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自分と宗教音楽 [クラシック百物語]

正直にいうと自分は宗教音楽についてまったくといっていいほど疎い!
興味が無いわけではない。
ただ外国語と宗教的知識がほとんど皆無というのが最大の理由。
もちろん対訳を読んだりするが
あれでわかるとは到底思ってもいないし、そこまでなめてもいない。

そんなわけですから
当然集めたレコードや演奏会も数が知れたものとなってきます。
だいたいはじめて買った宗教音楽のLPが
ショルティ&VPO+カルショーのヴェルディのレクィエム
その次がバーンスタインのベルリオーズのそれというのですから
だいたいおわかりいただけるのではないかと…。
で、しかも三番目がバレンボイムとパリ管の
ベルリオーズのテ・デウムだったのですからもうしょうがない。
こんな人間ですから宗教音楽にのめるわけがないです。

ですがあるときTV東京の番組で
週刊プロレスの当時編集長だったターザン山本さんが
モーツァルトのレクィエムのCDを聴きながら
「これ葬式の音楽なのに、なんでこんなに圧倒的なんだろう」
としゃべっていたのが妙に心にのこり
そのあとまた理由もなくまた宗教音楽のそれをぽつぽつ集めたりしていました。

でもなかなかやはり宗教音楽には本気になれない自分がそこにいました。
「自分は真言宗智山派だからこういう洋モノは駄目なのかなあ」
と、かなりわけわからない状況になっていたちょうどそのとき
偶然「もうすぐ廃盤になります」という
クレンペラー指揮のバッハのロ短調ミサが目に留まり
自分が一番好きだったころのクレンペラーでもあったので
購入したところ、これが大当たり。
幸か不幸かそれが自分にとって宗教音楽を真剣に聴こうという気持ちになった
そんなアルバムとなりました。

ただその後「ヨハネ」や「ロ短調」をはじめとした
いろいろな曲を聴いたのですが

(特に「ヨハネ」はラミン盤に強くひかれ、その全編「冬」をおもわせる音楽、
そして最後の曲における冬の垂れ込めた雲の合間から
地上に差し込む木漏れ日のような光にすべてを集約したようなその演奏に
いつも聴くたびに深く頭を垂れたものでした。)

ただ「マタイ」だけは駄目でした。
なんだかとにかくついていけないのです。
学生時代にテレビでリリング指揮による全曲演奏会をみたのに
最後までなにがなにやらというかんじで
当然CDもなにを聞いても何がなにやらという感じでした。

ここで白状しますがじつは母方の親戚に
京都で仏教音楽を研究していたおばがおりました。
そういう意味ではほんとうはこのあたりにも詳しくなければいけないし
おばの生前にいろいろ聞いておかなければいけないことがあったのに
それを今頃に気づいている自分に正直情けなくおもっています。

ですがなんの縁かわかりませんが
数年前その京都のおばと親交がありました林達次氏が東京で演奏会を開かれ
そこで指揮されたブラームスのドイツ・レクィエムに
自分はこの曲の、というより音楽の真髄ともいえるものを聴かされ
演奏終了後生まれてはじめて座ったままとはいえ
舞台上のすべての演奏者の方と指揮者の林さんに頭を深く下げたものでした。

おそらく自分にとって宗教音楽をほんとうの意味ではじめて聴いたのは
この林さんの演奏会であったような気がします。
そしてその後、林さんの指揮による「マタイ」をCDで聴いたのですが
それはこの曲がどういうものであるかを知るきっかけとなりつつある
自分にとって一生かけて聴きこんでいくであろう演奏となりました。

このとき宗教音楽はたしかに言語や宗教を理解しなければ
駄目であることはたしかなものの
その演奏によっては音楽のみでも充分心を動かされるものであり
作曲者の言葉を越えた部分での気持ちが伝わってくる場合もあるのだという
そういう気がしたものでした。

あまりいい例えではないかもしれないが
仏像や神社仏閣、経典を目にしたり
さらには名も無いお地蔵さまを山道の途中でみかけたりすると
その存在意義や意味がわからなくても
自然に頭を下げを手をあわせる。
それに近い
いわゆる素朴な信仰心のようなものがそこにはあるような気がするのです。

そして現在そういう演奏を聴かせてくれている
そのひとりがシュナイト氏だという気がします。
かつてカザルスがバッハの「詩」の部分の大事さを語っていましたが
シュナイト氏は素朴な信仰心とその「詩」の部分に
自らのもつ膨大な知識と経験をつなぎあわせ
類稀な音楽を我々の前でつむぎだし
天からいただいた「おめぐみ」でもある音楽を
演奏者のひとりひとりと唱和し
聴き手を含む大勢の人たちとともにまた天にむかって捧げようとしている
そういうふうな指揮者に自分は最近感じています。

自分にとって宗教音楽はまだお寺や神社の前で
何気に手をあわせるだけの次元のものかもしれませんが
こういう演奏を聴くことによって
よりその本質を知ろうとするきっかけとなり足かがりとなっていく
そんな気が今はしています。

(2005年 6/16 記)


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