ベイヌムの水上の音楽 [クラシック百銘盤]
エドゥアルト・ファン・ベイヌム(1901-1959)
オランダの20世紀を代表する名指揮者のひとり。
彼の存在によりメンゲルベルク時代のコンセルトヘボウの最盛期が、
1959年半ばまで延長されたといわれるほどの指揮者。
不幸にして1959年に57歳の若さで練習中に倒れ急逝した。
そのせいだろうか、
1970年頃になると日本ではその存在が希薄となり、
国内盤をほとんど見かけない時期もあったほどだった。
現在でもベイヌムの知名度や評価は、
後任ハイティンクや前任者のメンゲルベルクの陰に隠れ、
けっしてよく知られているというかんじはしない。
だが今でも根強い支持を一部で受け続けているのは、
そのしっかりとした実力からくるものだろう。
そんなベイヌムだが亡くなる前年の1958年頃から、
契約していたレコード会社がステレオ録音を開始したことにより、
少ないながらも良好なステレオ録音を遺している。
その多くは彼の得意としたブラームスやベートーヴェンということで、
これはまさに不幸中の幸いといったところだが、
そんなステレオ録音の中になんとヘンデルがまざっている。
1958年7月1日から5日にかけて録音された、
旧ヘンデル全集のクリュザンダー版における「水上の音楽」全曲がそれ。
演奏時間は全体で約48分程のもの。
これがじつに素晴らしい出来となっている。
全盛期のコンセルトヘボウの美音も素晴らしいが、
ベイヌムの指揮がそれ以上に圧巻だ。
キビギヒとした曲の運び方、
壮麗な感覚ながら濁りの無い清澄な響き、
バランス感覚のよい見通しのよい音づくり、
そしてよく歌うその温かな音楽等々、
誉めていくときりがなくなるくらいの見事な演奏となっている。
たしかに現在のヘンデル演奏からみると大仰なスタイルだし、
清新な感覚や響きというインパクトはないかもしれないが、
その心温まる音楽と清潔高貴で、
古いタイプとはえいかにもヘンデル風の響きを見事に描いたこの演奏は、
そう簡単に捨て去られるべき演奏ではないだろう。
これは彼の遺した数少ないステレオ録音中、
ブラームスの交響曲第4番やヴァイオリン協奏曲と並び、
ベイヌムの遺した最善の遺産のひとつ。
ぜひいつまでも聴きつがれてほしい銘盤のひとつです。
このアルバムにnice!をいただきありがとうございます。地味ですけどほんとうにいいアルバムだと思います。
げいなう様ありがとうございました。
by 阿伊沢萬 (2015-01-19 22:57)
1957年にベイヌムはロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督になりました...
http://www.latimes.com/entertainment/arts/laphil/la-et-cm-la-phil-review-eduard-van-beinum-19570104-story.html
by サンフランシスコ人 (2016-03-13 06:37)
ベイヌムはなったはいいものの体調の不調から短期で辞任してしまいました。その後はご存じのとおり心臓の病により、練習中に急逝されました。ただ彼の印象は短期間にもかかわらずLAPOの団員にはかなり強烈だったらしく、メータ就任で上昇気流にのっていた時期にもベイヌムを惜しむ楽員の声が少なからずあったとか。ベイヌムがあと10年健在だったら…本当に残念です。
by 阿伊沢萬 (2016-03-13 21:57)
ベイヌムのレパートリーにアメリカの作品もあった.....
Berlioz’s “Symphonie Fantastique,”
Mozart’s “Sinfonia Concertante,”
William Schuman’s familiar “American Festival Overture”
by サンフランシスコ人 (2016-03-15 03:15)
「ベイヌムはなったはいいものの体調の不調から短期で辞任してしまいました。」
http://www.latimes.com/entertainment/arts/laphil/la-et-cm-la-phil-eduard-van-beinum-obit-19590414-story.html
急逝の時、ロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督のままだったのです....
"Beinum, world – famed symphony conductor whose return as music director of the Los Angeles Philharmonic Orchestra this fall was eagerly awaited, died of a heart attack yesterday in Amsterdam."
by サンフランシスコ人 (2016-03-15 03:38)
ここいつも私間違えてしまうのですが、厳密にいうと辞意を表明し58-59年のシーズンでLAPOの音楽監督を辞めるということだったらしいのですが、このシーズンの終わる前にベイヌムが急逝したため、結果正式に辞任する前に監督のまま亡くなったということになります。なので辞意を表明したというのが正しく、辞任はしていません。ご指摘ありがとうございました。前も確か間違えたんですよね。お恥ずかしいかぎりで申訳ありません。
ベイヌムはあまり頑強な人ではなかったということなので、多少無理がたたっのかもしれません。そういえば来月13日はベイヌムのご命日。もう57年経ってしまいます。
by 阿伊沢萬 (2016-03-15 07:26)
ロサンジェルス・フィルハーモニックが、シューベルトの交響曲第6番を初めて演奏した時の指揮者がベイヌム...
"First Los Angeles Philharmonic performance: December 19, 1957, Eduard van Beinum conducting"
http://www.laphil.org/philpedia/music/symphony-no-6-little-c-major-franz-schubert
by サンフランシスコ人 (2016-03-16 01:47)