SSブログ

ミンコフスキ指揮東京都交響楽団を聴く。(6/26) [演奏会いろいろ]

都響20230626.jpg
2023年6月26日(月)
サントリーホール 19:00開演 

曲目:
ブルックナー/交響曲第5番 変ロ長調 WAB105(ノヴァーク版)
指揮/マルク・ミンコフスキ


自分はブルックナーの第五交響曲は、曲のつくりや作曲時期からみてベートーヴェンに捧げた作品だと思っている。

なのでこの日のミンコフスキの広がりをもった大きさや宗教性にそれほどこだわらず、狂熱的といえるほどの生々しいくらいの感情の吐露を押し出したような激しいタッチの演奏は大好物。

最初から最後まで大満足の演奏でした。

この日の編成は木管を倍増、トランペットホルンと一人ずつ増やしての演奏で、このためかなり厚めの響きが全体を支配していた。

ただだからといって厚ぼったい感じはなく、むしろシャープで明晰な響きの方が印象深く、金管などピカピカに感じるくらいの輝きをもっていました。

ただそれ以上に印象に残ったのはチューバとコントラバスなどから聴かれる低音部の強靭な音。

例えば第二楽章第二主題。それまでの第一主題が弦のピツィカートからして快適なくらいのテンポだったのが、いきなりフルトヴェングラーとBPOを想起させるかのような凄みのある低音が地鳴りのように雄大に響いてきた時、一瞬会場の空気が変わったというくらいの強烈なものがありました。

こういう凄みのある低音がこの日は随所に聴かれましたが、この日は弦のリズムがかなり執拗な程強く、しかも表情豊かに刻んでおり、それかが先の低音のそれとうまく調和することで、この曲他のブルックナーの交響曲と些か雰囲気が異なる作品であることを印象づけるものとなっていました。

それにしてもミンコフスキは表情を凝らすのが上手く、これほどこの曲がすべてに渡り表情豊かに描かれた演奏も稀という気がしました。

そしてそれらすべての総決算となったのが第四楽章。

冒頭のベートーヴェンの第九を想起させるような部分こそ普通に出だしたものの、フーガに入った瞬間「第九から大フーガになだれ込んだ」というくらい鮮烈かつ強靭な入り方で、まさに度肝を抜かれるような演奏でした。

そしてそこからはフーガとブルックナーのベートーヴェンに対する心からの愛情を感じさせるメロディの歌い上げ、そしてオルガン的な分厚い響きがこれ等と交錯調和することで、かつてそのオルガン演奏で聴衆を熱狂させ、最後は聴衆に肩車をされ担ぎ上げられた「演奏者ブルックナー」の姿が浮かび上がってくるという、作曲家ブルックナーだけでなく演奏者としてのそれまでも同時に生々しく描かれているかのようだった。

また今回の演奏はそれらが非常に鮮やかかつめくるめく様に描かれていたせいか、ちょっとブルックナー版「英雄の生涯」という感じすらしたものでした。もっともこちらでの英雄は自分自身ではなくベートーヴェンではあるのですが。

とにかく途方もなく情報量の多い音楽がクリアかつ鮮やかに描かれ、それらが最後ひとつの巨大な松明に火をともしたかのように、圧倒的な光と力に満ちながら頂にひたすら登り詰めていくかのようなその様は、胸いっぱいになるくらいのブルックナーの想いの丈が伝わってくるかのようで、終演後の熱狂的な歓声と拍手も当然という感じでした。

しかしミンコフスキの見事な指揮もそうですが、都響がとにかく凄い。

かつてドヴォルザークのチェロ協奏曲の第三楽章冒頭のホルンがまともに吹けなかったオケが、半世紀で世界のどこに出してもおかしくない程の演奏をするオケに進化したことに今更ながら驚きを覚えしまう。

継続は力なりというけど弛まぬ努力を現場も事務方もしてきたんだなあと、あらためて敬服してしまうほどこの日の都響は「上手い」のではなく「凄い」演奏を聴かせてくれた。これだけでも大満足。

とにかく予想をはるかに上回る圧倒的な名演でした。

因みに演奏時間はだいたいですが、

第一楽章が19分、第二楽章が15分、第三楽章が13分、第四楽章が21分、という感じでしたが、聴いているともっと時間がかかっていたかのように感じました。

あと第二楽章と第三楽章は続けて演奏されましたがこれがとても素晴らしい効果を出しており、第三楽章の活き活きとした素朴な舞曲感がより強く押し出された気がしました。そのせいかこの第三楽章。まるでベートーヴェンの「田園交響曲」の第三楽章をちょっと想起させられました。
(それとテンポの動かし方にちょっとヨッフムと相通じるものも感じました)

ミンコフスキのブルックナー。また機会があればぜひ聴いてみたいです。できれば9番の四楽章版とか。

以上で〆

nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 1

サンフランシスコ人

マルク・ミンコフスキ

http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id2022.pdf

サンフランシスコ歌劇場に登場した...
by サンフランシスコ人 (2023-06-27 02:43) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント