
東宝の「8.15」シリーズの第3作。
こちらも新東宝同様オールスターキャストの映画で
円谷英二の遺作となった作品でもある。

http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD22739/index.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B5%B7%E5%A4%A7%E6%B5%B7%E6%88%A6

こちらはタイトル同様海戦中心の映画で
「明治天皇」のような奉天大会戦は描かれていないし。大山元帥も出てこない。
だが海戦シーンはその分なかなか気合いが入っている。

なにしろ1/10の三笠を作ったり
東宝の大プールに日露大艦隊をたくさん集結させたりと
とにかくかなりのものだった。

この両作品は現在DVDも発売されているが
それを比較してみると面白い。
特に両作品ともメインにしている日本海海戦の比較はなかなか面白いものがあります。
因みに上の画像が「明治天皇と日露大戦争」
下の画像が「日本海大海戦」となっています。


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mt6.jpg

オープニングのこのタイトルは両作品の性格を如実にあらわしています。
前者の荘重な雰囲気、そして後者の佐藤勝の音楽に乗せた独特の海の疾走感が素晴らしい。


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以下は日本海海戦のシーン。
まず鎮海湾から連合艦隊が出撃するシーン。
東宝の特撮における意気込みがその量感に表れている。
ただ雲の描き方には大差が無い。
このあたりの技術は早い時期に基礎が確立されていのでしょうか。


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続いて双眼鏡でみたバルチック艦隊。
船の数が違うなあというのが第一印象
これは感覚の違いというべきなのか。


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三笠艦橋の様子。
前者はこのシーンが多いがこれは日本海海戦を描いた絵画によるところかもしれません。
これに対して後者はいろいろなアングルでとられているが
特にこれはかなり秀逸だし迫力もある。円谷さんの凄さを感じるシーンでもある。


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連合艦隊の戦闘シーンだが
前者はこれまた日本海海戦を描いた絵画を参考にしたような絵画的なものがある。
これに対して後者はスペクタクル的な量感と迫力が素晴らしい。
もっともその後者にしても今からみるとたしかに弱い部分も多々あるけど
気持ちが凄く伝わるシーンが両作品とも実に多い。


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それは例えば上のシーン。
前者の艦艇の爆発シーンはじつは後者以上に迫力があるものがある。
全体的には後者に迫力質感ともかなわないが
部分的にはそれを上回るシーン、印象に残るシーンも多々ある。
半世紀前のカラーの日本の特撮映画としてはよくやったというべきだと思う。
因みに東宝はこの年「地球防衛軍」を製作している。
「バラン」や「美女と液体人間」はこの翌年。

そして後者ももちろん見所が多いが
やはりその奥行きの広さを感じさせる戦闘シーンが見物だろう。


どちらもじつによく出来た映画といえる。
たしかに多少事実と違う、もしくは単純な誤りと思われるシーンもあるが
日本映画の元気さを感じさせるものがあります。

だけどその映画の性格というかその色合いは
そのラストシーンにあると言えるのかもしれません。

ですがそれはここでは見たときのお楽しみということで
以上で〆です。

尚、今月(2010年1月)の25日は
「日本海大海戦」の特撮を担当された
円谷英二さんが亡くなられてちょうど40年目にあたります。
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戦争と平和(ソ連版) [映画]

トルストイの「戦争と平和」には二種類の映画がある。

ひとつは1956年にアメリカが製作したもので
オードリー・ヘップバーンとヘンリー・フォンダが出演。
(後に「シャーロック・ホームズ」で有名になったジェレミー・ブレット も出演)
音楽をニーノ・ロータがやった208分の大作だ。

そしてもうひとつが1965年から1967年にかけて
トルストイが「戦争と平和」を発表し百年を記念してつくりあげた
全四部からなるじつに425分という超大作だ。


ただし425分というのは現在における完全版の長さでして
実際のオリジナルはこれより長大だったらしいというのだから気が遠くなりそうだ。

この作品は祖国の作品を当時敵対視していたアメリカに先を越されたということで、
その雪辱と名誉と国の威信をかけてソビエト政府が総力をあげたつくりあげたものだが、
未だその総製作費や総エキストラ数等の詳細が不明といわれている作品だ。

一説にはかの「タイタニック」三作品分の製作費がかかったとか
エキストラが12万人以上だとか言われているが定かではない。
ただロケ地が150カ所以上だったり
一言でも台詞のある俳優が300人以上いたというのだから
とにかくこの映画ただ者ではない。

この映画
セルゲイ・ボンダルチュクが制作、監督、脚本、
そして主役のピエールを演じているが
個人的にはこの主役がじつにすばらしい。
駄目人間から次第に変わっていくピエールをじつによく演じきっている。

