ローゼンストックの悲愴 [クラシック百銘盤]
ジョゼフ・ローゼンストック。
N響創世記の育ての親であり、
名誉指揮者でもあった名指揮者。
今はさすがにもうその名前を知ってるいる若い方が、
いったいどれだけいるだろうかというくらい、
本当に過去の指揮者という感じになっている。
ただ彼が1936年に新交響楽団(N響の前身)に来た時は、
本当にあんな高名な指揮者が赴任するのかと、
半信半疑だった学院や関係者もいたとか。
その後のローゼンストックの猛練習の逸話や、
日本でのそれはいろいろと書かれているのでここでは書かないが、
N響の任を離れた後も1977年まで断続的に客演し続けた。
その最後の来日となった1977年のライブがじつはCDになっている。
二枚組で、二枚目はロイブナー指揮のものだけど、
一枚目はローゼンストックの演奏が二曲収録されている。
内容は、
・ボロディン:交響曲第2番ロ短調
・チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 Op.74『悲愴』
管弦楽:NHK交響楽団
録音時期:1977年2月16日、2月4日
録音場所:東京、NHKホール
というもの。
因みにこのときのローゼンストックのN響との全公演は以下の通り。
2月4&5日NHKホール
モーツァルト/交響曲第33番
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
2月9&10日NHKホール
モーツァルト/交響曲第33番
デュカス/魔法使いの弟子
ストラヴィンスキー/ペトルーシュカ
2月16&17日NHKホール
ロッシーニ/シンデレラ、序曲
モーツァルト/三台のピアノの為の協奏曲
(P:安川加寿子、深沢亮子、ローゼンストック)
ボロディン/交響曲第2番
2月19日NHKホール
デュカス/魔法使いの弟子
モーツァルト/三台のピアノの為の協奏曲
(P:安川加寿子、深沢亮子、ローゼンストック)
ストラヴィンスキー/ペトルーシュカ
2月23日NHKホール (NHK交響楽団創立50周年記念演奏会)
メンデルスゾーン/フィンガルの洞窟
モーツァルト/イドメネオ
シューベルト/交響曲第8番「グレート」
2月26日長岡市立劇場
2月27日柏崎市民会館
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番(P:ユージン・インジック)
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
つまりこの年のローゼンストックの来日公演は、
「悲愴」にはじまり「悲愴」に終わるというものだった。
自分はこの時のローゼンストックを、
実演では聴けなかったけどテレビでは何度かみている。
1885年生まれということで、
すでに八十歳を超えていたが、
椅子に座るでもなく矍鑠とした指揮ぶりだったという記憶がある。
ただ演奏そのものはあまり強い印象が無いため、
このCDを聴いてその演奏を初めて聴くのとじつは大差がない。
そんな中で、この悲愴はちょっと不思議な魅力がある。
この演奏を聴いておそらく人によっては、
もっとパンチの効いた強烈な演奏を好まれるかもしれないし、
エッジのきつい緊張感を前面に出したような演奏をとるかもしれない。
たしかに劇的でも激情的でもないかもしれないが、
ここにはそれらとはまた違った、
なんとも温かく心に響く清澄な悲愴がここにはある。
どこにも角ばったところやギスギスしたところがない、
ちょっと流線形といいたいような感じだけど、
じっくりと腰を据えて耳を傾けると、
そこからじつに底の深い心象風景のようなものが感じられるし、
何より聴いていて、
じつに幸せ気持ちになれるような気がする。
「悲愴」を聴いてこんな印象をもつなど普通はあり得ないけど、
とにかくここにはそういうものを感じさせる音楽がある。
演奏時間は、
19:25、8:27、10:13、11:00。
N響はいつもよりかなり丁寧な演奏を心がけており、
おかしな方向にとっちらかったり、
自分勝手に滅裂な傾向に走ることもない良好な状態。
これがN響のローゼンストックへの敬意のあらわれなのか、
それとも指揮者のオケに対する強い引力のようなものかは分からないが、
とにかく指揮者とオケがしっかりとした一体感をもって演奏をしている。
この演奏、
今では自分にとって同曲のお気に入りのひとつとなっています。
最後に余談ですが、
自分はこの年の1月にローゼンストックの新潟での二公演のうち、
最初の長岡公演の告知を当時その長岡で見た記憶がある。
当時地方ではプロオケの演奏を聴く機会があまり無かったことと、
この告知が横長のかなり大きな横断幕風の告知物であったこと、
そしてそのあった場所が長岡市立劇場の側でなく、
当時駅前通にあった厚生会館の前の雁木下にあったこと、
この三つの理由でかなり記憶に強く残っている。
じつは会場の市立劇場は数年前に新設されたものの、
駅からやや離れているため、
この駅前の人通りの多い場所に告知されていたらしい。
当時自分は長岡に住んでなかったので、
この公演を聴くことはできなかったが、
この長岡公演と続く柏崎公演が、
ローゼンストックの日本での最後の公演となっただけでなく、
これを最後に、以降彼自身指揮活動を引退したらしいとのこと。
それを思うと、
もう四十年以上前の話だけど、
この二公演を聴いた地元の方たちが、
このCDを聴いたらどのような感想を持たれるだろう。
ちょっとそんな事が気になってしまいました。
