SSブログ

沖澤のどか指揮東京交響楽団を聴く(10/07) [演奏会いろいろ]

沖澤.jpg
2023年10月7日(土)
ミューザ川崎シンフォニーホール 14:00開演 

曲目:
ストラヴィンスキー:「プルチネッラ」 組曲
ストラヴィンスキー:詩篇交響曲♢*
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ (1947年版)*

ピアノ:長尾洋史*
合唱:NHK東京児童合唱団、合唱指揮:大谷研二♢
合唱:二期会合唱団、合唱指揮:宮松重紀♢

指揮:沖澤 のどか


ストラヴィンスキーの新古典派時代の作品と、彼の三大バレエのひとつが組み合わさったプロ。

ただペトルーシュカが1947年版ということを思うと、これもその括りに入っているのかもしれない。


最初の「プルチネッラ」。ちょっと乾いた響きか心地よくしかも格調の高さが際立つ。

特に第四曲の「タランテラ」の目が覚めるような弦、そして「ガヴォット」の変奏ごとに味わいを増すそれがとても印象に残った。

ここで弦楽五重奏パートを各奏者指揮者の前に弦楽五重奏団のように半円を描くように配置されていたが、特にこれによりコントラバスのソロがとても美しく聴こえてきたのが素晴らしかった。

続く「詩篇交響曲」。

舞台後方の2Pブロックに合唱団を配置していたが、児童合唱団が四十人程、男声合唱が二十数名程という人数。

たがこの合唱、とくに音圧が凄かった。

全体で六十人とはいえ、その半分以上は児童合唱ということで、そんな力押しはしないのでは?と思っていたがとんでもない。

とはいえ無理な力押しというのではなく、オケがじつにバランスよく響くことによって合唱の通り道みたいなスペースを空ける事で、合唱が無理なくその力を解放したかのように客席にダイレクトに伝わってきたという感じで、これが音圧の凄さみたいな感覚をこちらに与えたのだろう。

なので当然第一楽章でこれがいきなりものを言った。特に終盤はオケのクリアかつ高揚感の素晴らしい音と相まって、稀に見るような強い感銘を受けた。この時音楽を聴いていて本当に久しぶりに鳥肌が立った。凄い演奏だ。児童合唱団を含む合唱団全体の熱量と力感も秀逸。

その後のふたつの楽章も弱音での清澄な静寂感と神秘感の交錯する絶妙なもので、オケも合唱もものすごく血の通った音を集中力を切らさず出しているという感じで、正直これはこの日のハイライトになったといっていいくらいの名演だったし、これが後半のメインになってもまったくおかしくないほどのものだった。

終演後演奏者が退場する時、ふつうなら途中で鳴りやむ拍手が、この時は児童合唱のみなさんが退場するまで続いていたのが印象的で、沖澤さんの指揮はもちろんだけど、この日の児童合唱のみなさんが果たしたそれがいかに大きかったかを物語ったそれでもありました。

休憩20分。

そして後半の「ペトルーシュカ」。

これは前回の京響での演奏会でも感じられたことですが、寸法のはかり方上手いという感じの演奏で、その中には自分が熱くなるタイミングや度合い迄もが含まれているかのような、ちょっとメンゲルベルクとかLAPO時代のメータを思わせるようなものがあり、それがまたこの曲にはうまく作用しているように感じられた。

このペトルーシュカの1947年版を聴いていると、1911年に建てた家を1947年に時代の潮流に合わせたリフォームをしたかのように聴こえる演奏が多いけど、この日の沖澤さんもときおり1911年のような雰囲気は出すものの、やはり他の演奏と似たような感じのものとなっていた。

ただバレエ音楽というより表情の作り方が雄弁なせいか、Rシュトラウスの交響詩を聴いているような感じで、そういう意味ではバレエ向きではないような演奏とい感覚で聴いていた。

が、第四部の謝肉祭に入った途端一変した。

それまでの1911とか1947とかではなく、ストラヴィンスキーが1947年にいたアメリカの大都会のその当時の「今」がそこにあらわれたかのような雰囲気の演奏になり、「このバレエをこの時代のアメリカに置き換えてこの演奏で上演したら最高だろうなあ」と、さっきまでバレエに向かないと思っていたそれをいきなり恥も外聞もなく総撤回させられるほどの、じつに活き活きとした華やかな1940年代後半のアメリカのそれを感じさせ、しかもバレエ的な要素も強く押し出した演奏になっていった。ただそれはこの曲の持つそれをフルに活かした結果なのかもしれないけど、それはそれで指揮者の力のなせる業ということなのでしょう。

こちらの思い込みかもしれませんが。

(この後帰宅してからふと「そういえばバーンスタインの『オン・ザ・タウン』が初演されたのは1944年だったなあ。これの三年前か」と思ったりしました)

その後演奏が難しいといわれる「仮装した人々」から、ペトルーシュカの悲劇的な結末と不気味な終結に至るまでの聴かせ方も見事で、全体的には正攻法ではあるけど、いつもとかなり違う世界を感じさせられた演奏となっていました。

と、こう書いていくとちと難解な演奏をやっていたように感じられるかもしれませんが、演奏そのものはとても聴きやすく、むしろ聴き終わって一種の爽快感すらあるものとなっており、沖澤さんが各地高い評価と人気があるのは、こういう終わった後の快適な後味感のようなものもあるのかなと思ったりしたものでした。

次に沖澤さんが南関東に登場するのは来年1月のシティフィルとのシューマン&ラヴェルプロ。

こちらもまた素晴らしい演奏になることでしょう。

以上で〆

しかし沖澤さんの指揮を聴くと、無性にその曲を家に帰って聴きたくなる欲求に駆られる。ちょっとトゥルノフスキーにそういう意味では似たタイプの指揮者なのかも。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント