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トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団(11/24) [音楽]

(会場)横浜みなとみらい
(座席)3階C6列2番
(曲目)
リャードフ:交響詩「魔の湖」 作品62
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 嬰ハ短調 作品129(VN/諏訪内晶子)
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64


ネルソンスと並んで同世代の代表格のひとりといえるソヒエフの公演。しかもメインが同じ曲目ということでこちらも聴きに行きました。同一プロを五日間に四回取り上げるその最終日ということもあり、指揮者もオケもかなり練れた感じのものになっていました。

冒頭のリャドフからそれはよくあらわれており、低音域の弦の生々しい動き方と、全体の静謐な響きのコントラストがじつに美しい演奏となっていました。

特に弱音のコントロール、全体の濁りの少ないクリアな輪郭と響きが素晴らしく、これを聴いたとき、ソヒエフが何故フランスで高い評価を受けているかなんとなく分かったような気がしたものでした。

続くシヨスタコーヴィチも細部にまで細かく神経を巡らしたような響きも素晴らしかったですが、特に打楽器の鋭い反応、終楽章における弦の最初は優雅さを保ちながらキレを持続していた響きが、終盤に向うにつれ、切り立った緊張感を優雅さと巧妙に入れ替わりながら付加していくことにより、白熱するような推進力を力まずに音楽に与えていくその旨さには、新鮮な驚きすら感じたものでした。

ここでは諏訪内さんのソロもじつによく映えており、ソヒエフのクリアな音づくりとたいへんよくマッチした出来となっており、明快ながらひじょうに情感の濃さを音楽の底に映し出したショスタコーヴィチというかんじの演奏になっていました。

休憩後後半のチャイコフスキー。

こちらでも前述したソヒエフの特色はよくあらわれていたものの、ソヒエフの表情はより大胆になっていました。ただやたらめったら細かくテンポが動くというわけではなく、むしろフォルムの美しさを損なうことなく、音楽の強弱によって「歌」の幅を持たせ表情を大きくしようとしている部分の方が多かったような気がしました。

そしてそれを下支えするかのようなコントラバスとチェロの力強さがまた素晴らしく、特に終楽章におけるこの二つのパートの威力と強靭さを兼ね備えた、驚くほどの強さを感じさせたそれは、この日の白眉と言っていいくらい秀逸なものがありました。

このため中低音域を軸としたかなりダイナミックレンジの大きな演奏にはなっていたものの、ティンパニーの強打にしても金管の咆哮にしても、充分節度がはかられていたことにより、かつての旧ソ連時代のレニングラード系のチャイコフスキーを彷彿とさせるところがかなりありました。

ただ自分のように旧ソ連時代のオケの実演に接し、それに慣れているものとしては、この程度の音量などごく標準的なものなのですが、慣れてない人には、些か煩く聴こえていたかもしれません。もっともそれは音量的というより、N響が頑張り過ぎたため、ちょっと金管を中心に一部粗くなったことにも起因してはいるとは思うのですが…。

それにしても21日のネルソンスがモスクワ系のそれを感じたことを思うと、同じ世代、そして近しい地域や環境で音楽を身に着けたにもかかわらず、この両者がこれほど「近くて遠い」チャイコフスキーを演奏したことは、とても興味深いものがありました。この二人が今後どうなっていくのかは分かりませんが、ぜひこれからも注目していきたいと思います。

今(2013)三十代の指揮者はほんとうに逸材の揃い踏みです。このあともウルバンスキー、来年にはヴァシリー・ペトレンコも来日しますが、これからの数十年がなんとも楽しみです。

それにしてもN響はこの日ちょっと粗くはなったものの、たいへん頑張っていたように感じられましたが、逆にいうとプログラムを少し工夫して、演奏する曲目を減らし、そのかわりひとつの曲を演奏する回数が結果増えるようなプログラムというものを少し考えてもいいのでは?という気がしました。

消化不良で次々演奏するより、今回みたいに何度も同じ曲を演奏するというのもいいのではという気が強くしました。それともB定期を無くして、A定期とC定期を一日ずつ増やし、その増やした日をサントリーホールで演奏するとか。

以上です。
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