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「最近の声優って技術力が低下してないかい? 2」を読んで。 [声優]

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「声優活動よもやま話5 ~最近の声優って技術力が低下してないかい? 2~」(ま~坊・著)というものを夏コミで購入、ようやく先ほど読ませていただきました。

内容はあまり細かく書けないし、
このシリーズを他にまったく読んでいないので、
そのあたりの繋がりも分からないので迂闊な事は書けないけど、
かなり興味深いものがありました。

特に「棒読み」と「棒演技」についてのそれはとても興味深いものがありました。


自分はどちらかというと音楽畑の方なので、
このあたりの事は専門域ではないけど、
個人的には「無表情」と「平板」のそれに近しいものを感じた。

また音の高低にも考察を拡げていたけど、
自分はそれと同時に、
台詞におけるワンフレーズは飛行機の飛行と同じで、
離陸と着陸、
つまり台詞の入りと出の表情の付け方と方向性で、
その多くが決まってしまうと考えている。

じっさい多くの人たちが、
「この声優下手だなあ」
と感じる理由は台詞の最後の〆方、
もしくは次の台詞への流し方での、
妙なぶっきらぼう感にあるのではないかと思っている。

このあたりはなかなか言うは易し行うは難しでして、
じゃあ台詞にやたら表情をつければいいかというと、
それもまたポイントが見えづらくなってしまう。

あまりいい例ではないかもしれないけど、
よくお店に行くと「ポップ」というものかある。

「大特価、バナナ何本、何百円」

というあれです。

じつはあれにはある法則があって、
特に使う色は三色以内というのが原則と自分は説明を受けたことがある。

理由はそれ以上色を使うと、
何を本当にいいたのかがかえって伝わらなくなるとのこと。

シンプルかつ最も言いたい事をいかにコンパクトに大きくアピールするかが、
とにかく大事なのだという。


台詞もやはり同じで、
沢城みゆきさんや、最近の悠木碧さんも、
よく聞いてると使ってる色や引き出しはあまり多くない。

逆にいうととてつもなく引き出しや色を「基礎」を鍛え実践で蓄えているため、
あとはそれを精査しコントロールして、
シンプルに調合し表情豊かで相手に伝わりやすい台詞が可能という事ができる。

アイドル声優と言われている人で、
長続きしている人をみているとこのあたりに長けた人がとにかく多いし、
またそのことによって
「上手いなあこの人」
と感じさせない共通点も持っている。


ただよくよく考えてみると、
表現力にせよ演技力にせよ、
最後は「受け手」のそれがすべてであって、
そこへの働きかけをどうすれば最善になりうるかという、
そのゴールから逆算していけば、
自ずから声優のそれというのも見えてくると思う。

そういう意味では上のそれらの多くは、
そこへ至るための手段や枝葉であるともいえるので、
声優というのは本当に奥が深いと思う。


作曲家の芥川也寸志さんは、

「感動と言うのは精神の風車を廻すことである。たとえば、私たち音楽を愛する者が楽器の技術は拙くとも練習に練習を重ねて、僕等のつたない精神の風車を廻す練習をし、ある作品を舞台で演奏すると、その廻る風車の風に吹かれて客席のみなさんの精神の風車も徐々に廻り始める。さび付いた風車も、普段から手入れの行き届いた風車も勢い良く廻り始める。これが感動と言うものだと思う。だから自分の風車をまず廻そう」

若い声優さんにはそんな事もちょっと心にとどめておいてほしいかなと。


かなり脱線してしまいましたが、
この本ではまた画一化された需要へのそれと、
現場への苦言も呈されている。


自分は声優は伝統芸能だとずっと言い続けているので、
このあたりの言いたいことはじつによく分かる気がした。


またこの反動でジブリがアニメに声優を使わない一端も垣間見られたけど、
ただジブリのそれは、
同じオペラでもトスカニーニのそれとセラフィンのそれが、
大きくコンセプトが違うように、
同じアニメでももう考えたが根本的に違うから仕方がないだろう。


ただジブリが若手声優さんを「ガヤ」等で積極的に使ってくれていたら、
若い声優さんにとって大きな財産になったような気がする。

そこの部分は未だにとても残念な気がするし、
否定だけでは正直何も生まれないといういい例かもこれはしれない。



ところで今の声優界をみると、
自分はある海外のオペラハウスの関係者の言葉を思い出す。

「今の時代は何でももっている人でなければ通用しない」

これについてある音楽評論家の方が、

○歌手のマルチタレント化。
○「見せる」ことを意識した演出。
○バックステージの可視化。

などがライブビューイング等でかなりクローズアップされたという事を話されたあと、

「声に加えて、容姿、演技力、さらに、ライブビューイングのインタビューにこたえられるような頭の回転の速さなど、現代のスターにはさまざまな要素が要求されるようになった事が大きい」

とのことだった。


ようするに要求されているものが途方もなく広く大きいのだ。

もっともそのため歌唱力や演技力が疎かになっては本末転倒もいいとこなので、
そのあたりももちろんしっかりとやっていくという前提でのこれは話です。

そしてこれは今の日本の声優さんにもかなり当てはまるものがある。

だが今の若手声優さんにいきなりそれを要求するのはさすがに重い。


それを踏まえてこの本の後半を読むと、
なんとも内容的に考えさせられるものがある。

これは多少構造的なものもあると思う。


自分は最近こそあまり行ってないけど、
かつてよく養成所の発表会を観に行っていた。

そこにもやはりこの本の中味に抵触するようなものをいくつか見かけたことがある。


確かに時代が変化すればニーズも変化するし、
声優さんへのそれも実際変化していった。


それは1970年代半ば、1980年代半ば、
そして21世紀に入ってからの直後の計三度、
かなり大きなそれがあったと自分は感じている。


そのたびに声優は次第にショーアップしていき、
特にその影響からか、
今世紀に入ってからは演技力や個性がいろいろと言われるようになった。


本当はこのあたりを大学の声優同好会が、
秋の文化祭に論文として出してくれると面白いけど、
イベント開催が主軸のものがほとんどでそれはなかなかかなわない。


そういうことがもっと積極的に多くのサークルがしていくと、
声優に対しての本著で指摘された危惧のようなものに、
小さいながらも一石を投じてくれるものになるのではないかと、
個人的には思っています。

そのためにもこの本を一読していただくと、
なかなか面白い動きが将来みえてくるのではないのかなと。


最後はまた脱線してしまいましたが、
とにかくこの本はなかなか興味深く示唆に富んだ、
そして何より声優を大事にする姿勢が感じられるものがあります。

とにかくとても参考&勉強になりました。


以上で〆。


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阿伊沢萬

soramoyou さま

けっこうこの本の示唆するところって本質的な部分が多く勉強になります。危惧されてる方もいっしゃることが確認できただけでもとても有意義でした。

nice! ありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2018-09-23 19:42) 

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