グスコーブドリの伝記、雑感

今夏(2012年7月)公開の「グスコーブドリの伝記」を観た。


http://wwws.warnerbros.co.jp/budori/
(公式サイト)

この作品は1994年にも劇場作品があり、
それもなかなか原作にうまく沿った作品で、
特に終盤は原作がなぜあんなにあっさり終わっているのか、
その謎を解くようなつくりに結果なっていたのも感慨深かったし、
エンディングの味わい深いつくり方や
最後の最後で作り手のちょっとした遊び心みたいなものが嬉しい、
そんななかなかの良作だった。

今回は前作と違い
あの「銀河鉄道の夜」のスタッフが中心となり作成したというもので、
途中会社の解散や震災等によりいろいろと紆余曲折があったものの、
ようやく今夏完成公開となった作品だ。

まだ見ていない方もいるのであまり細かく感想を書くとあれかもしれないが、
今回のこの映画はこの初期稿ともいえる
「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」と「グスコーブドリの伝記」との、
合体形みたいな、そんなかんじのつくりとなっている。

もともとそんなに文量の無い作品なのでこれはなかなかユニークだし、
話を膨らますのにも決しておかしいことはない。
また「銀河鉄道の夜」に出てきた猫達もあちらこちらにいる。

だが原作とかなりかけはなれたところが多く、
そういう意味ではリメイクされた「キングコング」みたいにも感じられるが、
ラストでかなり大きな改変がされており、
しかもけっこうな唐突感がそこにはあるように感じられてしかたなかった。

原作を読んでいなければこれでもいいのかもしれないが、
原作を読んでいるとかなりこのあたりの唐突感、
違和感は正直少なくないものがある。
作者はこのあたりの解釈を観る者各自にあずけたようだけど、
これではあずけすぎではないかという気が強くした。

（因みにラストシーンはいくつかの事情でカットが施されたという話を聞いた。これが事実ならじつに気になる話だ。）

また絵もときおり統一感を欠くような部分があり、
美しいかもしれないが、それが気になるところが気持ち存在していた。

このあたりは先の諸事情が影響していのかもしれない。

個人的には原作と大きく離れようが、危険なほど接近しようが、
漫画がアニメに、小説がオペラになるのと同じで、
そうなった段階である意味別物になるのは必然という考えが、
自分には以前からある。

だけどいずれにせよ、それが中途半端はいちばんマズイ。
どちらに転んでも不発では正直みているこちらも歯がゆいものがある。
今回はそういう意味で、特に終盤にかなりの物足りなさがあったし、
(あっさりとした終わり方とはまた違う)
ちょっと見る側に不親切なかんじもした。

下駄をあずけると、受け手に考えを託すのとは似て非なるものだ。
などというとこれは言い過ぎだろうか。

ラストの小田さんの歌もそのためやはり唐突だし、
違和感が少なからず感じられてしまった。
好きな歌だけにこういうのはやはり残念だ。

声優に関しては小栗さんの爽やかなブドリはとてもよかった。
またクーボー博士の柄本明さんもこれまた秀逸だったし、
赤ひげの林家正蔵さんもなかなかうまく収まっていた。
さすがにネリは前作の篠倉伸子さんには及ばなかったが、
これは篠倉さんが素晴らしかったので仕方ないところだろう。

グスコー・ブドリ　小栗旬
グスコー・ネリ　忽那汐里
語り手・クーボー博士　柄本明
コトリ　佐々木蔵之介
赤ひげ　林家正蔵
グスコー・ナドリ（ブドリの父）林隆三
ブドリの母　草刈民代
てぐす飼いの男　内海賢二
学校の先生　桑島法子
観測員　遊佐浩二
主任　宮本充

あとちゃんと配役はパンフや公式サイトにも細部までだしてほしい。
おじいさんが納谷六郎さんの声に聞こえたのだが、
最後のテロップで確認するのを忘れてしまった。
ほんとうにこのあたりは不親切極まりない。

声ヲタとかそういうこと以前に、
制作にかかわったすべての人にこういう場合は敬意を表して、
ちゃんと公式サイトやパンフにもクレジットすべきではないだろうか。
このあたりにも若干不満を感じてしまった。
パンフに関しては昨年(2011)の「コクリコ坂から」もそうだった。
こんな雑で誠意のないことが慣例するのは正直いただけない。
なんとかならないものなのだろうか。

あと桑島さんが「雨ニモマケズ」の朗読を先生役でしていた。
朗読夜で聞きなれているこちらはともかく、
初めての方には人によって表情が濃厚に聞こえたのではないだろうか。
このあたりは画面の賑やかさが相乗したのかもしれない。

実際はいろいろともっと書きたいけどあとは公開終了後とします。

以上です。