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カラヤンのサンモリッツセッション [クラシック百物語]

カラヤンが1964年にウィーン国立歌劇場の食を辞したその夏。

カラヤンは別荘のあるスイスのサンモリッツにいたが、
この年から1972年の夏まで、
カラヤンはベルリンフィルのメンバーをこの地に招き、
一緒に夏休みを楽しんだというが、
その期間の数日を利用し、
カラヤンはいろいろとメンバーとともに、
バロック音楽や弦楽合奏を中心とした曲を、
たなりの量の録音を行った。

録音会場はサンモリッツにある「ヴィクトリアザール」となってますが、
これは「ホテル レーヌ ビクトリア」というホテルの中にある劇場の事で、
このホテルの公式サイトにも
https://reine-victoria.ch/en/
「A theatre – where none other than Herbert von Karajan conducted an orchestra – and a conference room with a wonderful view towards Maloja provide an elegant setting for events of all kinds.」
というふうにその事が記述してありますし、その写真も掲載されています。

最初のセッションは8月17日から24日にかけて行われ、
バッハの管弦楽組曲の2番と3番。
そしてエディット・ピヒト=アクセンフェルトを迎えて、
バッハのブランデンブルク協奏曲の1番から5番までが録音された。
51Gp61BMVLL.jpg

6番のみは翌年2月にベルリンで録音されたようですが、
これが時間切れだったのか、夏の録音が不満だったのかは不明です。

その後1972年迄の毎年、
ほぼこの時期にカラヤンとベルリンフィルは、
いろいろと録音を行っている。

1965年は
モーツァルトのk.287、334、525、交響曲29&33番。

1966年は
フェラスとのバッハのヴァイオリン協奏曲1番と2番。
ヘンデルの合奏協奏曲5、10、12。
モーツァルトのk.247、251。

1967年は、
ヘンデルの合奏協奏曲 2、3、4、6、7、9

無題.png

1968年は、
ヘンデルの合奏協奏曲 1、8、11
モーツァルトのk.239、136~138
同ホルン協奏曲全曲をザイフェルトと。
ロッシーニの弦楽のためのソナタ 1~3、6

1969年からは録音会場がホテルから歩いて10分程の所にある、
French Church "Au Bois", St. Moritz
https://www.engadin.stmoritz.ch/sommer/en/sightseeing/franzoesiche-kirche-au-bois/
という教会に変わった。
※ひょっとしたら教会は間違ってるかもしれません。もし間違ってたら申し訳ありません。

アルビノーニの弦楽とオルガンのためのアダージョ
パッヘルベルのカノンとジーグ
ボッケリーニの小五重奏曲
レスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
モーツァルトの弦楽のためのアダージョとフーガ
ベートーヴェンの大フーガ
R・シュトラウスのメタモルフォーゼン
オネゲルの交響曲第2番
ストラヴィンスキーの弦楽のための協奏曲

というかなり幅のある曲目がこの時は録音された。

尚、この年は8月の上旬にもセッションが行われている。


1970年は、
コレルリ、マンフレディーニ、トレルリ、ロカッテリの合奏協奏曲。
ヴィヴァルディの協奏曲ものが6曲。

1971年のみEMIが録音を行い、
モーツァルトのクラリネット協奏曲、ファゴット協奏曲、
フルート協奏曲第1番、オーボエ協奏曲、
フルートとハープのための協奏曲、協奏交響曲。
ハイドンの交響曲第101番「時計」、交響曲第83番「牝鶏」

