SSブログ

メータのブルックナーの9番 [クラシック百銘盤]

71D2UQqYm-L__SL1400_.jpg

1965年5月にウィーンのゾフィエンザールで録音された、
メータが初めてウィーンフィルを指揮し録音した音盤。

当時メータ29才。

クナッパーツブッシュ、クレンペラー、シューリヒトといった大御所が、
まだ存命していた時期の録音。


演奏時間は、26:02、10:44、27:11

比較的ゆったりとした演奏で、
肉厚でなかなか壮麗かつ悠揚としたものになっている。

メータはフルトヴェングラーに私淑していたということなので、
二十歳でフルトヴェングラーがデビューした時にも指揮したこの曲に対し、
並々ならぬそれをもってのぞんだのではないかと思われる。

ただじゃあこの演奏がとてつもなく圧倒的かというとそうでもなく、
むしろウィーンフィルの良さが前面に出たような演奏で、
指揮者のそれはじつは感じられない。

音楽もことさら深刻にならず、
自然な流れの方が強く印象残る。

ウィーンフィルはこの曲を4年程前にシューリヒトと録音しており、
やはりまだ若いメータでは役不足と感じていたのかも。

それでもときおり強く押し出されるホルンや、
弦の豊かな表情はメータの非凡さを感じさせる。

もっともそれでも全体的にはメータのブルックナーというより、
ウィーンフィルのブルックナーという感じといっていいのかもしれない。

それだけに
圧倒的に個性の強いシューリヒト盤の存在の大きさは如何ともしがたく、
メータのこの音盤は次第にその存在感が薄くなっていった。

そして現在でもその状況はあまり変わっていない。

かつて評論家小石忠男氏がその著書「続・世界の名指揮者」でも、
メータのLAPOとのブルックナーの4番は評価していたが、
9番に関しては全くふれられていなかった。

小石氏はその著書の中でメータとウィーンフィルについて、
ウィーンフィルの強い個性にメータが押し切られ、
音楽が未消化に終わっているという意味の事を記していたが、
この演奏についてもだいたいその線で受け取っていたのではないだろうか。

最近自分はこの演奏を聴いていると、
メータがLAPOからNYPOに移籍したき、
次第にその名声が陰っていったことが何となくだが、
理解できるような気がしてきた。

それはメータは強固な個性を持ったオケよりも、
真っさらのオケの方に自分のベストを展開する傾向があるような、
そんな気がしてきたからだ。

LAPOでの成功もそれが一因としてあると思われるし、
かつて1977年に読売日響に客演した時のそれなど、
当時の彼のベストパフォーマンスではないかと思えるくらい、
じつに見事な演奏だったという記憶がある。


もし可能ならメータに、
N響か読響に今一度定期公演に複数回客演してもらえると、
彼の今のベストが聴けるのではないかと、
そんな気さえしてしまう。


と、そんなことを考えさせられてしまうこれは演奏だ。

ただ自分がもし、
この曲のあるがままのスタンダードな演奏を聴きたいといわれたら、
おそらくこの演奏を自分は推すと思う。

それはこの曲の良さが感じられ、
そして次に聴く演奏に対し、
必要以上の呪縛が無いということがあげられるからだ。

もっともそこにメータの良さだけでなく、
ひとつの限界があるのかもしれませんが…。


尚、この年の秋と翌年にウィーンフィルは、
デッカとブルックナーの交響曲をショルティの指揮で7番と8番。

1969年にはアバドと1番。

1970年以降に、ベームと3番と4番。
マゼールと5番、シュタインと2番と6番を録音し、
ウィーンフィルによるブルックナーの交響曲全集がデッカにより完結、
日本でも国内盤でそれが売り出されたが、
当時自分にはそれほど魅力のあるものとは感じられなかった。

その最大の理由がじつはこのメータの9番だったのだが、
今はそのときとはずいぶん自分も聴き方が変わってしまった。

自分の若い時は減点的に演奏を聴いていたため、
極端に自分至上主義になってしまっていたが、
年をとるにつれ次第にそういう傾向が影を潜め、
その演奏が何を目指しているのかということに重きを置く、
加点的聴き方になっていったので、
音楽の聴こえ方もかつてとはずいぶん変わってしまった。


メータのこのブルックナーもかつては駄盤みたいに感じていたが、
今はいろいろと聴き処の多い演奏に感じているのも、
その一環なのだろう。

その傾向がより強くなったのは311以降なのですが、
その話はまたいつかということで。


nice!(0)  コメント(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 2

サンフランシスコ人

12/14 メータはブルックナーの9番を指揮出来なかった .....

http://www.latimes.com/entertainment/arts/la-et-cm-mtt-la-phil-review-20171216-story.html

"Michael Tilson Thomas, led a sumptuous performance of Bruckner’s most lyrical symphony, the Seventh, at Walt Disney Concert Hall. The program was originally to have been Bruckner’s Ninth under Mehta, but shoulder surgery is keeping him off the podium for three months."
by サンフランシスコ人 (2017-12-28 02:13) 

サンフランシスコ人

"....appointed Zubin Mehta as Conductor Emeritus of the Los Angeles Philharmonic."

http://slippedisc.com/2019/01/zubin-is-given-new-title-in-la/
by サンフランシスコ人 (2019-01-05 07:52) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント