アンセルメのバッハを聴く。 [クラシック百銘盤]
・管弦楽組曲第2番 BWV.1067(録音:1961年11月)
アンドレ・ペパン(フルート)
・管弦楽組曲第3番 BWV.1068(録音:1961年11月)
・カンタータ第130番『主なる神よ、われらこぞりて汝を頌め』(録音:1968年9月)
・カンタータ第67番『死人の中より甦りしイエス・キリストを覚えよ』(録音:1968年9月)
エリー・アーメリング(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(アルト)
ヴェルナー・クレン(テノール)
トム・クラウセ(バリトン)
アンドレ・ペパン(フルート)
ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団
・カンタータ第31番『天は笑い、地は歓呼す』~シンフォニア(録音:1961年11月)
・カンタータ第12番『泣き、嘆き、憂い、怯え』~シンフォニア(録音:1961年11月)
・カンタータ第105番『主よ、汝の下僕の審きにかかずらいたもうなかれ』(録音:1966年6月)
・カンタータ第45番『人よ、汝はさきに告げられたり、善きことの何なるか』(録音:1966年6月)
アグネス・ギーベル(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(アルト)
イアン・パートリッジ(テノール)
トム・クラウセ(バリトン)
・カンタータ第101番『私たちから取り去ってください、主よ、まことの神よ』から3曲
第一曲「取り去ってください,主よ,まことの神よ」
第六曲「イエスの苦い死を思いなさい」
第七曲「あなたの右手で私たちを導き」
(録音:1968年9月)
エリー・アーメリング(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(アルト)
ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団
スイス・ロマンド放送合唱団
エルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団
アンセルメがデッカに録音したバッハ作品のコンプリート二枚組CD。
アンセルメは1960年代に入ると今までとは違い、
ハイドン、ベートーヴェン、ブラームスといった、
ドイツ古典派やロマン派を中心とした録音に力を入れ始めた。
考えてみるとアンセルメがスイス・ロマンドと最初の公演には、
ベートーヴェンの5番を取り上げていたというので、
ある意味これは原点回帰といえるのかもしれない。
ここでアンセルメの二度にわたる来日公演のプログラムをみると、
以下のようなものになっている。
1964年NHK交響楽団客演
5月21-23日:東京文化会館
モーツァルト/交響曲第38番
ドビュッシー/海
ムソルグスキ/ー展覧会の絵
5月30日:東京文化会館
ブラームス/交響曲第3番
ファリャ/三角帽子、組曲
ストラヴィンスキー/火の鳥、組曲
6月8-10日:東京文化会館
ベートーヴェン/交響曲第7番
マルタン/七つの管楽器と弦楽とティンパニーの為の協奏曲
ラヴェル/ダフニスとクロエ、第2組曲
1968年スイス・ロマンド管弦楽団来日公演
6月22日:東京文化会館
ブラームス/交響曲第4番
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー/夜想曲、雲~祭り
ドビュッシー/海
6月24日:東京文化会館
ベルリオーズ:幻想交響曲
ストラヴィンスキー:火の鳥、組曲
ラヴェル:ラ・ヴァルス
6月26日:東京文化会館
ベルリオーズ/幻想交響曲
ドビュッシー/夜想曲、雲~祭り
ドビュッシー/海
6月29日:日本武道館
フランク/交響曲
ファリャ/三角帽子、組曲
リムスキー=コルサコフ/シェエラザード
7月2日:フェスティバルホール
ベルリオーズ/幻想交響曲
ストラヴィンスキー/火の鳥、組曲
ラヴェル/ラ・ヴァルス
7月4日:フェスティバルホール
フランク/交響曲
ファリャ/三角帽子、組曲
リムスキー=コルサコフ/シェエラザード
7月6日名古屋市公会堂
ベルリオーズ:幻想交響曲
ストラヴィンスキー:火の鳥、組曲
ラヴェル:ラ・ヴァルス
スイス・ロマンドの時はともかく、
N響客演時にはかならず独墺系の作品が含まれている。
このバッハはそんなアンセルメの来日公演時期を挟んでの、
三度のセッションからなっている。
1968年アンセルメは来日時に以下のようにコメントしている。
「これからの録音はまずバッハ、それからニュー・フィルハーモニアと「火の鳥」。そしてウィーン・フィルと録音する予定だが曲目はまだ決まっていない」
この1968年のセッションが上で最初にアンセルメが触れているもので、
これがスイス・ロマンドとの最後のセッション録音となっている。
因みに101番は三曲しか録音されていないが、
後日他の曲も録音しようとしたのか、
それとも最初からこの三曲のみの予定だったのかは分からない。
演奏はこの時期のアンセルメの特長ともいえる、
ゆったりとした豊かな音作りとなっているが、
オケの音質のせいか明晰かつ清涼感あふれる壮麗なもの。
また弦の薄くやや硬質な響きと、
木管の線的に明確に響くそれは、
現代のピリオド系の音作りと近しい物があるものの、
その歌わせ方は洗練されたややロマンティックな趣があり、
なんかベルサイユ宮の王侯貴族の集いでバッハを聴いているような、
なんとも独特かつ典雅な雰囲気がここにはある。
一部にヘタウマ的な響きもあるにはあるけど、
なんかそれもまたいい味に自分は感じている。
しかしこれを聴いていると、
バッハの懐の深さというものをあらためて痛感させられる。
メンゲルベルクやストコフスキー、
カール・リヒターやミュンヒンガー、
そしてアーノンクールやコープマン等々、
タイプの違うスタイルがいろいろとあるものの、
好き嫌いを別とすれば、
これほど多様なスタイルのいずれにも対応してしまう音楽など、
あとはベートーヴェンくらいしか無いかもしれないと思えるほど、
バッハの巨大さを強く感じさせられてしまう。
そういえばこのあたりの世代の指揮者は、
シューリヒト、アーベントロート、クレンペラー、フルトヴェングラーと、
バッハの管弦楽曲や合唱曲に強い指揮者が揃っているが、
これは1900年がバッハの没後150年に当たっていたことと、
今のようにピリオド云々という敷居も無かった事で、
自分たちが音楽を学ぶ過程で、
親しくバッハと接する機会が多かったからなのかもしれない。
もし聴く機会があったらぜひ一度。
〆
スイス・ロマンド管弦楽団の演奏会に一度も行ったことがないです...
by サンフランシスコ人 (2019-05-09 03:24)
soramoyou様、はじドラ様。
アンセルメとバッハというのはなかなかピンと来ませんが、ハイドン同様けっこうしっくりいっていて、最初聴いた時は失礼かもしれませんが、ちょっと驚いてしまいました。できればロ短調ミサなども録音してほしかったです。
nice! ありがとうございました。
by 阿伊沢萬 (2019-05-12 01:12)
自分も一度、しかもジョルダン父の時代でしか聴いてません。ただ現在はノットの指揮によってかなり変わったとは聞いています。
by 阿伊沢萬 (2019-05-12 01:15)