またヒロインのナターシャ役のリュドミラ・サベーリエワもじつにいい。
キーロフ劇場のバレリーナだったリュドミラは気品に満ちており、
しかもナターシャの成長とドラマを見事に表現している。
一説にはヘップバーンに雰囲気の似た人ということで抜擢されたという話もあるけど、
とにかくこのキャスティングは大成功だ。
リュドミラ自身もそうとうこの役に全霊を打ち込んだようで、
後に来日したときにこの作品でバレエを断念せざるを得なかったけど
それは後悔していないということと、
娘に「ナターシャ」という名前をつけたことを語っていた。

とにかくこの二人の演技は
このともすれば間延びしまくりそうな大作映画を
じつに見事に引き締めている。

だけどやはりこの映画の見所はその出し惜しみなしのシーンの多さだろう。

宮廷での舞踏会のその会場の巨大さ。

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しかもそこにある装飾品のいくつかは
実際に美術館や博物館から借り出したもので
中には国宝ものの逸品もあったとか。

またアウステルリッツやボロジノの戦いでの
膨大な歩兵の数や、大砲群や騎馬隊の信じられない数。

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兵士役は当時のソ連軍からほとんどが駆り出されたというけど、
製作費にはこの何万人もの兵士への出演費や
彼らがそのロケ地にいるための宿泊所や食事等の生活にかかった費用。
そして何よりも彼らをそこまで移動させるための費用などは
一切含まれていなかったとか。

そしてモスクワ炎上シーンでは
ひとつの街をつくりそれを丸ごと燃やすという
とんでもない撮影等々。

そして音楽もオフチニコフ指揮のモスクワ放送交響楽団+合唱団。

いまやったら間違いなく
映画会社のひとつやふたつ簡単にふっとんでしまいそうな
とんでもない出し惜しみなし映画である。

だけどそんなこの巨大映画で自分が気に入ってるのは
ときおりみられる美しいシーンの数々だ。
ボロジノの戦い前に多くの人々や兵士がこぞって聖母に祈りを捧げるシーンは
その音楽もあってかまるで荘厳壮大な絵画をみているようだ。

bp6.jpg

それらのシーン中のひとつに第二部の幕切れ
ナターシャに告白したピエールがその空を仰ぎみるシーン。
空には彗星が尾を引いてるが
じつにそれが美しくピエールにはみえていた。

B1.jpg

B2.jpg

B3.jpg

だがモスクワの人々はそれを不吉な前兆として
凍り付いたような目で見上げている。

というまさに彗星が戦争と平和そのものを象徴しているようなこのシーンが
その甘味な音楽と一転激しい音楽へとなるそれと相まって
ひじょうに強く印象に残っています。

まあめったにみる機会は無いかもしれませんが
興味と機会がありましたらぜひご覧ください。
一応DVDBOXもでてますが高いですし
画質も当時としてははたして良好なのかどうか。

あとナレーションがまるで朗読のようで
ときおりフランス語の台詞とかぶるのがけっこう嫌な人は嫌でしょう。

因みにサントラは現在でていないかもしれません。

かつては国内盤で40年ほど前に二枚組のLP。
そして輸入盤では20年以上前に一枚もののLPでメロディアからでていました。
自分は後者を当時イギリス経由で入ってきたものを購入
現在はLPが聴けないので知人に無期限で貸し出しています。

以上です。

しかしこの映画いつかじっくり語ってみたいなあ。

あ、あとこのDVDは日本語吹き替えがありません。
今度再発されるときはぜひ今の方々で新しく吹き替えしてほしいです。
(かつてTVで放送されたのは完全版ではなかったようですので。)
それにしても誰がナターシャ、ピエール、アンドレイをやるのでしょうか。
ちょっとそのへんもたのしみです。

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映画のTVCM [映画]

ここ数年映画のTVCMで
ちょっと気になるものがあります。

それは試写会に来た人
もしくは「そうみえる」人達の
一言コメントを挿入する手法。

「感動しました」
「最高!」
「泣いちゃいました。」
「これしかない!」
等々…

最初の頃はなかなか面白いと思ってたけど
最近ちょっとこれに…という感じです。

なんかわざとらしいというか、
ウケ狙いみたいなものが多いというか、
しかもこれに時間を割いているため
肝心の本編の映像が以前よりも短くなっていて
ものによっては???というものさえある始末。

そんなときは
「この映画よっぽど見るべきシーンが無いのかなあ。」
と、悪いですが思わずおもってしまいます。

まあ当分はこういうやり方が主流になるのでしょうが
こればっかりだと「どうなんだろうね」というかんじ。

まあこの方法も駄目というわけではないのですが
もう少し本編とのバランスとか
コメント内容を吟味してやった方がいいのでは?
と思った次第。

〆です。
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