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ラ・フォル・ジュルネTOKYO2024に行く [演奏会いろいろ]

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GW恒例のラ・フォル・ジュルネTOKYOに行った。
行きたいいくつかはすでに売り切れていたけど、大きなホールでの二つには行くことが出来た。
青天ということで人出も良く、絶好の行楽日和の中で行われたけど最初は遅い時間の公演。

5月4日 (土・祝) 21:15 〜 22:00
会場 ●東京国際フォーラム ホールA:グランディオーソ

スターたちによる愉悦の音楽!

曲目
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
ラヴェル:ボレロ feat. SUPER BRASS STARS LFJスペシャルバージョン

塩谷哲 (ピアノ)
SUPER BRASS STARS (器楽アンサンブル)
中川英二郎 (トロンボーン)
エリック・ミヤシロ (トランペット)
本田雅人 (サクソフォーン)

川村竜(ベース)
小田桐和寛(ドラムス)
東京フィルハーモニー交響楽団 (オーケストラ)
三ツ橋敬子 (指揮者)


凄い面子が揃ったものです。
指揮の三ツ橋さんも昨年「田園」で好演だったのでこちらも期待大。

最初のガーシュウィンは塩谷さんをソロに迎えてのもの。

この曲はヴォタペックの刷り込みがあるため、なかなか他の演奏が受け入れられないけどこの演奏は良かった。

前半は驚くほどオーソドックスに、それこそ変に崩したものを期待していた人にはつまらないと感じられるくらい正面からきっちりとらえた演奏で、自分にはこちらの方が好みに合っていた。

むしろオケの方がいろいろ表情豊かでちょっと崩し気味に聴こえたのが面白い。それにしてもオケの表情が濃厚で濃密。この曲ってこんなにオーケストレーションが肉厚だったかなあと思わせるほどのもの。演奏もやや遅めでジャズというより戦前の映画音楽のような感じが強かった。

そのせいだろうか、後半塩谷さんのソロがメインになりだすと、いろいろと即興的な部分があらわれはじめるが。それもジャズというより、上質の映画音楽を聴いているようで、ガーシュウィン時代のジャズの中には、後のイージーリスニングの先駆的なものがあったことや、映画音楽と少なからず領域がシンクロしていたことなどを想起させられました。

それにしても塩谷さんのソロは曲が進めば進むほど独特の世界みたいなものに彩られ、何かベニー・グッドマンのカーネギーホールコンサートにおけるジェス・ステイシーのソロとなんとなくですが重なって感じられました。

塩谷さんのソロもたっぷり聴かれ、悠揚とした三ツ橋さんの指揮もじっくり聴かれたこの曲の演奏は20分前後かかるというもので、ちょっと規格外的ではありましたが、ダレることなくなかなか聴き応えのある演奏でした。

そして後半のボレロ。

舞台転換の間にSUPER BRASS STARSの三人が登場し自分の曲の「前説」をするという展開。サックスの本田さんが自分は三つの楽器を持ち帰るのにギャラは一人分だと話したりとこれも楽しかったのですが、ミヤシロさん編のこの曲がとにかくなかなか大胆な。ここではベースとドラム、それに塩谷さんもチェレスタとピアノで参加。

冒頭の三ツ橋さんのテンポ。これが速い。ポール・パレーの演奏を思い出したというと、その速さが窺い知れると思う。

これに沿ってほぼ原曲通り進んでいくが、トランペットのソロの時、ここでミヤシロさんがフリューゲルホーンでオケのトランペットのソロに合わせるようにソロをとり、これがなかなか面白い効果が聴かれた。トロンボーンのソロは中山さん、そしてテナーとソプラノのソロは両方とも本田さんがとるので、ここは持ち替えての長丁場となった。そしてソロ主体から合奏になる直前で唐突にボレロのリズムが止まりそのまま塩谷、川村、小田桐各氏のリズムセクションに主導権が渡され、以降奔放なフロント三管のソロを中心にしたジャズヴァージョンが華やかに繰り広げられ、最後はボレロのテーマに戻り大団円という形となった。

演奏時間は15分を切るもので、結果この部分はしっかりと原曲のそれと近しいものに収まっていました。

はたしてこれをボレロといっていいかどうかはともかく、聴いていて楽しい事このうえなく、もう一度聴いて見たいと思わせる演奏でしたが、三ツ橋さんのあの早めのテンポはけっこうノリと勢いのような巻き込み感みたいなものがあって、SUPER BRASS STARSの三人のそれを聴いていたら、気持ちもう少し遅くでもいいような気がしたのですが、これは自分がクリュイタンスの演奏に耳が馴染んでいるからなのかも。

