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涼宮ハルヒのクラシック。(忘れられない演奏) [涼宮ハルヒのクラシック]

(以下、2007年2月2日書き込み+7月10日追加分。)

以前涼宮第一期で使用された楽曲とその演奏の考察を書きこんだけど
お薦め盤についてはまったくふれていなかった。

どれも名曲揃いなのでなかなか難しいものがあるのですが
第二期決定を機会に自分なりに「ハルヒ」で使用された同曲のCDのお薦めというより
忘れられない演奏をちょっとあげておきたいと思います。

◎ラヴェル「ダフニスとクロエ」

この曲は以前もあげましたが
過去四十年以上に渡り鉄板と呼ばれた決定盤が存在している。
それはアンドレ・クリュイタンス(1905-1967)指揮パリ音楽院管弦楽団によるもの。

これはこの曲を録音した直後に日本に来日し
「ラヴェルの夕べ」で日本の演奏会史上に残る空前絶後の演奏を行い
その影響がこの名盤を現在まで鉄板化したこともあるが、
それを抜きにしても音楽細工ともいえるこの響きは素晴らしい。
このオーケストラの解散とともに現在では完全に失われてしまった
気品と色彩、それに洒落た雰囲気が絶妙にブレンドされたその音は
ある意味二十世紀の音楽遺産といえるかもしれない。
この演奏は現在も国内&輸入ともに入手が容易だが
ステレオ録音とはいえかなり以前のものなので
最新式と同様な音質ではないのでそこのところはご了承いただきたい。

じつは白状してしまうと、これは同曲を初めて購入したLPの演奏でもあります。
初めての購入が同曲の決定盤。よかったのか悪かったのか…。
この刷り込みはけっこうデカかった。
おかけでしばらく他の演奏でこの曲を聴けなくなってしまったものだった。

尚、上記した伝説の日本公演のライブもモノラルながら残されCD化されています。

1964年の5月7日に東京文化会館で行われた演奏会のもので
スペイン狂詩曲、組曲、マ・メール・ロア、ラ・ヴァルス、クープランの墓、亡き王女の為のパヴァーヌ
そして、ダフニスとクロエの第2組曲と、アンコールが含まれたものとなっています。
これもまた貴重な記録ではあります。
因みに「ダフニス」はこの演奏会のラストに演奏され
極限的な美しさの冒頭から狂気を孕んだような凄絶なラストまで最高級の演奏を展開しています。
このクリュイタンスの二種類が自分にとって同曲の忘れられない演奏となっています。
因みにこの日本公演の三年後、指揮者クリュイタンスは癌で急逝、
オーケストラのパリ音楽院管弦楽団も解散し、パリ管弦楽団へと改組されました。

◎ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」

チェコの往年の指揮者ヴァーツラフ・ノイマン(1920-1995)が
手兵のチェコ・フィルハーモニーを指揮して1974年に録音したもの。

ところでこの演奏
ひょっとするとほんとうはノイマンにとってあまり触れてほしくない演奏かもしれません。

というのはノイマンはこの録音の六年前に起きた
祖国であるチェコにソ連軍が武力介入し、民主化運動「プラハの春」を鎮圧したとき
その暴挙に抗議し東ドイツの要職を蹴ってあえて母国に戻ったという経緯があり
そのためより共産化したチェコでの活動はかなり精神的に厳しいものがあったといいます。
しかも帰国後はかなり厳しく当局にマークされ
1972年には出国許可が降りず来日できなかったという事態も起きています。

ここからはたんなる推測です。
このショスタコーヴィチはそんなさなかに録音されたのですが
表向きは二年後に迫った作曲者ショスタコーヴィチの
70歳を祝すための一環としてのセッションであったのかもしれませんが
ベトナム戦争でアメリカ軍がついに南ベトナムから全面撤退した翌年というこの時期、
当時まだ戦意高揚の交響曲と思われていたこの曲をわざわざ録音させたというところに
ひょっとするとノイマンにとってこの録音は当時の共産党政府からの
踏み絵的なものとなっていたのではないかという気がじつは自分はしているのです。

二年前にキャンセルせざるを得なかった日本への来日が再度目前に迫っていたこの時期
もしこの録音をいかなる理由にせよのまなかったらどうなるのか。

けっきょくノイマンはこの録音を行ったわけですが、その出来は驚くほど内容の濃いもので、
当時戦意高揚の交響曲としてしか聴かれなかった趣のこの交響曲から
過度の効果を排し繊細な美しさと哀しみを随所に絶妙に引き出した演奏となっています。
ここに自分はノイマンの自分のやり方を徹頭徹尾貫く音楽家魂というか
自らの尊厳をかけた意地のようなものを強く感じたものでした。

因みにノイマンはその後いっさい同曲どころかショスタコーヴィチそのものを録音をせず
また日本に何度も来日したにもかかわらずこれらの曲をいっさい演奏しませんでした。
そういう意味でもこの演奏は自分にとってとても忘れられないものとなっています。

◎チャイコフスキー:交響曲第4番

忘れられないというと、ここは自分の行った演奏会ということもあり
エフゲニー・スヴェトラーノフ(1928-2002)指揮ソビエト国立交響楽団による
1990年の5月24日にサントリーホールで演奏したもののライブ録音をあげておきます。

日本における史上初のソ連のオーケストラによる
チャイコフスキー交響曲全曲演奏会の一環として行われた演奏会のライヴですが、
この指揮者の古典的造型感覚と凄絶なまでの劇的感覚が
類稀な状態で一致した究極的ともいえる演奏で
特に終楽章終盤の熱狂と興奮は一線を越えたものがあります。
この曲の録音でもトップクラスの迫力あるエキサイティングな演奏となっています。
因みに、指揮者専用の扇風機の音も収録されているのがご愛嬌。

