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スッペのレクイエム [クラシック百銘盤]

スッペというと「軽騎兵」や「詩人と農夫」の序曲といった
そういう小品しか今は聴かれていない。

そんなスッペが36才の年1855年に作曲したのが
その五年前に死去した彼の恩人に捧げるべく作曲した
このニ短調のレクイエムだ。

ニ短調のレクイエムというと
かの有名なモーツァルトのそれ、
そしてそのモーツァルトのレクイエムに影響されたといわれている、
ブルックナーのレクイエムがある。
因みにブルックナーのそれは1849年に初演されている。

この曲の重要なのは
他のスッペの作曲したオペレッタ等が
ある意味売れっ子作曲家が食べるために書いた作品という
そういう一面が少なからずあるのに対し、
このレクイエムは恩人の追悼のめに書いたということで、
徹頭徹尾そういうこと抜きで書かれたということ。

因みにかの「軽騎兵」の全曲は1866年に初演されたということなので、
この曲はスッペのその後作曲された曲のベースを聴くことのできる、
そういう曲のひとつとも言えるかもしれない。

それにしてもじつに聴きやすく、そして聴きごたえのある曲で、
Dies iræはちょっとウエーバーの「魔弾の射手」の狼谷を想起させられるし、
Tuba mirumの弦を中心とした音の動きはじつに魅力的。
Lacrimosaはかなりメロドラマ風オペラアリア的仕上がりだが
十分以上にわたるAgnus Deiは劇的変化に富んでいてなかなかだ。
とにかく全曲一度聴いてすぐに好きになってしまったくらい魅力的な曲だ。
それを思うと後年スッペがこの分野で売れっ子になったのがじつによくわかる。

また随所にモーツァルトのそれを感じさせるものがある。
おそらく多少は参考にし、そして影響もされたのだろう。
ニ短調というのも偶然ではないだろう。

またときおりどことなくだが
(かなり弱気な発言で申し訳ないが…)
ブルックナー風の響きのようなものが聴かれるときがある。
この二人は活動していた時期がひじょうに似ており、
しかも作曲の師が同じゼヒターであることも共通している。
それに同じオーストリアで活躍していたこともあるので、
どこかしらでお互いに何か接点はあったのかもしれない。

だが1855年時点でブルックナーは交響曲はおろか三大ミサも作曲していない。
強いていえば先のレクイエムと1854年初演の荘厳ミサくらいだろう。

それを思うとスッペがブルックナーに影響を受けたとは考えにくい。
その逆はあるかもしれないがはたしてどうなのだろう。

とにかくいろいろと聴きどころの多い曲だ。
自分が所持しているコルボ盤は最近(2012年4月)再発売になったが
他の演奏ではときおり80分を超えるものになっているのに対し、
66分というかなり速めのテンポで演奏されている。

このためずいぶん見通しが良くクリアで、
より聴きやすく、初めて聴く人にとってよりわかりやすい曲という気がする。
ただその充実感はかなりのものがある。
ライヴということで歓声&拍手入り。

 エリザベーテ・マトス(ソプラノ)
 ミリヤム・カリン(コントラルト)
 アキレス・マチャド(テノール)
 ルイス・ロドリゲス(バス)
 録音年月:1997年3月1日[ライヴ録音]
 録音場所:リスボン、グルベンキアン財団オーディトリアム

 ミシェル・コルボ指揮グルベンキアン財団管弦楽団&合唱団

ZZZ0175.png
 

それにしてもこれだけの曲が百年以上も楽譜が紛失していたとは驚きだ。
すでにときおり演奏もされはじめているようなので、
以前のビゼーのテ・デウムともども今後演奏されるようになるのかもしれない。

ぜひ知られざる名曲から
後世に聴き継がれるべき名曲になってほしいと願ってやまないものです。
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阿伊沢萬

この曲なかなかの名曲です。少しずつ聴かれているようですが、華やかな曲(レクイエムなのに不謹慎な表現かもしれませんが)なので実演でもかなり聴き応えのある曲だと思います。nice! ありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2012-07-17 01:31) 

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