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山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団を聴く。(09/02) [演奏会いろいろ]

ウォルトン山田.jpg

2023年9月2日(土)
サントリー・ホール 14:00開演 

曲目:
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525
J.S.バッハ(齋藤秀雄編曲):シャコンヌ
ウォルトン:戴冠式行進曲《宝玉と勺杖》
ウォルトン:交響曲第2番

指揮:山田和樹


昨年からとにかく今まで実演で聴いていない曲、オーケストラ、そして指揮者を聴いているけどこれも今回の演奏会もそのひとつ。

指揮者の山田さんもそうだしモーツァルト以外のすべての曲も今回実演では初。しかもその初めて聴く三曲は今回聴き逃すと次いつ聴けるか分からない曲ばかりというもの。

まず最初のモーツァルト。

てっきり10型前後の規模でやると思っていたら、フルサイズというので驚いた。

ただずっと全員が弾いているのかというとそうではなく、曲想が変わる度にひとつのセクションのうち半分程のメンバーが休んだりしていて、しかもそれがかなり頻繁に行われていた。

これにより強弱だけでなく音質や遠近感を表情豊かに仕掛けようという感じらしく、じっさいなかなか表情豊かな音楽がクリアな響き中で描かれていた。ただ全体的に聞くとそこには奇をてらったようなものは皆無で、むしろ正攻法で押しているように感じられた。

そして第四楽章は最初から最後まで全員で、しかもしっかりとした足取りでひとつひとつの音を丁寧に紡いでいくかのようで、じつに心温まるようなものが感じられる演奏でした。

細かく聴いていくといろいろと細かく凝らしているものの、聴き終わると真っ当な正攻法という、言うは易く行うは難し的な演奏だったような気がします。

あと自分は後ろの方だったのであれですが、前の方にいた方は視覚的にもなかなか楽しめる演奏だったのではないでしょうか。


次のバッハ。

この曲の編曲というとストコフスキーのそれが自分は印象に残っていて、情念的かつ管楽器の劇的な咆哮みたいなイメージがあるのですが、オルガン奏者のストコフスキーに対し、齋藤秀雄氏の場合は弦楽器出身ということなのか、ストコフスキーに比べて弦がかなりものを言ったような編曲という気がし、劇的ではあってもストコフスキーほどの情念的なものより詩的な侘しさみたいなものが強く感じられた気がしたのですが、ただこれは山田さんの指揮のそれもあったのかもしれません。

これを聴いていて齋藤秀雄さんがいたころの桐朋オケの弦が「N響を含めた日本のすべてのオケでいちばん上手い」と言われていた事を思い出してしまいました。


このあと15分の休憩の後ウォルトンの二作品。

両曲ともウォルトンが戦後イタリアに移り住んでから書かれた作品だが、行進曲はともかく交響曲の方は戦前に書かれた交響曲第1番に比べていまいち人気が低く、特に日本ではあまり演奏されたことが無い気がする。

たが個人的にはこの2番は大好物なので願ったり叶ったりだった。

(因みにこの曲を聴いていると、彼の作曲した1969年制作の映画「空軍大戦略(Battle of Britain)」の音楽の雛型みたいなものがあちこちに聴かれるのが面白く、この曲が偶然にも英本土航空決戦勝利から20年、第二次大戦終結から15年の年に初演されたこともあって「Symphony of the Battle of Britain」のように感じてしまう時があります。そういえばその前に演奏された「宝玉と勺杖」にもやはり映画を想起させるようなメロディが出て来るけど、この二つがこの日続けて演奏されたのはただの偶然なのだろうか)

行進曲の格調の高い演奏も見事だったけど、一聴するととっつき難い感じの交響曲がとにかくクリアかつ見通し良くそして聴きやすい。第一楽章の弦の柔らかさの中に緊張感も上手く含ませた響き、打楽器の攻撃的かつバランスのよい咆哮、そしてそれがひとつとなっての一種のカッコよさ。第二楽章の清澄なそれでいてじっくりと歌いこまれる詩的な美しさ。第三楽章の不気味さと緊張感の交錯、そして高揚感からの最後の輝かしい帰結。とにかくそのどれもが理想的ともいえるほど素晴らしいものでした。

因みに9月2日はこの交響曲が初演された日。

そんな日にこれだけの演奏がされたら、天国にいるウォルトンも大満足だろう。


あと日本フィルの音がとにかく冴えていた。

これだけクリアで見通しのよい音楽だったのは、この日の日本フィルの音の冴えも大きかったと思う。新しい首席指揮者を迎えてモチベーションも上がっているのかも。これからがとても楽しみです。

尚、山田さんは来年以降もイギリスの交響曲を取り上げると言っていたけど、できれば来年は没後百年を迎えるスタンフォードの3番か6番、もしくはバックスの4番か6番あたりをお願いしたいものです。

以上で〆

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