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小三治師匠の思い出 [いろいろ]

 最近落語をよく聞ききます。いや「聴く」という行為もあわせているといってもいいかもしれません。

 自分が子供の時聞いた、小さん、円生、文楽、あたりは今聞き返すと、その話のベースにひとつの節の流れ、もうちょっと言い方をかえると、歌心(もしくは唄心)のようなものがあるように感じるようになりました。

その流れるような節回しさらには抑揚の絶妙さや間のとりぐあいがそういう印象をさらに強くさせています。そしてそれらはある意味「歌曲」の世界に近いものももつように最近強く思うようになりました。

ですが最近自分が聞く小三治師匠はかなりそれとは違い人物の遠近法や語りの多彩さ、さらには登場人物が多く、群集の描きの細かさが歌曲というよりオペラに近い感じがするのです。

 クラシックの好きな小三治師匠ですから自然とそうなってしまったのかもしれませんが、このせいか展開の大きさやたたみこみ方の凄まじさというか劇的雰囲気等は、とにかく「一人オペラ」といいたくなるほどのものがあります。

 かつて同じくクラシックが好きな春風亭小朝師匠が、小三治師匠のこのあたりの特長を別の言い方でたしか語っておられたような気がしましたが、とにかくその話芸は半端ではありません。

 ただこういうスタイルに多少違和感をもたれる方も多いと聞いています。自分はまだまだ落語は初心者ですので、このあたりはこれからさらにいろいろ勉強することになると思いますが、これは「聞く」というより「聴く」という感覚で知らず知らずのうちに落語に接していた結果かもしれませんが、いずれにせよそのへんがとても面白くかんじました。

あと「間」が絶妙で、どうでもいい話というかフレーズを「間」だけで笑わせるという、もはや名人芸!しかも調子がいいときのノリとたたみこみがおっそろしく凄い。この凄い面白さを体感するには師匠の独演会等に行くのがいいのですが、それがかなわないときはCDをお勧めしましょう。「落語のCDなんか繰り返し聞いたって…」と思われるかもしれませんが、師匠のは何度聞いても面白さが変わらないのがまた凄い。かつて天才落語少年といわれた師匠もはや円熟境。ぜひ一度その独演会に行く、もしくはCDをお勧めいたします。尚、CDではソニーから発売されているもので、

※富久
※宿屋の仇討ち
※茶の湯
※初天神
初天神.jpg

というところが爆笑編としてお気に入りです。

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これは2005年頃書いた感想で、当時はよく小三治師匠に出かけたものでした。

当時若手だった春風亭昇太師匠との二人会や、にぎわい座での独演会等、いろいろと行きましたが、いつもとにかく最高の時間を過ごさせていただきました。

特に異色だったのはにぎわい座での独演会でのこと。

師匠名物のまくらが妙に短いまま最初の演目、そしてそれが終わるとなんとそこから「本まくら」がはじまり、それが延々と続いたまま休憩。そして休憩時間が終わり後半がはじまると、終わったと思った前半最後のまくらがまた延々と続きそしてようやく二つ目の演目という、型破りな独演会があったことを思い出します。

また前述した昇太師匠との二人会の時、地方の興行だったにもかかわらず、素晴らしく上質な着物を着て舞台に登場し、地方では服装を含め一切手を抜かないというそのプロ意識にも感心させられたものでした。
(クラシックではたまに地方公演だと、かならずしもそうではない方もいらっしゃったので余計そう感じたのかも)

ただ311以降すっかりご無沙汰してしまって、そろそろまた久しぶりにと思ってた矢先の今回の訃報。

正直最近のNHKでのドキュメンタリーでも、投薬等でたいへんそうに感じられたものの、まだまだ元気に活躍されるような感じだったので、余計強い衝撃を感じてしまいました。

自分にとっては同じころ接した、狂言の四世茂山千作さんとともにとても忘れ難い印象があったので、繰り返しますが本当に残念です。

ただ今は、

「ほんとうに今迄ありがとうございました。これからはゆっくりとお休みください」

と心からの謝意と深く哀悼の意を表させていただきます。

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