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アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルハーモニー交響楽団を聴く(11/2) [演奏会いろいろ]

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2021年11月2日(火)オーチャードホール
14:00開演 オーチャードホール

東京フィルハーモニー交響楽団第12回 渋谷の午後のコンサート
〈バッティストーニの運命〉

ヴェルディ/歌劇『運命の力』序曲
ヴォルフ=フェラーリ/歌劇『マドンナの宝石』間奏曲
プッチーニ/歌劇『マノン・レスコー』間奏曲
ポンキエッリ/歌劇『ラ・ジョコンダ』より「時の踊り」
ベートーヴェン/交響曲第5番『運命』

指揮とお話:アンドレア・バッティストーニ


じつに二年ぶりのコンサート。

コロナ禍の為これだけ大きく間が空いてしまった。

久しぶりの渋谷駅は湘南新宿を使用したため大きく様変わりしたように見えたけど、会場前に通例となっていた他公演のチラシ配布は無く、チケットも自分で半券切って傍の箱に入れ、退場時も時差退場方式と、すべてが二年前と一変していた。

ただ幸いにしてここしばらく感染者が全国的に急速に減っている。二か月前、一日千七百人を超えていた神奈川の感染者発表数も今日は十人ということでほとんど奇跡のような減り方になっている。

そんなこともありワクチンも二度接種したこともあって、自分もようやく演奏会に行く気になり、この日の演奏会に足を運ぶことにしました。

会場も最近の落ち着いた感染状況からか、雰囲気は二年前と変わってはいませんでした。マスクをしながら聴くことを除けば。

ただ確かにこの鬱陶しいマスクだけど、咳や鼻息等のノイズもかなり抑え込んでいるせいか、むしろそういう意味では以前より神経を尖らせるようなことが無くなったのは不幸中の幸いと言うべきなのかも。

今回、じつはバッティストーニを聴くのは初めて。来日する度に人気が高まっているので楽しみにしていました。

この日は前半はイタリアもの、後半はドイツものを、途中通訳の方を通してのバッティストーニのトークを織り交ぜながら進行するというもので、雰囲気としてはじつに穏やかなもの。

トークの内容は演奏される曲目について、他公演で演奏されるバッティストーニ自身の作品について、日本の印象、アマチョアオケの印象、クラシック以外の好きな音楽等と多彩なものになりました。

じつはこの日の曲目。通常の演奏会としてはやや少なめの分量なのですが、15分の休憩込で、ほぼ二時間まるまる費やしての演奏会になった程、とにかくこのトークの分量が豊富でした。

7日にも同じ内容の演奏会がありますが、そこではどういうトークがあるのか興味津々です。自分は行けませんが。


バッティストーニの指揮。

前半の曲を聴いていて思ったのは、とにかく音がクリア。そして弦を中心にひじょうにブレンドされた響きが素晴らしく、弦の弱音や木管の表情付けなどかなり細かく神経が行き届いたものになっていました。

また音のクリアさとブレンド感がうまく合わさっていることと、弱音がひじょうにコントロールされているせいか、無理に大きな音を出さなくてもホール全体に強音がしっかり伸び伸びと響くので、大きな音になっても決してギスギスしたり濁ったりせず、バランスもしっかりとれていて、どの曲もとても安心して聴いていられました。

ただこう書いているとオケにあまり推進力が無いように感じられかもしれませんが、オケが弦を中心に表情豊かな流動感のようのものを強く感じさせ、それがとても自然な推進力を音楽に与えており、これがヴェルディやポンキエッリでかなり大きな武器になっていました。

ところで今回のこのポンキエッリの「時の踊り」。

冒頭がカットされていたけど、あれはそういう版があるのだろうか。それとも指揮者の指示だろうか。はじまった瞬間、会場の一部から「あれっ?」という雰囲気も起きていたのでちょっと気になりました。


後半のベートーヴェン。

これも前述したことがここでもそのまま活かされていましたが、この第五はとにかく実直でストレート。フルトヴェングラーの深刻さのようなものはなく、明朗快活で一点一画も疎かにしない、ある意味トスカニーニの系列を汲んでいるかのような古典的ともいえる清潔な演奏といっていいのかもしれません。もっともトスカニーニのような剛直な感はなく、もっと伸びやかで晴れ晴れとしたものがここにはありました。

この演奏で秀逸だったのは第四楽章。

この日のオケの編成は指揮者の指示なのかコロナ禍の事情かは分かりませんが、12型(一階で聴いていたのでちょっと視覚的にハッキリと確認できませんでしたが)という弦はそれほどの大きさではなかったものの、トランペットが3+トロンボーン3+ホルン4と、ブルックナーの3番なみにブラスが増量されていたこともあるのか、第四楽章に入った瞬間金管のクリアで大きな響きがじつに効果的に鳴り響き、音楽の輝かしさをじつに実感できるものとなっていました。

また反復後のオケの響きはさらにより一段大きく高く響くような輝かしさと力感に富んだものになっていましたが、ここはなかなか反復してもただ繰り返しただけみたいな演奏になることが多々あるだけに、とにかく感嘆してしまいました。(因みにこの日は両端楽章とも反復を実行していました)

そして終盤。見得や溜めも一切せずに、どんどんギアを入れながら音楽をグイグイ追い込んでいくものの、それにより高揚感こそ増すもののギリギリとした緊張感とは無縁の、むしろ壮麗とも爽快ともいえる輝かしく清々しいまでの音楽とともにひたすら最後に向かって上り詰めていく様は、とても新鮮、なれどオーソドックスといった感じで、この曲の新しいというより本来の姿みたいなものが描かれていたかのようで、ひじょうに聴き応えのある、そして何故か聴き終わってとても元気をもらえたような気持ちになりました。

とにかくバッティストーニという指揮者が何故来日するたびに高く評価されているのか、その一端が分かった気がしました。この指揮者でいつかベートーヴェンの「英雄」を聴いてみたいです。

東フィル。

本当にいい状態になっているようです。ただどこか他の在京オケより、シンフォニーオケというよりオペラハウスオケみたいな雰囲気をもっているのは相変わらずで、それがとてもいい意味でこのオケの財産になっているようです。

そういえばこのオケにとって忘れ難い往年の名指揮者、マンフレート・グルリットも来年の四月には没後五十年を迎えます。東フィルは何か企画しているのでしょうか。ちょっと気になっています。


追加※

この日のベートーヴェンで、壮麗な音を聴かせた3本のトランペット。

あの時何かとイメージが重なっているように感じていたのですが、今になってバッハのロ短調ミサにおける3本のトランペット重なっていた事に気が付きました。

バッハのこれは「三位一体」と重なるものと言われていますが、はたしてこの日のそれが何かと絡めた結果そのあたりを意識してのものだったのか、それとも単なる音の補強だったのか。

深読みしすぎかもしれませんがどうなんでしょう。

以上で〆

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