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「意味がなければスイングはない」を半分読んで。 [いろいろ]

というわけで2005年村上春樹さんの、
「意味がなければスイングはない」を読んだ。

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なぜ半分かというと、
本書では10に区切っていろいろな種類の音楽を語っているが、
そのうち半分近くは自分には興味の無い、
もしくはあまり聴く機会のない音楽なので、
そこはとばしてしまったからです。


自分が読んだのは「あとがき」を除く全10章のうち6章。

◎「シダー・ウォルトン
――強靱な文体を持ったマイナー・ポエト」

◎「シューベルト「ピアノソナタ第十七番二長調」D850
――ソフトな混沌の今日性

◎スタン・ゲッツの闇の時代 1953-54

◎ゼルキンとルービンシュタイン 二人のピアニスト

◎ウィントン・マルサリスの音楽はなぜ(どのように)退屈なのか?

◎日曜日の朝のフランシス・プーランク


の6章。

ようするにクラシックとジャズの部分のみだ。

で、感想なのですが、
じつはこれがあんまり無い。

というより、

「ああ、そうですか。」

というかんじで、
村上さんの趣味嗜好をその立ち位置で語られているだけなので、
こちらはもそうですかとしか言えないものがある。


だがひとつだけ強く関心を持ち考えさせられたのが、
ウィントン・マルサリスのところ。

じつは村上さんは触れていないが、
マルサリスについては1980年代前半に、
かれを含めた若手のジャズメンを総称して
「新伝承派」と呼び評価していた時期があった。

それは主にスイングジャーナル誌が中心だったと思うが、
これに対して評論家中村とうよう氏が、
「新伝承派」を滅多切りにして、
この両者が激しく対立するということが起きた。

自分は事の顛末をあまりよく知らないけど、
それはジャズとはなんぞやという根本的な話にまで、
多ジャンルを巻き込んでのものとなったという。


それだけに村上氏が
ここでマルサリスを一部とはいえ退屈といったことで、
自分は当時のそれを思いだしてしまったし、
また当時の自分のマルサリスへの印象もまた思い出してしまった。


自分は正直に言うとマルサリスはそれほど好きではない。

1982年のオールスター・ジャズメッセンジャーズ時の公演や、
その後に発売されたクラシックとジャズの新譜も耳にしたが、
それらは決して自分の興味をつなぎとめるだけのものはなかった。

マルサリスは村上さんが言うようにおそろしく潔癖で真面目。

クラシックを録音するときは唇をそれになじませるため、
しばらくジャズを演奏しなかったというのだから、
その徹底ぶりがうかがえる。

だがマルサリスのそれは自分だけではなく、
他人様に対してまでも及んだ。

当然そのためマルサリスのグループからは、
それを嫌って去っていくメンバーも続出したという。

それはちょっとベニー・グッドマンを想起させられるものがある。

村上さんはそんなマルサリスの欠点をいろいろと書き、
それでも尚彼を現代最高のジャズメンのひとりと呼び、
その将来を期待する反面、心配もしていた。


では自分はどうかというと、
この30年以上マルサリスをほぼ無視していたといっていい。

正直マルサリスは確かにうまい。

だけど自分はなんかマルサリスに、
いつもその技術や手段はいろいろとみせてもらってはいるが、
どこか緊張感や歌心みたいなものをあまり感じられない。

その先にあるあなたの本音はなんですかという部分で、
いつもマルサリスは鉄のカーテンを閉め、
その本音をみせないでいるという、
そんな印象を強くもっている。


おそらくマルサリスは自分の世界の中で、
自分の言いたいことやりたいことをやっているのかもしれないが、
そのためそれはマルサリス自身がただ感じているだけで、
外からみてる自分には、
それが自己中心の小手先芸にしかみえてこないのだ。


これにはマルサリスの音楽があまりにも綺麗に、
しかも形にこだわったつくりをしすぎているという部分もある。

例えて言えばそれは、
あまりにも背広の着こなしがバリッと真面目に決まりすぎて、
面白味もカッコよさも感じられないというところだろうか。。

これがブレイキーの時はそんなサウンドを、
御大ブレイキーがドカドカと叩きまくったりするため、
その背広の着こなしがちょっと崩れてしまっている。

だがそのやや崩した着こなしがこちらには面白くも、
そしてカッコよくもみえるのだ。
ブレイキーはそんなところも本能的に感じ、
そしてドカドカとやっているのだろうが、
そういう外的要素が入った時のマルサリスは、
なかなかそういう意味で面白く聴けるものがある。

クラプトンと共演したライブなどもそのいい例だろう。

あのときはディキシーランドジャズをやっていたが、
そのときのマルサリスグループ全体の推進力とノリ、
それに各々の活き活きとした演奏は、
そんなマルサリスの最良の面が出たといっていいだろう。


マルサリスが今後どうなるかはわからないが、
いつまでもカチッとまとまっているのが取り柄ならともかく、
自分だけのグループでも、
ちょっと背広を着崩せるようになれば
これはこれでかなり面白いことになるとは思うのですが、
技術潔癖症傾向が強いうちは厳しいかも…。


ということがこのマルサリスのところで感じたものでした。


あとそれ以外ではプーランクのところで、

「ヴォタペックのプーランクは聴いたのか?」

という突っ込みくらいでしょうか。

ただあのプーランクも重量級ではないので、
あまりお気に召さないかもしれませんが…。


といったところです。

残り四つと「あとがき」はいつか気が向いたとき、
続編としてここにまた書き込みます。

それが無いときは、それまでだったということで。


〆です。
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阿伊沢萬

ある意味感想文なのですが、それでもやはりそこそこの肩書がある人のそれはどうしても興味をもってしまいます。じつは村上さんの音楽感と自分とはあまり重なるものが無いのですが、ことマルサリスではかなり重なってしまいました。簡単に言うとマルサリスにはもっとバカになってやってほしい部分があるるのですが、なかなかそこのところが…。

makimakiさま、nice! ありがとうございました。
by 阿伊沢萬 (2015-05-28 21:05) 

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