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トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団を聴く。(1/21) [演奏会いろいろ]

ソヒエフ.jpg

2023年1月21日(土)
NHKホール 14:00開演 

曲目:
ラフマニノフ/幻想曲「岩」作品7
チャイコフスキー/交響曲 第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想」

指揮/トゥガン・ソヒエフ


ソヒエフにとってこの1年は激動の年だった。一挙に手にしていた二つのポストを不本意な形で手放したことがそれだが、それでもこうして活動を続けられているのは本当に嬉しいし有難い。

この公演も昨年早々と決定し発表されたことは本当に嬉しかった。これはN響にも大きな賛辞を贈りたい。


この日はラフマニノフとチャイコフスキーがともに二十代の時に作曲した若き日の作品。

まず最初にラフマニノフ。

冒頭からおそろしく雄弁な低弦の歌声からはじまったこの演奏だが、終わってみると暗いながらも瑞々しい雰囲気に満ちた演奏に仕上がっていた。ラフマニノフだとけっこう陰鬱な表情に引っ張られる傾向が強くなりがちだけど、今回そうはならなかった。あと木管のとても冴えた響きが印象に残った。


このあと一呼吸入れてチャイコフスキー。


ふつうサイズのコンサートならラフマニノフのあとさらに一曲あってその後休憩、そして後半のチャイコフスキーとなるところだけど、NHKホール改修終了後再開したN響定期では、この日のように休憩なしで70~80分ほどで終了するプロをひとつつくっており(「Cプロ」がそれにあたっています)、今回はそのためこのような流れになった次第。

そして始まったチャイコフスキー。

第一楽章はとても快適ともいえるくらいの爽快な感じではじまり、全体的にもオーソドックスな雰囲気の演奏になっている。ただとても洗練された演奏で、この曲がまだ国民楽派的要素が濃いということで、中には濃厚な演奏を仕掛けてくるケースがあるけど、初稿やその後出された初版ならともかく、今回よく演奏される三稿のようにヨーロッパを旅するようになり、作風の西欧化が強くなっていった時期に手直しされた稿を使うならば、こういう洗練されたやり方も有りという気がした。

(因みにこの曲の初稿は、第二交響曲の初稿同様第一楽章に大きな変更があるらしく全体的に曲も長かったらしい。いつか可能なら第一第二の二つの交響曲の初稿を続けて聴いてみたいものです)

続く第二楽章は一転遅めの悠揚としたテンポの演奏となる。印象としては第一楽章の倍かかったのではないかというくらいたっぷりとした感じだったけど、濃厚な油絵というよりはむしろ水彩画のような感じがする演奏で、このあたりがちょっとユニークだった。

第三楽章は第一楽章同様オーソドックスな演奏だったが、第四楽章は冒頭第二楽章のような遅めではじまるが、次第に第一楽章のように爽快になっていく。で、このまま最後までこの調子で行くのかと思ったら、コーダの終盤で大きく仕掛けてきた。

33年前に聴いたスヴェトラーノフとソビエト国立響では、スネギリョフという屈指の剛腕ティンパニ奏者がいたことから、オーチャードホールの舞台が抜けるのではないかというくらいの強靭な打ち込みを軸にした、言わば「縦ノリ」に近いような音楽で聴衆を驚かせたが(この演奏は録音されCDでも発売されたが、そこではその凄さがあまり伝わってこないのが残念)、この日のソヒエフはむしろ構え気味で。しかも途中で弓を弦にベッタリつけたような感じで大きな弓使いを要求してきたため、突然音楽の歩幅が大きく強靭になり、最後はまるで巨人の歩みのような音楽へとなっていったのには驚いた。

それはなにか大昔のソ連系の指揮者のような、それこそ先祖返りしたかのようだった。

10年前ソヒエフとN響のチャイコフスキーもかなり強烈だったけど、今回はまた違った意味で強い印象を残してくれました。

このあとソヒエフはサントリーや高崎でバルトーク、ラヴェル、ドビュッシーの公演がありますが、その後はまた来年1月のN響第2001回目の定期公演で、曲目は、ビゼー(シチェドリン編)の「カルメン組曲」、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」 と「ラ・ヴァルス」を指揮するとのこと。

次回もまた楽しみですが、その頃にはウクライナでの戦争も終結し、ソヒエフがより演奏に専念できるより良い環境になっていてほしいものです。


以上で〆。

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