以上です。
〆
N響創世記の育ての親であり、
名誉指揮者でもあった名指揮者。
今はさすがにもうその名前を知ってるいる若い方が、
いったいどれだけいるだろうかというくらい、
本当に過去の指揮者という感じになっている。
ただ彼が1936年に新交響楽団(N響の前身)に来た時は、
本当にあんな高名な指揮者が赴任するのかと、
半信半疑だった学院や関係者もいたとか。
その後のローゼンストックの猛練習の逸話や、
日本でのそれはいろいろと書かれているのでここでは書かないが、
N響の任を離れた後も1977年まで断続的に客演し続けた。
その最後の来日となった1977年のライブがじつはCDになっている。
二枚組で、二枚目はロイブナー指揮のものだけど、
一枚目はローゼンストックの演奏が二曲収録されている。
内容は、
・ボロディン:交響曲第2番ロ短調
・チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調 Op.74『悲愴』
管弦楽:NHK交響楽団
録音時期:1977年2月16日、2月4日
録音場所:東京、NHKホール
というもの。
因みにこのときのローゼンストックのN響との全公演は以下の通り。
2月4&5日NHKホール
モーツァルト/交響曲第33番
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
2月9&10日NHKホール
モーツァルト/交響曲第33番
デュカス/魔法使いの弟子
ストラヴィンスキー/ペトルーシュカ
2月16&17日NHKホール
ロッシーニ/シンデレラ、序曲
モーツァルト/三台のピアノの為の協奏曲
(P:安川加寿子、深沢亮子、ローゼンストック)
ボロディン/交響曲第2番
2月19日NHKホール
デュカス/魔法使いの弟子
モーツァルト/三台のピアノの為の協奏曲
(P:安川加寿子、深沢亮子、ローゼンストック)
ストラヴィンスキー/ペトルーシュカ
2月23日NHKホール (NHK交響楽団創立50周年記念演奏会)
メンデルスゾーン/フィンガルの洞窟
モーツァルト/イドメネオ
シューベルト/交響曲第8番「グレート」
2月26日長岡市立劇場
2月27日柏崎市民会館
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番(P:ユージン・インジック)
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
つまりこの年のローゼンストックの来日公演は、
「悲愴」にはじまり「悲愴」に終わるというものだった。
自分はこの時のローゼンストックを、
実演では聴けなかったけどテレビでは何度かみている。
1885年生まれということで、
すでに八十歳を超えていたが、
椅子に座るでもなく矍鑠とした指揮ぶりだったという記憶がある。
ただ演奏そのものはあまり強い印象が無いため、
このCDを聴いてその演奏を初めて聴くのとじつは大差がない。
そんな中で、この悲愴はちょっと不思議な魅力がある。
この演奏を聴いておそらく人によっては、
もっとパンチの効いた強烈な演奏を好まれるかもしれないし、
エッジのきつい緊張感を前面に出したような演奏をとるかもしれない。
たしかに劇的でも激情的でもないかもしれないが、
ここにはそれらとはまた違った、
なんとも温かく心に響く清澄な悲愴がここにはある。
どこにも角ばったところやギスギスしたところがない、
ちょっと流線形といいたいような感じだけど、
じっくりと腰を据えて耳を傾けると、
そこからじつに底の深い心象風景のようなものが感じられるし、
何より聴いていて、
じつに幸せ気持ちになれるような気がする。
「悲愴」を聴いてこんな印象をもつなど普通はあり得ないけど、
とにかくここにはそういうものを感じさせる音楽がある。
演奏時間は、
19:25、8:27、10:13、11:00。
N響はいつもよりかなり丁寧な演奏を心がけており、
おかしな方向にとっちらかったり、
自分勝手に滅裂な傾向に走ることもない良好な状態。
これがN響のローゼンストックへの敬意のあらわれなのか、
それとも指揮者のオケに対する強い引力のようなものかは分からないが、
とにかく指揮者とオケがしっかりとした一体感をもって演奏をしている。
この演奏、
今では自分にとって同曲のお気に入りのひとつとなっています。
最後に余談ですが、
自分はこの年の1月にローゼンストックの新潟での二公演のうち、
最初の長岡公演の告知を当時その長岡で見た記憶がある。
当時地方ではプロオケの演奏を聴く機会があまり無かったことと、
この告知が横長のかなり大きな横断幕風の告知物であったこと、
そしてそのあった場所が長岡市立劇場の側でなく、
当時駅前通にあった厚生会館の前の雁木下にあったこと、
この三つの理由でかなり記憶に強く残っている。
じつは会場の市立劇場は数年前に新設されたものの、
駅からやや離れているため、
この駅前の人通りの多い場所に告知されていたらしい。
当時自分は長岡に住んでなかったので、
この公演を聴くことはできなかったが、
この長岡公演と続く柏崎公演が、
ローゼンストックの日本での最後の公演となっただけでなく、
これを最後に、以降彼自身指揮活動を引退したらしいとのこと。
それを思うと、
もう四十年以上前の話だけど、
この二公演を聴いた地元の方たちが、
このCDを聴いたらどのような感想を持たれるだろう。
ちょっとそんな事が気になってしまいました。
以上です。
〆
コメント 0