最後に

◎マーラー:交響曲第8番

ディミトリ・ミトロプーロス指揮ウィーン・フィルハーモニー、他

天才指揮者ミトロプーロスが亡くなる数ヶ月前
マーラー生誕百年記念の年(1960年)にザルツブルク音楽祭で同曲を演奏した時のライヴ。

残念ながらモノラル録音ということで
この大編成の大曲にはかなり不利な音質ではありますが
演奏がとんでもなく凄い、というかオケから合唱から、とにかく全員が気合入り捲くっている。

音楽の密度の濃さもさることながら
特に第二部の終結に向かって音楽が強大な力を持って高揚していくその様は
空前のスケール感をともなったものになっており
まさに生誕百年にふさわしい超大名演となっています。

ひょっとしたらこの大曲のもつ無尽蔵のエネルギーのようなものが
史上初めて全面開放された歴史的瞬間を捕らえたドキュメンタリーではないかとさえ感じられた
そんなまさに歴史的超名演のこれはライブ録音です。

あともうひとつあげるとしたらすでにこのサイトでもふれました
レナード・バーンスタイン指揮ウィーンフィルでしょうか。
http://blog.so-net.ne.jp/ORCH/2006-07-15
こちらも三十年以上前の録音ですがちゃんとしたステレオ録音です。

こんなところが自分にとって忘れられないものとなっています。

とにかくこれら名曲は多種多様な名演揃い。
聴かれる機会がありましたら、ぜひいろいろとお聴かれになることをお薦めします。

(追補)

以前「ハルヒ」で使用されたマーラーですが
Firanne様からここで使用されたものは「ラトル盤で間違いないであろう」という
詳細な事例をあげられてのご説明がありました。
http://blog.so-net.ne.jp/ORCH/2006-08-07#comments
この場を借りましてFiranne様に慎んで御礼申し上げます。

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※因みに現在ここまでで当blogにおきまして、
使用された演奏と近いとされたCDも以下にまとめて記しておきます。


◎ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲
クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団

この項の最初にある踊り子の後姿のジャケットが国内盤で
すぐ上にあるのが最近の輸入盤。ジャケットが違うのが困りもの。
1961-1962年というステレオ初期に録音されたものだが、
いまだにラヴェルの演奏における旧約聖書といわれている。


◎ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」
ゲルギエフ指揮キーロフ劇場管弦楽団&ロッテルダムフィル

これはゲルギエフがあの911の直後にオランダのロッテルダムで、
手兵のキーロフ劇場オケと、もうひとつの手兵ロッテルダム・フィル、
その合同オケを指揮して演奏した時の白熱の実況録音盤。


◎チャイコフスキー:交響曲第4番
ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー

ムラヴィンスキーが国外公演時にロンドンで録音したもので、
同曲のひとつの規範といわれている。1960年の録音。
それにしてもこれも何度も再発売を繰り返しているが、
表紙は比較的これをベースにしたものが多い。
尚同曲だけでなくチャイコフスキーの交響曲第4~6番の、
三曲をひとつにしたセットものも何度か発売されている。


◎マーラー:交響曲第8番
ラトル指揮バーミンガムシティ交響楽団・合唱団、他

すでに名門ベルリンフィルに着任していたにもかかわらず、
かつての手兵だったバーミンガムを指揮しての2004年の実況録音。
この録音によりラトルが二十年以上かけて録音し続けた、
マーラーの交響曲全集がついに完結した。ラトル渾身の演奏。

(追伸)

さていよいよ第二期が決まった
詳細は未定だがいよいよといったところ。
おたのしみはこれからですね。


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コメント 2

通りすがり

クラッシック好き&ハルヒ好きの通りすがりのものです。
充実した情報とお薦め盤、拝読させて頂きました。
私はバッハ付近がメインなので、マーラーとかショスタコービッチとかは
不案内で、色々勉強になりました。
ラトルのマーラー8番はamazonで購入しました。
ノイマンのショスタコービッチも購入予定です。
マーラーは最初バーンスタインとされていたとのことですが、
こうした充実したまとめ情報があればこそ、誤りがあっても
コメントがついて修正されていくのだと思います。
一言御礼申し上げたくてコメントしました。
ありがとうございました。
by 通りすがり (2007-03-21 10:42) 

阿伊沢萬

コメントありがとうございます。
バーンスタインの件ではほんとうにご迷惑をおかけしました。
今後はより充分に注意したいと思います。

ノイマンのレニングラードは最初聴くと音量的迫力が弱く感じられ
チェコフィルがややローカルに聴こえるかもしれませんが
音が鋭角的になったり攻撃的にならないだけで
音楽の持つ力はじつにしっかりしたものとなっています。
また絶対冷たくなったり無機的にならない
特に中間二つの楽章はじつにじっくり聴かせる
まるで室内楽をそのまま拡大したような演奏となっています。
聴くたびにいろいろな発見がある味わいのある演奏だと思います。

また端正かつ正攻法の堂々としたそのスタイルは
ノイマンがドヴォルザークやスメタナでもいつもやってきたそのやり方で
これをいっさい曲げずにこの曲でやったところに
自分はノイマンの毅然とした態度と強さをこの演奏で強く感じたものでした。
これはもうひとつの
それこそノイマンにとってのレニングラードであったのかもしれません。

これからも当blogをよろしくお願いいたします。
それにしてもハルヒ、第二期はほんとうにあるんでしょうか。
ちょっと懐疑的になってきました。
by 阿伊沢萬 (2007-03-21 23:33) 

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