SSブログ

「借りぐらしのアリエッティ」雑感 [スタジオ・ジブリ]

karigurasi.jpg


企画・脚本:宮崎駿
脚本:丹羽圭子
音楽:セシル・コルベル
プロデューサー:鈴木敏夫
制作:星野康二
監督:米林宏昌
作画監督:賀川愛・山下明彦
美術監督:武重洋二・吉田昇
色指定:森奈緒美
映像演出:奥井敦
音響演出・整音:笠松広司
アフレコ演出:木村絵理子

アリエッティ :志田未来
翔 :神木隆之介
ホミリー :大竹しのぶ
牧貞子 :竹下景子
スピラー :藤原竜也
ポッド :三浦友和
ハル :樹木希林

配達の人:羽鳥慎一
害虫駆除会社の人:吉野正弘

上映時間94分。

http://www.karigurashi.jp/index.html
(公式サイト)


ジブリの新作「借りぐらしのアリエッティ」を観た。

出演者が少ないということがこの作品に大きな空間を与えていたが、
そこにいろいろと描かれた絵はとても美しく、
ある意味ジブリらしいほっとしたものとして仕上がっていた。

全体としてはそういう映像の中で
「トトロ」+「ET」みたいなストーリーが
ひじょうにインテンポで描かれていた。

監督の気質のせいかもしれないけれど
宮崎監督のそれと違い
作品のもつテンポの緩急があまりない。
あえて言えば冒頭のアリエッティと猫のおっかけっこくらいが
「急」の部分として印象が残ったくらいで
あとは淡々としたテンポで描かれていた。

この運びを心地よいとみるか変化に乏しいとみるかは
その人個人の考えのそれなのですが
これがもし二時間続いたらちょっともたなかったかも、
という気がしたものでした、

ある意味監督が理性的に丁寧につくったという印象ですが
それが宮崎監督がときおりみせる
「一気呵成」というものを避けることになったため
後半のドラマもあまり緊張したものとはなっていませんでした。
このあたりも好き嫌いが分かれるかもしれません。

また尺が足りなかったせいかいくつかの台詞で
「この台詞を引き出す要因って何だったんだろう」
という疑問がおきたり
「ここでこんな大声出して大丈夫なの?」
という心配をしたりとか
けっこう?というシーンがあったのは残念でしたが、
それでも全体的にみられる丁寧な語り口と
素朴で美しい詩情を大切にしたそれはとても印象に残りました。

それに宮崎監督がたまにみせる強いメッセージというのも
ここではあまり強く打ち出さなかったことが
この美しい世界をより引き立たせることになったような気がします。

ある意味とてもこのクソ暑い時期に最適の
一服の清涼剤という感じの作品でした。

あまり大きな感動とか期待されるとあれかもしれませんが
それでもラストは印象に残る出来となっています。

あと声のことですが
最初は違和感のある配役もありましたし
なんでわざわざこの人にこの役をというものもありましたが、
途中からはそれもなくなりました。

ただそれ以上にジブリと今の声優さんとは
もはや住む土壌が違うものになってしまっているという気がしたものでした。
このあたりは近いうちにまたあらためて書きたいと思います。

最後にBGMや効果音。
これはなかなかよくできていたと思います。
特に小人からみたときの人の生活空間や音
さらにはその動きのひとつひとつが
じつはかなりの脅威であり暴力的でもあることが
じつによく描かれていました。
このあたりにこの作品のメッセージのひとつが
うまく表されているような気がしたものでした。

それにしても自分のもつ「借り」というイメージが
この作品ではずいぶん違ったものとなっていました。
いい意味でおおらかであり
すべてのものは天からの恵みを
生きるために我々が「借りている」
ということなのでしょうか。

まあ、いろいろあります。

以上です。


(以下7/24追加)

「ZEROスピンオフ・密着“アリエッティ”」

という日本テレビが7/24の16:00から放送された番組をみた。
これをみてるとジブリでは宮崎監督の次の世代は育ってはいるが
「どう一人前になるか」
というより、どうジブリの看板になれるのかという問題に直面し、
それに対していろいろ模索している姿が垣間見られた。

正直に言ってしまうと
宮崎駿監督がジブリからいなくなったら
1年2年はふんばれるかもしれないが
トスカニーニ引退後のNBC交響楽団みたいな経緯をたどるような、
そんな気が一瞬したものでした。

はっきり言って宮崎監督はワン・アンド・オンリーの天才だ。
それを軸につくられたジブリは
やはり「=宮崎駿」の色合いが極めて濃い。
だが宮崎ラインでものをつくっていたら
絶対それを乗り超えることはできない。

かといって大きく脱却したらジブリの基本カラーが揺らぎかねない。

ここでディズニーが参考になるのかもしれないが
はたしてジブリにそこまで大きく物事を多様に踏み切れるのかというと
今はちと無理ではないかという気がする。
アニメに対しての宮崎監督の理念があまりにも細にまで及んでいて
それを可能にできないのではないかという気がするし、
観客のジブリに対するイメージや期待も
それとほぼ基を同じにしているところが大であるため
さらにむつかしい問題をそこに抱えている気がする。

それを思うと「アリエッティ」はどこまでそれらに対し答えを出していたのだろう。


(2014.7/20)
美しい映画だった「思い出のマーニー」
http://orch.blog.so-net.ne.jp/2014-07-20
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アニメ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0