SSブログ

伊倉一恵さん(名指揮者ラザレフとの共演、その感想。) [声優(ひと)]

去る6月9日、東京サントリーホールにて以下の演奏会がおこなわれました。

読売日本交響楽団第503回名曲シリーズ
(指揮)アレクサンドル・ラザレフ
(会場)サントリーホール
(曲目)
ドヴォルザーク:交響詩『真昼の魔女』
プロコフィエフ:交響的物語『ピーターと狼』(N/伊倉一恵)
ボロディン:交響曲第2番

なんと名指揮者ラザレフと声優の伊倉一恵さんの共演が実現したのです。
そしてこれがなかなかの公演なりました。
以下に別のところに書き込んだこの日の演奏会の感想から、
伊倉さんが出演された「ピーターと狼」の部分を以下に転載いたします。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

ですがこの日の聴き物はなんといっても前半二曲目の「ピーターと狼」。かつて交響曲第5番や「アレクサンドル・ネフスキー」において、圧倒的ともいえるプロコフィエフを日本フィルと演奏したラザレフが、同じプロコフィエフとはいえ、この「ピーターと狼」をどう料理するか。これはたいへん興味がありました。しかも語りを伊倉さんがやるのですからこれはもう望外ともいえるものがありました。

伊倉さんがまず落ち着いた雰囲気で語りはじめ、ラザレフのちょっとコミカルな指揮で楽器とそのキャラが紹介されていくのですが、この時弦で演奏されたピーターのテーマがあまりにも素晴らしかった。豊かでしかも光沢と無限なほどの柔軟さと、一音一音表情が次々と、それこそ千変万化していくような、そのテーマの響きのすばらしさに自分は鳥肌すらたったものでした。

その後も極めて真摯な響きが全体を支配していたのですが、ここでのラザレフはもうこれが子供のために書かれた曲などという考えなど毛頭なく、それこそプロコフィエフの代表的管弦楽作品であるという観点からこの曲を再構成していったような、「あなたたちはこの曲がプロコフィエフの曲であるということを忘れているのでないか」といわんばかりのものすらそこにはありました。

またここではラザレフのストーリーを追っての劇的な語り口と運びの巧さが大きくものをいっており、音楽をだれることなくテキパキとすすめ、音ひとつひとつのもつ威力と意味を思いっきり引き出すことにもこのあたりの要素がうまく活かされていました。

さらにラザレフの語りの伊倉さんに対する小刻みなキューの出し方のタイミングは、指揮者と語りのアイコンタクトによる「語りとオケの対話」という図式を薄め、語りの寸法やタイミングすべてをオケの中に完全に組み込んでしまうというやりかたを徹底していたようで、これがまたプロコフィエフのオーケストレーションを浮かび上がらせることに大きく力を与えていたように感じられました。

このようなラザレフのやり方ですと、普通は語り手が結果的にかなりの制約を受けて持ち味を殺してしまうのですが、伊倉さんはそんな面を微塵もみせず、ラザレフの頻繁なキューに対しても、自分とラザレフとの間合いとスペースでうまくバランスをとりながら、いろいろな声質を駆使してちゃんと自分の役と個性をそこに描いていったのはさすがという気がしたものでした。

ただ正直伊倉さんほどの実力者とはいえ、今回のシチュエーションはかなりたいへんだったのではという気がします。お子様向けコンサートではない純然たる演奏会での、プロコフィエフに焦点をあてた「ピーターと狼」。なかなかたいへんだったとは思いますが、見事に演じられたと思います。特に終盤はそれにもかかわらず、なかなかいいノリをみせていたのはさすがでした。

それにしてもこんな素晴らしい「ピーターと狼」を聴けるとはおもいませんでした。というより今まで聴いていた「ピーターと狼」はいったい何だったんだと、そこまで言わせるほどの今回は演奏でした。オケも好調だった強者揃いの今回の「ピーターと狼」できればぜひ録音してほしいところです。

なお伊倉一恵さんですが、今回のプログラムには経歴等が紹介されていませんでした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E5%80%89%E4%B8%80%E6%81%B5
伊倉さんの経歴等は上をみていただくとして
自分もかつて舞台で伊倉さんをみていますが、
そのときの舞台でも伊倉さんは存在感のある多彩な演技をみせていました。
大変実力のある声優さんであり女優さんです。
今回この伊倉さんが参加しラザレフに見事についていったのがほんとうに大きかったです。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

以上です。

正直あの一を聴いて千を知るほど頭の回転が早く、
しかもそれを共演者やオーケストラにも求めるきらいのある
あの天才ラザレフに伊倉さんがついていけるだろうかという
そういう心配がありましたが、
結果は伊倉さんの確かな実力と豊富な経験が
見事にラザレフの要求に応えきっていたという気がしました。

ラザレフのあの瞬間的に出されるキューに対しての反応も
アニメにおける数多くのアフレコでの経験からか
じつに鋭く反応されていたのが印象に残りましたし、
終盤ピーターの声が一瞬「ブラックラグーン」のガルシア・ラブレスになったりして
伊倉さんならではの声や演技も随所に聴かれるなど、
たしかにラザレフがこの曲における語りを完全にオケの中に組み込んだため
本来この曲における語りのスペースとしては今回かなり制約があったものの、
結果それも演奏の完成度の高さに関係していたことを思うと
ファンも満足できる出来ではなかったかという気がしました。

今回ラザレフというややうるさ型の巨人と伊倉さんが見事に共演したことを
オケの関係者は評価していると思いますし、するべきです。
伊倉さんのしっかとした語りがラザレフの音楽のもつ流れ
そして緊張感を支えていたことを見落としてはならないと思います。
またそれが今回ラザレフが音楽に安心して集中できた大きな要因であったことも
ここに付記しておきたいと思います。

これからもこういう企画、ぜひ続けていってほしいものです。
それにしてもあのラザレフと共演ですか…。
伊倉さんに今回白羽の矢をたてた人。偉いなあ…。

※アレクサンドル・ラザレフ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%B6%E3%83%AC%E3%83%95
(ウィキペディア(Wikipedia))
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アニメ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0