この後アンコールでハービー・ハンコックの「ウォーター・メロンマン」をSUPER BRASS STARSと塩谷さんを含めたトリオによる演奏。フロント三管とスリー・リズムセクションというと、かつてのジャズ・メッセンジャーズを思い出して、とても懐かしい気がした。

特にミヤシロさん。ハイノートを聴くのは斑尾でのジョン・ファディス以来本当に久しぶりだけど、ミヤシロさんのそれはファディスの鋭角的なそれに対し、往年のハリー・エディソンのような芯が強くそれでいて円やかなものも感じさせるもので、聴いていて本当に快い存在感と説得力を感じた。自分はミヤシロさんの師であるファーガソンを実際に聴いてないので分からないけど、ファーガソンも実際はこういう音だったのだろうか。

とにかく大満足の演奏会でした。終演は予定よりも十分以上押し。スタッフの皆様もご苦労様です。


この終演から12時間後にはまた同じホール、ほぼ同じ座席というのはさすがにハードでした。
どこかに泊まればよかったと後悔しきり。


5月5日 (日・祝) 10:15 〜 11:00
会場 ●東京国際フォーラム ホールA:グランディオーソ 

キッズのためのオーケストラ・コンサート 踊れや日本の心、オーケストラと共に!

曲目
伊福部昭:交響ファンタジー「ゴジラvsキングギドラ」から Ⅶゴジラ
外山雄三:管弦楽のためのラプソディ
ホルスト:日本組曲
文部省唱歌(青島広志編):こいのぼり
普久原恒勇作曲・吉川安一作詞(中村透・潮平大作編):芭蕉布
伊福部昭:シンフォニア・タプカーラから 第3楽章

群馬交響楽団 (オーケストラ)
横山奏 (指揮者)
塚本江里子 (司会 / 歌唱)


このコンサートは未就学児OKというファミリーコンサート。

ふつうならこういう類のコンサートとはあまり縁が無いけど曲目がたまらなかった。特に群響による八木節。

ただこの曲目、ちと未就学児童にとってハードルが異常に高くないかという疑問と心配。特にホルストの日本組曲など無謀なんじゃないかと心配してしまった。

おそらく終始お子様の声や泣き声等も上がるだろうと言う事で、少し後ろの二階の中段通路側をとったら、想像以上に人が入っておらず、一階はともかく、自分のいたあのだだっ広いホールAの二階中段付近はまわりに誰もおらず、自分の前十列くらいまでと左右後方誰もいないというほとんど貸し切り状態。黒澤明の「用心棒」で三十郎が火の見やぐらの上から下を見下ろしているよう感覚といっていいのかも。

このせいかやはり泣き声とかいろいろ上がっていたようだけど、それを織り込み済みだった自分には、場所も場所ということもありいつも通りに音楽を楽しめました。

それにしても司会の塚本さんといい、指揮の横山さんといい、こういうコンサートに場慣れしているのか、とにかく場の掴み方盛り上げ方が上手い。特に塚本さんの声はとてもよく通るので、子供たちにもとてもよくその意図が伝わっていたようです。

コンサートは曲だけでなく、この種のコンサートでよくある拍手や声出しといったものもあり、そういうことも狭い所でじっとしてる事の苦手なお子様にはいいイベントになっていたようです。あと個人的には楽器の長いソロ、例えば「ラプソディ」の信濃追分のフルートなどは、指揮者の横で吹くとか、可能なら舞台の上を歩きながら吹くといった、視覚的な演出もあればもっと子供たちを惹きつけられたのではないかと思ったりしました。

演奏はどれも好演でしたが、伊福部ではじまり伊福部で終わるファミリーコンサートなど昭和ではあり得ないし、この日のホールAも伊福部にはじまり伊福部に終わっていた事を思うと、時代は変わったなあといい意味で嬉しく感じた次第。

それにしてもこの日の一曲目。

あのゴジラのテーマが鳴った瞬間ホールの子供たちがピタっと音楽に集中したのが面白い。ゴジラマイナスワンで、後半の映画の山場でもかかった曲ということもあり、よりタイムリーだったのかもしれないけど、この曲の知名度と人気は世代年齢を超越したものだということをあらためて痛感。

ゴジラは偉大なりです。

あと「こいのぼり」という曲。

自分は最初「屋根よーりたーかーい」だと思ってたのですが、あれは近藤宮子さん作詞で作曲家不明の日本の歌百選に選定された1931年初出の曲で、この日演奏されたのは弘田龍太郎作曲で作詞不明の1913年初出の文部省唱歌の方。

「甍(いらか)の波と雲の波」ではじまる曲で、一瞬メロディが浮かんでこないかもしれないけど、聴けばすぐ「あれか」となりますので、一度この機会にお聴きになってみてください。

ということで〆
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