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「宮崎駿 引退宣言 知られざる物語 」をみて。 [スタジオ・ジブリ]

「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」で
去る11月18日に放送された
「宮崎駿 引退宣言 知られざる物語 」をようやくみた。
http://www.nhk.or.jp/professional/2013/1118/index.html

宮崎監督の引退に至るまでのそれを、
再度NHKが今までの取材から再構成したもの。

で、みた感想ですが、
宮崎監督が自分に博打をうてなかったということ、
というか何かあったとき、
作り出したものが最後自分のあずかり知らぬ状況で完成されてしまうという、
そういう恐怖というか不本意なそれを、
とても恐れていたというか直面したくなかったという、
そういう気持ちが強く感じられた。

そしてもうひとつは、
創造者としての宮崎駿と表現者としての宮崎駿の、
そのバランスがずれてきたことも苦悩として感じられた。

宮崎監督はようするにワーグナーのような人で、
歌劇をつくるとき、台本から曲からすべて自分でつくりあげ、
演出も指揮もすべて手掛けるタイプといっていいと思う。

そんな宮崎監督の今をワーグナーに例えて言うと、
指揮者や演出家としての表現力は、
じつはとても円熟した状況に今いるにもかかわらず、
作家や作曲家としての気力と体力がかなり減退してしまったという、
そういう状況にあるような気がする。

ようするに宮崎さんの本来はひとつになっていた表現と創作の二つの面が、
微妙にそのバランスを欠きズレを生じさせてしまったということだ。

宮崎さんの発言から愚痴や未練のようなものがでてくるのは、
完全主義としての定めなのかもしれないが、
そこにはそういうズレというものもあるのだと思う。

そしてこのことにはかつて野村克也氏が話していた、
ある言葉が重なってくる。

それは確か捕手として現役だった頃のこと、

年をとればとるほど体がいうことをきかなくなる、
だけど頭だけはどんどん野球がよくわかってくる。
それを思うと誰かにほんと何とかしてほしいと思った。

という意味の言葉だった。

おそらくこのジレンマこそ、
宮崎監督の感じているものであり、
そしてその要因が前述したズレなのだろう。

そしてその部分に、
最初に話したもし未完となった場合の恐怖、そして未練がどれほどのものか、
宮崎監督はそれにとても耐えられなかったのだろう。

ただ創るということにもちろん魅力を失ったわけではなく、
それはあたかも後年のベートーヴェンやブラームスが
交響曲から室内楽へとその表現する世界を変えていったそれのような、
そんなこともまた強く感じさせるものがあった。

例えばもしジブリによって、
何人かの監督が各々15分位のオムニバスを担当するような作品をつくるとして、
そのうちのひとつを宮崎監督が担当するとしたら、
おそらくそれに見合う気にいった題材があれば、
宮崎監督は躊躇なく制作に入られることだろうし、
そうでなくとも、
例えばジブリ美術館用に5分程度の短編を作り続けるという、
そういうことなら、おそらくまだまだ可能だと自分は思っている。

とにかく宮崎監督の表現者としてのそれが、
今後創作者としての自らのそれとどう折り合いをつけ、
そして表出していくのか。

そういう意味では今までにない、
それこそ宮崎監督の自由な考えの中で、
いろいろと今後行われていくのではないかという気がしました。

…と、そんなふうに最後は妙に明るくこの番組を拝見した次第です。


それにしても体力とか健康というのはほんとうに大事です。

自分も一か月近くここの更新をしなかったのは、
たしかにネタもそれほどはなかったものの、
気候の変化等でかなり体調を崩したことがその一番の要因でした。

そういうことを経験しているだけに、
今回の宮崎監督のそれは正直他人事ではありませんでした。

ただ身体はいうことをきかないときでも、
けっこう頭はいろいろと動いているときはあるもので、
そんなところからも、
宮崎監督の愚痴や未練のことも、
なんとなく理解できるようなそんな気持ちがしたものでした。

以上です。
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阿伊沢萬

teftef様

たしかに大作からは撤退されましたが、これからは小品になるか漫画になるか挿絵になるかはわかりませんが、宮崎さんのこれからもぜひゆるやかに見守っていきたいと思います。遅くなりましたが、nice! ありがとうございました。
by 阿伊沢萬 (2013-11-29 19:29) 

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