1972年は、
ヴィヴァルディの「四季」
ストラヴィンスキーの「ミューズの神を率いるアポロ」

四季.png

というように録音が行われた。


当時これらの録音のいくつかは、
「粗製乱造」とか「豪華なBGM」とか、
いろいろな言われ方をされていたという記憶がある。

自分はこれらの全てを聴いた記憶はあるが、
正直まったく思い出せないものもある。

今これらのいくつかを聴き返してみると、
リラックスした音楽と、
今からみるとけっこう個性的な演奏というかんじで、
自分でも不思議なくらい楽しく聴くことができた。


もちろんこれはかつても今も、
正統的なバッハやヘンデルとはとてもいえないし、
アンサンブルも今風の線的で清澄感のある颯爽と締まったものでもない。

ある意味メンゲルベルクやストコフスキーのスタイルとは違うものの、
大時代的でユニークな演奏という気がした。

またソロをとっている各人も、

シュヴァルベ、ツェラー、ザイフェルト、ゴールウェイ、
コッホ、ライスター、ピースク、ヘルミスと、

ベルリンフィルの好きな方ならお馴染みの名手が揃っている。

カラヤンのバロックやハイドン、モーツァルトは、
今どれだけ評価され聴かれているかはわからないけど、
録音されてから半世紀経った今の時代に聴いてみると、
とにかくかつての価値観とはかなり違った、
いろいろと感じさせられるものがあります。

興味のある方はぜひ一度聴かれる事をお勧めします。

https://www.youtube.com/watch?v=fSAKvQ2-QQg
カラヤンのヘンデル

https://www.youtube.com/watch?v=nXmObq329JA
カラヤンのモーツァルト

尚、66年と68年のヘンデルではカラヤンはチェンバロも弾いています。
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阿伊沢萬

この時のセッション。けっこう肩の力が抜けたリラックスモードのものが多く気に入ってます。自分なんかはこういうスタイルの
バロックや古典で育ったので、よりそう思うのかも。

はじドラさま、nice! ありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2018-02-07 01:25) 

KenGee

2013年サンモリッツへ赴き、ジャケットの裏の記録を現地のホテル支配人に見せましたら、ここよ! っとプロテスタントの教会を教えていただきました。少し街から外れた小高い丘の上にあり、サイクリングロードの一部にもなっていました。教会の周囲は少し荒廃をしていました。
残念ながら写真は前のPCにあり出せませんが、どなたかの写真がありました。また見ていただいたらと思います。
https://scontent-nrt1-1.xx.fbcdn.net/v/t1.0-9/12061_493891300685145_1816732663_n.jpg?_nc_cat=0&oh=3a4a4baa8215425e6449d84983447d5d&oe=5BD82BE9
by KenGee (2018-07-22 22:22) 

阿伊沢萬

ずいぶん質素な教会のようでちょっと意外でしたが音響はその分いいのかもしれません。

KenGee 様、貴重な情報ありがとうございました。



by 阿伊沢萬 (2018-07-26 04:22) 

なおたか

阿伊沢様、とてもためになる記事でした。
一連のサン・モリッツでの録音で好きなのがいくつかあります。
モーツァルトの管楽器の協奏曲集とか、ロッシーニ、ヘンデルの録音が大好きです。
サン・モリッツでの夏の様子を本で見つけたので、リンク張らせていただきました。
https://blogs.yahoo.co.jp/karajan7328/35283928.html
ありがとうございました。
by なおたか (2019-01-13 23:56) 

阿伊沢萬

自分もロッシーニやヘンデル、それにザルツブルグシンフォニーとディベルティメントの11番が気に入ってます。

最近ボックスものが多く出てますけど、このセッションをひとまとめにしたボックスなど出してくれると、幸福だった時代のカラヤンとBPOの一コマを、今一度多くの方が耳で確かめられるような気がします。

このセッション、もう少しいろいろと聴かれてほしいなと感じています。

なおたか 様、ご丁寧にコメント等ありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2019-01-15 00:41) 

サンフランシスコ人

「シュヴァルベ、ツェラー、ザイフェルト、」

http://slippedisc.com/2019/03/berlin-phil-mourns-a-great-horn/

首席ホルン奏者を務めたゲルト・ザイフェルトが亡くなった....
by サンフランシスコ人 (2019-03-05 08:04) 

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