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ハンス=マルティン・シュナイト指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団(12/3) [演奏会いろいろ]

[緑区第九をうたう会 特別演奏会]

(会場)MUZA川崎
(座席)2階RB6列6番
(曲目)
ヘンデル:メサイア

ソプラノ:江田雅子、アルト:垣内江利子、テノール:中嶋克彦、バス:吉川健一
チェンバロ:堤ゆり
オルガン:見崎真理子


 シュナイト氏のヘンデルを初めて聴いた。冒頭から明快かつ驚くほど軽やかで、同じ宗教音楽でもバッハの「ヨハネ」とは全然違う、あたりまえだがこれはヘンデルの「メサイア」であるということを冒頭から痛感させられたものだった。とにかく流れを保ちながら明晰に、力感を持ちながら重くならずにということを心がけたそれは、たいへん素晴らしい推進力と瑞々しい表情に彩られた、ヘンデルらしい劇的な音楽だった。

 合唱は第一部ちょっと慎重に行きすぎたためなのか、「And He shall purify」でやや音楽に覇気が欠け拍子が後退しそうな部分があり、シュナイト氏が立ち上がって譜面台を指揮棒で叩きながら拍子をとるという、かなり激しい檄が飛ぶというシーンがあったものの、その後次第に音楽の流れに乗り始め、第二部以降はかなり豊かな音楽を展開することに成功していたようです。正直シュナイト氏のこの日のヘンデルは豊かな表情を停滞するとこなく、上でも述べたように音楽の流れを保ちながらしっかりと拍をとり明晰に歌いぬくという、かなり言う易し行なうは難しというもので、それを考えるとよくあそこまで、あの長丁場をついていったものだと感心したものでした。しかも合唱のパート人数のバランスも決して理想的なものではなかったり、同団代表兼合唱指導でありこの日のソプラノを担当されるはずだった桜井真知子さんが体調不良で出演できなくなったことを思うとなおさらという気がしたものでした。

 オケの神奈川フィルはもはやシュナイト氏が日本で一番全幅の信頼をおいているオケではないかというくらい、完全にシュナイト氏の意思通りの音楽を奏でているようでした。(今月から来年3月までシュナイト氏は神奈川フィルを毎月指揮してくれるのですが、これは今まで以上の圧倒的な聴きものになるかもしれません。それを予感させるほどの素晴らしい演奏でした。)そのせいか第二部以降のシュナイト氏のノリと気合が尋常ではないほどのものになり、顔を真っ赤にしながら足で指揮台をガンガン蹴る独特の仕草だけでなく、ついにはあの大きな指揮している時に使用している椅子が前後にガッタンゴットン揺れまくるほど上体を激しく前後に揺らし、あるときは立ち上がり、そして合唱に向かっては大きな表情と力を要求し、オケにも弦のヴィヴラートやアタックを中心にかなり強烈な感情移入をするなど、まるでヘンデルという即興怪物に対して、渾身の力を込めて立ち向かっていくような、とにかく凄まじいまでの燃えるような指揮ぶりに、完全に圧倒されつくしてしまったものでした。ここまで燃えに燃えたシュナイト氏の指揮をみたのは初めてで、逆にその必死とも思えるような、それこそ音楽ともども炎上し尽してしまうような激しい指揮ぶりに、ヘンデルの怪物ぶりをあらためて痛感させられたものでした。

 そして「ハレルヤコーラス」。この素晴らしさを何に例えればよいのでしようか。とにかく万感胸に迫る強烈な歌い上げを極めた演奏で、シュナイト氏はこの曲の冒頭から立ち上がりなんと最後まで立ち続け指揮をされました。

 この後第三部を続けて演奏。見事なトランペットソロが印象に残った「The trumpet shall sound」を経て力強さにみちた「アーメンコーラス」で締めくくられました。(トランペットというと第一部の「Glory to God in the highest」でパイプオルガン前で二人のトランペットが高らかに奏されたトランペットもとても印象に強く残りました。)

 正直技術的云々という話を取り出せばいろいろあったのかもしれませんが、それでも自分は特に第二部以降はいろいろなことが感じられ、とても有意義な演奏会であったと思いますし、なによりもここまで激しいシュナイト氏の指揮ぶりをみたのは初めてで、それが一番の驚きでした。

 余談ですが、オルガンの見崎真理子さん。最近シュナイト氏の演奏会でこの方の名前をみると、なにか不思議な安心感を覚えてしまいます。カウント・ベイシー翁とフレディ・グリーンのような関係のように感じるのははたして自分だけでしょうか。

 最後にMUZA。じつは偶然にも今回を含めこの座席でじつに三度も聴くこととなってしまいました。音響的にはいろいろある場所かもしれませんが、自分はこの座席がMUZAではいちばん落ち着くものがあります。これからできる限りこの座席で聴くことにしたいと思います。
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