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神奈川フィルハーモニー第331回定期演奏会(7/8) [演奏会いろいろ]

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神奈川フィルハーモニー管弦楽団
第331回定期演奏会

7月8日(土曜日) 14:00 開演
横浜みなとみらいホール

ユベール・スダーン指揮
佐藤俊介(ヴァイオリン)

(曲目)
モーツァルト/歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲  
モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219「トルコ風」
シューマン/交響曲第2番ハ長調Op.61(マーラー編曲版)


スダーンが川崎を本拠としていた、
東京交響楽団の音楽監督をされていたのが、
2004年から2014年という長期だった。

この間神奈川フィルは、
現田・シュナイト~金~川瀬と、
タイプの違う指揮者がトップに立っていった。

スダーンが当時、
神奈川フィルを意識していたかどうかは分からないが、
この当時彼が神奈川フィルを指揮することなど、
自分には想像もつかなかった。

それくらい東響=スダーンというイメージは強固で、
その指揮者がお隣のプロオケを指揮するというのは、
プロムシュテットが東フィルを指揮するくらいありえない事に思えた。

だが月日が流れ、
スダーンは東響との関係は続いているものの、
音楽監督の地位を離れ、
多少は自由にいろいろと指揮できる身になった。

その後スダーンは全国各地のオケを指揮してはいるが
関東では東響以外のプロオケをなかなか指揮しなかった。

そして今回おそらくその一番に指揮台に立ったのが、
川崎から近場にある横浜の神奈川フィル。

しかも曲目が自らが東響を指揮していた時期に、
神奈川フィルのトップにいた指揮者の、
そのレパートリーを著しく想起させられるものばかりだった。

もちろんそれらはスダーンとしても十八番なので、
意識したとはいいきれないだろうが、
ちょっと不思議なものをこのとき感じてしまった。


自分は今回二日目の公開練習にも行ったけど、
スダーンの練習はまったく無駄も妥協も無い、
ある意味執拗ともいえるなかなか厳しいものだった。

もちろんスダーンらしく、
感情的になることはなく、
今目の前で起きている事に対して、
次々と冷静に対処していった。

それはときにパート別に、
しかも何度も繰り返し行われていた。

ただこのとき、
ズダーンのそれはミスを修正するというより、
「このオケならもっとできるだろう」
みたいなものがなんとなく感じられ、
それこそオケに期待を寄せながら試しているような、
そんなかんじの練習に感じられた。

このときなぜスダーンが短期間で、
東響から自分の音を引き出すことができ、
十シーズンにわたりそのトップをつとめられたのか、
その理由の一端がわかるような気がした。


また表情の細かさ、
特に音量の強弱による表情の凝らし方がかなり念入りで、
リズムのキレとかそういうものは、
この表情さえつけきれば自然と後からついてくるように、
いろいろと考え抜かれているようにみえた。

かなり細かくいろいろと指示を出してはいたが、
ここという時の音楽の突き抜け観にもかなりこだわっていて、
なかなかオケに高いハードルを設けているようにも感じられたけど、
今の神奈川フィルにはそれにも十分対応していたようにみえた。


そして演奏会当日。

スダーンは白の背広で登場。

しかし白の背広で指揮というのも久しぶりにみた。

昔はショルティやバーンスタインも、
白の背広で指揮していたけど、
今はもうあまりみかけることもない。

なかなか手入れがたいへんなので、
オケもほとんどやめてしまったようだけど、
夏の風物詩的な感じがして、
個人的にはとてもみていて、
当時は気持ちのいいものがありました。


最初の序曲はほとんど小手調べ的な感じだったけど、
それでもスダーンの刻印のようなものは随所に感じられた。

続く協奏曲。

ますソロが素晴らしかった。

佐藤さんのソロは音量的にはさほどではないけど、
その音のしなやかさ、艶、光沢、
それらが絶妙な歌いまわしによって輝きを放っていた。

かつて往年の名ジャズトランペット奏者の、
ハリー・エディソンが、
「スイーツ」という仇名をつけられていたけど、
あの音もまた甘ったるいという類のものではなく、
しなやかさ、艶、光沢、そして力強さも兼ね備えたものだった。

佐藤さんのソロを聴いていて急にそのことが思い起こされた。


そしてスダーンのバック、
特にオケの音が素晴らしかった。

端正だけど小さくまとまることなく、
ちょっと辛口かもしれないけど、
格調高く詩的な美しさもしっかり織り込まれた、
久しぶりに極上のモーツァルトを聴いたと、
そういいたくなるような素晴らしさだった。


ここでの神奈川フィルの出来もよかったけど、
このとき自分はスダーンのあるエピソードを思い出した。

それはあるたいへん有名な指揮者が東響に客演した時、
その指揮者が体調を崩したりしたこともあり、
当初予定のリハーサルに来れなくななったため、
当時来日していたスダーンが急遽下棒を行い、
限られた時間で驚く程高い状態にオケを仕上げ、
その指揮者に渡したという話。

自分はその演奏会にも行っているが、
確かにオケはとても完成度の高い演奏をしていた。

そんなことが思い出されくらいの、
かなりのオケの出来でした。


このあと佐藤さんのアンコールの後休憩。


そして後半のシューマン。

前半は指揮台無しで指揮したスダーンも、
後半は指揮台を使用。

もうこれについては言うことはない。

飯守さんとはまた違った平衡感覚の強い、
それでいてとても表情豊かで、
マーラー版のせいもあるだろうけど、
とても見通しと風通しのいい、
力感と躍動感あふれるシューマンだった。

自分はマーラー版のシューマンというと、
どことなくメンデルスゾーンや、
ドヴォルザーク中期の交響曲を思い出すが、
今回はそれだけではなく、
マーラーそのものの表情もときおり感じさせられる、
神秘的な所や刺激的な所があった。


それにしてもこれだけテンポも表情も変化しまくる、
多くの要素をふんだんに盛り込んだ演奏を、
よく神奈川フィルもやりきったものだと、
正直拍手喝采といった感じだった。


こんなことを言ったら申し訳ないし失礼かもしれないが、
十年前だったら、
おそらく今回のスダーンの要求の半分も応えられなかっただろう。

それを思うと神奈川フィルの、
今のレベルの高さと好調さがあらためて痛感させられるものがありました。

自分は今回のこのコンサート。


いろんな意味で今年最大の注目コンサートの一つ言ってましたが、
それに違わぬ内容のある素晴らしい演奏会でした。


できればまだスダーンさんには、
神奈川フィルに定期的に客演してほしいものです。


川瀬さんも言ってましたけど、
指揮者とオケの相性もなかなかいいようです。



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コメント 1

サンフランシスコ人

サンフランシスコ歌劇場の「皇帝ティートの慈悲」に行きました..

http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id409.pdf
by サンフランシスコ人 (2017-07-09 02:48) 

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