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メンデルスゾーン交響曲第2番「賛歌」 [クラシック百銘盤]

メンデルスゾーンというと
かの有名ヴァイオリン協奏曲や、ピアノの「無言歌」。
交響曲第3番「スコットランド」、交響曲第4番「イタリア」
そして結婚行進曲が特に有名な「真夏の夜の夢」がうかんでくる。

それが比較的ふつうなのですが、
彼が在世中にはさらにもうひとつ、
初演時から好評を博していた作品、
交響曲第2番「賛歌」というものがある。

詳細は
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)
にもいろいろとあるのでそちらを参考にしていただきたい。

この曲は交響曲第2番となっているので
一見メンデルスゾーンの若い時期の曲と勘違いされてしまうが、
実際は最後から二番目の交響曲で、
38歳でその生涯を閉じたメンデルスゾーンが
31歳のときに書き上げた、
ある意味本人の最円熟期に書き上げられた作品だ。

しかも演奏時間は約70分強というから、
それこそ「イタリア」と「スコットランド」を続けて聴いたくらいの、
それくらいの長さとなっている。

さらにその編成も二管編成というからそれほど特大ではないが、
これに合唱と複数の独唱者、さらにはオルガンまで使用されているという、
当時としてはかなりの大曲であり、
ベートーヴェンの第九に匹敵する規模をもった曲だった。

だが彼の死後次第に演奏頻度が少なくなり、
現在でもあまり演奏されることが無い曲となっている。

これはその編成の大きさというものもあるだろうし、
メンデルスゾーンという作曲家に対するイメージにしては、
かなり大柄なイメージの曲ということで、
いつの間にか端に追いやられてしまったのだろう。

だがこの曲にはメンデルスゾーンの
それまでの自らの音楽の多くの要素が盛り込まれている。

冒頭から印象的なテーマではじまるこの曲は
全部で大きく二つに分かれている。

まず最初に三楽章からなる管弦楽だけの第一部。
そして声楽等が加わる九つの部分からなる第二部がそれ。

まず第一部。
これだけでも二十分をらくらく超えるものとなっている。
だがそこには大曲だからと気張ったところは皆無で、
メンデルスゾーンらしい快活、して明瞭な、
じつに耳あたりのいい流れにとんだメロディが流れてくる。

このあたりはすでに三曲の交響曲を書き上げた自信のようなものさえ、
そこから感じられるようなものになっている。
だが冒頭の朗々としたテーマからも感じられるように、
そこには自分がこの曲を作曲する前に自ら蘇演したシューベルトの大曲、
交響曲第8番ハ長調「グレート」から受けた影響のようものも見え隠れしている。

そして第二部の声楽が入ってくると
メンデルスゾーンのそれらの特長だけでなく、
偉大な先人たち、ハイドンやヘンデルのオラトリオからのそれがあらわれてくる。
これはメンデルスゾーンがバッハの「マタイ受難曲」や
先のシューベルトのハ長調交響曲同様蘇演したこと、
さらにはこの日に演奏された
自らの編曲によるヘンデルの「デッチンゲン・テ・デウム」があるように、
先人たちの作品を研究し、
そして演奏してきたことが今度はここで生きてくる。

聴いていてヘンデルがあと百年遅く生まれていたら
こんな交響曲を書いていたのでは?
と思われるくらい壮麗かつ壮観な音楽がそこでは展開されている。

たしかにそこにはベートーヴェンの第九のような
闘いと勝利のような図式は無い。

だがここにみられるメンデルスゾーンの
その過去の偉大な遺産と現在の自分の作風を結合させたそれは、
音楽の過去への畏敬の念と現在の輝かしい実績をも表出した、
極めて聴き手に大きな感銘を与える出来となっている。
しかも当時の交響曲としては異例といえるほど巨大な作品だ。

そしてメンデルスゾーンはこの後
大作オラトリオ「エリア」への道を歩んでいくことになる。

自分はこれを聴いていると、
メンデルスゾーンの音楽に対する深い愛情を
他の作品以上に強く感じるものがある。

ただ難点もある。
指揮者の曲に対する掌握が不徹底だと
かなり冗漫に感じられるところがあることだ。

じっさいこの曲はベートーヴェンの第九のように、
ある程度の演奏ならまず楽しく聴くことがてきるという、
そういう代物ではない。

メンデルスゾーンの特色を活かしながら、
上にも上げたような要素を活かし、
しかも冗漫に陥らないようにするというのは
なかなかむつかしいものがある。

そんな中でも自分が最近よく聴いているのが
まだ当時二十代だった若き日のリッカルド・シャイーが
イギリスのロンドンフィルを指揮したもの。

RC.jpg

そして全集の中に収録されている
クラウディオ・アバド指揮ロンドン響と
ペーター・マーク指揮マドリード響によるものです。

どちらもその瑞々しく爽やかな流動感と、
終盤の壮麗な響きと歌に満ちたその演奏がしにかくすばらしい。

それにしてもそろそろこの曲、
演奏会でかけてほしいところです。
どこかやってくれないでしょうか。

年末に聴くにも「メサイア」や第九同様
かなり適した感じがするのですが…。

尚、いろいろとネットにもこの曲がupされているようなので、
もし興味がありましたらお聴きになってみてください。

https://www.youtube.com/results?search_query=mendelssohn+symphony+2
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gkrsnama

今日、聴いてきましたよ。2度目。前はN響サヴァリッシュ先生でした。今日は札響ポンマー先生。合唱には先人の声がいろいろ入っていて部分は面白いんですが、全体がちょっとなんというか…平べったいんですねえ。苦手です。

正直、ロ短調ミサや第9やテデウムやドイツレクイエムの方が上だと思います。

今日はポンマー先生のお披露目。ライプチッヒで選ぶならロ短調ミサの方がよかったかと。ヨッフムだってできるだからポンマー先生だってできるでしょう。
by gkrsnama (2015-07-11 00:33) 

阿伊沢萬

この曲ストレートに演奏すると意外と面白くなくなってしまうときがあります。この曲を指揮して名演を残しているいる人の多くがオペラを得意としてることは単なる偶然ではないのかもしれません。マックス・ポンマーは好きな指揮者ですが、この曲を指揮するにはちょっといい意味での外連味が無いような気がするのですが、聴いてないのでこのへんはなんとも。

ポンマーのロ短調はぜひ実演で聴いてみたいところですが、この曲おっそろしく合唱泣かせの曲としても轟いているので、そのあたりを考慮したのかもしれません。

札響もいい指揮者が来てくれたものですね。かつてのシュナイトと神奈川フィルのように素晴らしい音楽的功績を期待したいです。(ただし楽員をあまり厳しくしめあげるようなことだけはちょっと避けていただきたいなと)

gkrsnamaさま。コメントありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2015-07-12 00:27) 

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