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「終戦のエンペラー」を観て [映画]

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(公式サイトへは上の画像をクリックされると行けます)

「終戦のエンペラー」を観てきました。

かなり史実に基づいた話ということでいきなりネタバレ展開でいきます。

まずこの映画の主人公はマッカーサーではない。
彼の腹心ともいえるフェラーズ准将が主人公といえる。

彼は日本でマッカーサーから、
十日間以内に天皇を裁判にかけないようにするための資料作成を命じられる。

以降彼の苦悩と若き日の日本女性とのロマンスをからめて、
日本人と天皇との関係に直面していくその姿を
昭和天皇とマッカーサーの会見までを、
フェラーズ付きの通訳タカハシを含めて描いていく。

流れとしてはザックリこんな感じです。
このフェラーズ准将は実在の人物ですが、
ヒロインのアヤとのロマンスは
それに該当するような事実はあるものの、
その身内を含めて多くはフィクションで描かれています。
このため河合道などはこの作品には登場しません。

ただこのロマンスが少々量的に過剰な気がしないでもなく、
このあたりは七十年近く前の日本での出来事を他国で映画として公開するとき、
やはりこういう部分の食いつきが無いと興行的に無理なんだろうなあと、
ちょっといろいろと考えてしまいました。

このため「にほんいちばん長い日」みたいな映画を想像すると、
かなり肩すかしをくってしまうかもしれませんが、
終戦直後のことを扱った映画としては、
多少唐突で情緒に流されたような部分が少なからずあるものの、
かなりの部分じっくりと描きこまれており、
特にそれらは歴史上の人物に対する描き方にあらわれているせいか、
そこそこの説得力を観る側に与えているところも多々あります。


たしかに東条役の火野さんは台詞もなくワンシーンの登場でしたし、
近衛公の中村さんはいささか若い気がしないではないものの、
伊武さんの木戸幸一はその苦悩がよく表出されていましたし、
5月に亡くなられた夏八木さんの関屋次官も、
これまた宮内次官としての重さを感じさせる、
たいへん見応えのある役となっていました。

そしてマッカーサーのトミー・リー・ジョーンズ。
すっかりここ数年テレビで有名になってしまったが、
似てる似てないというより、
とにかく雰囲気というものが妙にあっていたように感じられた。
マッカーサーは士官学校で歴史に残る秀才だったが、
ジョーンズのそれはそういう部分よりも、
「強さ」を前面に出した支配者としてのそれを強く感じさせられるものだった。
そしてちょっと粗野に感じられたのは、
ある意味日本が当時米軍全体に感じていたイメージからきてるのかもしれない。

ところでこの映画は歴史をよく知っているというより、
よく知らない人にとにかく知ってもらおうというつくりのため、
かなり娯楽性の強い演出も見受けられはするものの、
戦後日本の姿というものを、
ある意味感情や感覚に流されない、
かなりさめたというか突き放したようなところもあり、
これが作品に独特の平衡感のようなものを与えていたようにも感じられました。

自分としてはこのあたりにじつはこの映画にとても惹かれるものがありました。

ですがそういう自分にも、
最後昭和天皇とマッカーサーが会見するそのシーンは
正直やはり心中穏やかにみていられるものではなかった。
なんというのだろう、
ちょっと不思議なほどの緊張感となんともいえない感覚に、
強く心を動かされるものがあった。

それはそのときの館内の雰囲気が、
かつて劇場で感じたことのない独特の雰囲気に支配されていたことからも、
それが自分だけの感覚ではない、
ある意味日本人の特に年配の人に多く感じられる共通した思いが、
もちろんそれに対して感動なのか嫌悪なのかは各人分かれるものの、
そこに存在していることが強く感じとられるものがありました。

ただひとつ、
西田敏行さん演ずる鹿島大将。
いくら架空の人物とはいえ、
大将でサイパンと沖縄の両方にいたという設定はどうなのだろう。
海軍ならありえないでもないが、
ちょっとしたことなのですがこのあたりがなんともでした。

とにかく多少甘さは残りますし、
もう少し厳しく現実をつめて緊張感をより増したものにしてほしかったという、
そういう気持ちもあるにはありますが、
そこそこ見応えのある作品ではありました。

あと敗戦後の日本の様子等を描いた映像はじつにしぜんに描かれていて、
このあたりはなかなかよくできていたと思います。

こんなところです。
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