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「天気の子」は「令和の日本むかし話」 [劇場公開アニメ]

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https://tenkinoko.com/

公開され二週間経ちようやく観に行きました。

じつは新海監督の前作「君の名は。」が、
正直自分が若い時にみていれば違ったかもという感じで、
かならずしも作品と自分の相性が良くなかった。

なので今回ちょっと観に行くのを躊躇していました。

で、ネタバレを含むみた感想ですが、

「令和の日本むかし話」

というのが正直なそれ。

なので「君の名は。」よりも自分にはしっくりしましたし、
相性の悪さも感じられませんでしたし、
若い時にみていればという気にもなりませんでした。


新海監督はこの作品を、
セオリーから外れた作品みたいなことを言われているようですが、
確かにふつうのよくあるストーリーからみれば、
ちよっと異形なアンハッピーエンドとも感じられるし、
個人を助けることで多くの人たちに不幸に繋がりかねない代償を払わせるという、
主人公たち以外の人からみれば、
迷惑このうえない決断のツケを払わされた、
そんな異形な作品という見方もできる。

だがこれを昔話のセオリーに置き換えると、
かならずしもそうとはかぎらない。

日本のむかし話には、
「鶴の恩返し」「かぐや姫」「浦島太郎」みたいに、
最後悲しいとも残酷ともいえる終わり方をしているものがある。

だけどよくよくこれらを読み返してみると、
それらは「本来のあるべき姿に戻った」、
もしくは「それらが起きる前の状況にかえった」
というようにもみてとれる。

これは「天気の子」本編でも
冨美や神主も同様の発言をしており、
これらとの共通性もそこからうかがうことができる。

また「天気の子」は、
一見不可解なこの狂った状況の具体的説明等もいっさいなく、
自然のあるがままの姿とその修復のひとつという部分と、
神社への信仰(かな?)がそれらを解くカギになってる程度で、
そういう部分の曖昧さ大らかさ、
そして素朴な自然信仰的な部分も、
これまたむかし話の要素と酷似している。


話もいたってシンプルだけど、
そのシンプルなモチーフがいくつも重なっているので、
ちょっと入り組んでいるようにも見えるが、
どの登場人物の行動原理も単純明快なものが多いせいか、
このあたりもかなり見通しがよく、
それもむかし話を想起させられてしまう。

さらにこの話にはいろいろと教訓めいた要素もあり、
これもまたそこの部分が重なってくるものがある。


とにかく途中からそれらのせいで、

「これはまぎれもなく日本人がつくった作品」

という感覚もとにかくすごく強く感じられた。


あとこの作品のタイトル。

これは「晴れ女」でも「雨女」でもない、
「天気の子」となっている部分もラストまでみているとよく分かる。

確かに雨が続くと晴れを欲し多くの人がそれを望んだが、
雨が何年も徹底的に降り続くと、
それはそれでけっきょくみんなそんな東京で、
またそれに応じた日常を過ごしている。

そしてそれらの要因の多くを帆高も陽菜も担っている。

二人で「雨」「晴れ」あわせた「天気の子」ということなのだろう。


だがこの二人にはそのことへの後悔や、
雨が降り続いていることへの悔恨の念が、
確かにラストで陽菜がもはや力が無いにもかかわらず、
天に向かって祈っているシーンがあるものの、
ことさら深刻には描かれていない。


自分はここの大らかさというか、

「そしてみんなは楽しく暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

といういろいろ細かいことはすべてどっかにおいといて、
天気が晴れであろうが雨であろうが、
すべてうまく収まりました的な、
帆高や陽菜の笑顔で締めくくられた大団円も、
もちろん設定その他は現代に置き換えられているけど、
ここにもまたむかし話的大らかさというものを感じさせられました。

なので個人的にはとても懐かしい、
そして親子でみても楽しめる作品という気がしました。


あと余談ですがこちらを先にみて、
それから「君の名は。」をみると、
案外そっちも違ってみえてくるようにも感じられました。


絵も綺麗でしたし声優陣もうまくハマってましたし、
見終わった後も心地よい清涼感が残るのも相変わらず。

ただラスト付近で主要登場人物のほとんどが、
結果一斉に警察のご厄介になったのにはビックリ。

現代もしくは近未来を扱った劇場アニメでこういうのってあまり無いのでは?


といったところです。

まだ一度しか観ていないのであれですが以上です。



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阿伊沢萬

soramoyouさま。

はなはだ突拍子もない感想ですが、自分にはこの作品が「令和の日本むかし話」に感じられました。

そんなことを思ってる人は他にはいないかもしれませんが、とにかく上にも書いたようにそう感じられました。

ただラスト近くで全員しょっ引かれるというのはむかし話的ではありませんが。

nice!ありがとうございました。
by 阿伊沢萬 (2019-08-03 22:57) 

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