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シューリヒトの「ヘンゼルとグレーテル」 [クラシック百銘盤]

カール・シューリヒト(1880-1967)が残した、
極めて貴重なオペラ全曲録音。

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・フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』全曲

 マルセル・コルデス(ペーター)
 ゲルトルート・グルクシュターラー=シュスター(ゲルトルート)
 バルバラ・シェルラー(ヘンゼル)
 ギーゼラ・ポール(グレーテル)
 リリアン・ベニグセン(魔女)
 ギゼラ・クナッバ(眠りの精)
 オーダ・バルスボルグ(露の精)

 北ドイツ放送交響楽団&合唱団、少年少女合唱団
 カール・シューリヒト(指揮)

 録音:1962年12月ハンブルクにて
 (放送用モノラルセッション録音)

フンパーディンクはかつてシューリヒトが師事したことがあるので、
それがらみかと思ったが、
録音時期が12月ということで同年のクリスマス放送用に収録したのだろう、
という以外は分からなかった。


音質はモノラルながらとてもよく、
商業用レコーディングといってもいいレベルだと思う。


シューリヒトは若い時期にはオペラを指揮していたようだが、
その後は劇場と縁が無く、
ピットに入ることがほとんど無かったようだ。

それだけに82歳時のこの時期の録音はとても貴重。

シューリヒトは当時EMIやコンサートホールに、
かなりの録音をしていた時期でもあり、
リュウマチに晩年悩まされてはいたものの、
それ以外の部分では心身ともに充実していたのだろう。

演奏は渋い音色ではあるものの、
音楽のもつメルヘンタッチのそれはよく描かれており、
じつによどみない清澄な流れが全体を支配している。

また歌手は今ではあまり有名ではないものの、
全体的になかなか頑張っている。

ウィーンのフォルクスオパーで活躍していた歌手二人が、
父親と母親役をなかなか表情豊かに演じている。が、
このへんは放送対象が子供含まれていたこともあるのかも。

ただ驚いたのはヘンゼルとグレーテルを演じた二人で、
二人ともまだ二十代だったとか。

ヘンゼルのシェルラーハ29歳で三年前にデビューしたばかりで、
「フィガロ」のケルビーノあたりを歌っていたとのこと。

そしてグレーテルのポールに至ってはまだ25歳。
しかも本格的デビューをしていなかったということで、
ほぼド新人だったというから驚きだ。

全体的に主役級の歌手というより、
オペラハウスの脇役や端役をしてたという方を集めたようで、
実力のある人から初々しい若手までと、
けっこう幅のある人選という気がする。

というか放送局の放送用録音ということで、
直近でも集められることができるような人たちを集めたという、
そんなところかもしれない。

だけどそれだけにシューリヒトが全体を強く支配している雰囲気が強く、
歌手も一部ちょっとオーバーな演技はあるものの、
シューリヒトの音楽を差し置いてどうこうしようという所は皆無。

おかげでシューリヒトの指揮ぶりと曲の詩的な美しさが満喫できる、
とても満足度の高いものとなっています。

それにしてもこれだけの演奏をクリスマス期に放送するとは、
当時のハンブルクの人たちはなんと幸せなことでしょう。


しかしここでひとつ残念なことが脳裏に浮かんだ。

じつはこの翌年、
当時シューリヒトも録音を行っていたEMIが、
ウィーンフィルとこの「ヘンゼルとグレーテル」を録音している。

一説によると当初はクリップスだったのがケンペに変更。
さらにそれも変更となりクリュイタンスにおちついたということなのですが、
このときシューリヒトに頼むという選択肢はなかったのかなあと、
ちょっと残念なものを感じた次第。

もっともクリュイタンスの出来も素晴らしいので、
それそのものには文句は無いですし、
クリュイタンスとウィーンフィルの録音というのもそんなには無いため、
どっちに転んでも残念なことなのかなと。


2012年に復刻されたもののまだまだ地味なアルバムですし、
一部の歌手の力量に若干弱さを感じられる人もいるようですが、
個人的には同曲屈指の名演と感じています。

クリスマスにお薦めの一組です。


因みにこのCDは二枚組ですが、
1929年にヘルマン・ヴァイゲルが指揮した同曲の抜粋も収録してるため、
一枚目があまり芳しくない箇所で切れてるのがこれもちと残念。

そこだけはご了承を。
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