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戦争と平和(ソ連版) [映画]

トルストイの「戦争と平和」には二種類の映画がある。

ひとつは1956年にアメリカが製作したもので
オードリー・ヘップバーンとヘンリー・フォンダが出演。
(後に「シャーロック・ホームズ」で有名になったジェレミー・ブレット も出演)
音楽をニーノ・ロータがやった208分の大作だ。

そしてもうひとつが1965年から1967年にかけて
トルストイが「戦争と平和」を発表し百年を記念してつくりあげた
全四部からなるじつに425分という超大作だ。


ただし425分というのは現在における完全版の長さでして
実際のオリジナルはこれより長大だったらしいというのだから気が遠くなりそうだ。

この作品は祖国の作品を当時敵対視していたアメリカに先を越されたということで、
その雪辱と名誉と国の威信をかけてソビエト政府が総力をあげたつくりあげたものだが、
未だその総製作費や総エキストラ数等の詳細が不明といわれている作品だ。

一説にはかの「タイタニック」三作品分の製作費がかかったとか
エキストラが12万人以上だとか言われているが定かではない。
ただロケ地が150カ所以上だったり
一言でも台詞のある俳優が300人以上いたというのだから
とにかくこの映画ただ者ではない。

この映画
セルゲイ・ボンダルチュクが制作、監督、脚本、
そして主役のピエールを演じているが
個人的にはこの主役がじつにすばらしい。
駄目人間から次第に変わっていくピエールをじつによく演じきっている。

またヒロインのナターシャ役のリュドミラ・サベーリエワもじつにいい。
キーロフ劇場のバレリーナだったリュドミラは気品に満ちており、
しかもナターシャの成長とドラマを見事に表現している。
一説にはヘップバーンに雰囲気の似た人ということで抜擢されたという話もあるけど、
とにかくこのキャスティングは大成功だ。
リュドミラ自身もそうとうこの役に全霊を打ち込んだようで、
後に来日したときにこの作品でバレエを断念せざるを得なかったけど
それは後悔していないということと、
娘に「ナターシャ」という名前をつけたことを語っていた。

とにかくこの二人の演技は
このともすれば間延びしまくりそうな大作映画を
じつに見事に引き締めている。

だけどやはりこの映画の見所はその出し惜しみなしのシーンの多さだろう。

宮廷での舞踏会のその会場の巨大さ。

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しかもそこにある装飾品のいくつかは
実際に美術館や博物館から借り出したもので
中には国宝ものの逸品もあったとか。

またアウステルリッツやボロジノの戦いでの
膨大な歩兵の数や、大砲群や騎馬隊の信じられない数。

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兵士役は当時のソ連軍からほとんどが駆り出されたというけど、
製作費にはこの何万人もの兵士への出演費や
彼らがそのロケ地にいるための宿泊所や食事等の生活にかかった費用。
そして何よりも彼らをそこまで移動させるための費用などは
一切含まれていなかったとか。

そしてモスクワ炎上シーンでは
ひとつの街をつくりそれを丸ごと燃やすという
とんでもない撮影等々。

そして音楽もオフチニコフ指揮のモスクワ放送交響楽団+合唱団。

いまやったら間違いなく
映画会社のひとつやふたつ簡単にふっとんでしまいそうな
とんでもない出し惜しみなし映画である。

だけどそんなこの巨大映画で自分が気に入ってるのは
ときおりみられる美しいシーンの数々だ。
ボロジノの戦い前に多くの人々や兵士がこぞって聖母に祈りを捧げるシーンは
その音楽もあってかまるで荘厳壮大な絵画をみているようだ。

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それらのシーン中のひとつに第二部の幕切れ
ナターシャに告白したピエールがその空を仰ぎみるシーン。
空には彗星が尾を引いてるが
じつにそれが美しくピエールにはみえていた。

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だがモスクワの人々はそれを不吉な前兆として
凍り付いたような目で見上げている。

というまさに彗星が戦争と平和そのものを象徴しているようなこのシーンが
その甘味な音楽と一転激しい音楽へとなるそれと相まって
ひじょうに強く印象に残っています。

まあめったにみる機会は無いかもしれませんが
興味と機会がありましたらぜひご覧ください。
一応DVDBOXもでてますが高いですし
画質も当時としてははたして良好なのかどうか。

あとナレーションがまるで朗読のようで
ときおりフランス語の台詞とかぶるのがけっこう嫌な人は嫌でしょう。

因みにサントラは現在でていないかもしれません。

かつては国内盤で40年ほど前に二枚組のLP。
そして輸入盤では20年以上前に一枚もののLPでメロディアからでていました。
自分は後者を当時イギリス経由で入ってきたものを購入
現在はLPが聴けないので知人に無期限で貸し出しています。

以上です。

しかしこの映画いつかじっくり語ってみたいなあ。

あ、あとこのDVDは日本語吹き替えがありません。
今度再発されるときはぜひ今の方々で新しく吹き替えしてほしいです。
(かつてTVで放送されたのは完全版ではなかったようですので。)
それにしても誰がナターシャ、ピエール、アンドレイをやるのでしょうか。
ちょっとそのへんもたのしみです。

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