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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団を聴く(11/16) [演奏会いろいろ]

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NHK交響楽団第1925回 定期公演 Aプログラム
2019年11月16日(土)NHKホール
開場 5:00pm 開演 6:00pm

◎ステンハンマル/ピアノ協奏曲 第2番 ニ短調 作品23*
(P): マルティン・ステュルフェルト

◎ブラームス/交響曲 第3番 ヘ長調 作品90  

指揮: ヘルベルト・ブロムシュテット


半年ぶりの演奏会。

ここまで大きく空いたのは、
いろいろと大きな事件や災害が起きたことで、
とても演奏会に行く気持ちになかなかなれなかったことが大きい。

近年特に聴く力が落ちていることもあり、
それをモチベーションでカバーしているような自分には、
こういうことがかなりこたえてしまう。

というわけで今回やっとというわけですが、
好事魔多しというか、
当初予定されていたレーガーの協奏曲が、
ゼルキンの来日中止で曲目も変更となってしまった。

これにはかなりがっかりだったが、
代わりにステンハンマルの協奏曲がきたのには正直驚いた。

というより望外の喜びだった。

前回来日時ステンハンマルの交響曲を、
ブロムシュテットが待望の指揮をしてくれたものの、
会場がサントリーホールということで入手できず、
ほんとうに辛い思いをしたのですが、
まさかこういう形でブロムシュテットのステンハンマルを聴くことになるとは正直思いませんでした。


その前半の協奏曲。

中止になったレーガーのそれとほぼ年代の同じこの作品は、
ブラームスをリスペクトした作品ということで、
彼の最初のピアノ協奏曲を想起させられるような作品だった。

もっともあれよりはずっと聴きやすく、
北欧の抒情的な美しさと、
ちょっと崇高ともいえる祈りのような要素も感じられる作品で、
ひょっとするとこれを機に、
日本で演奏される頻度が上がるかもしれません。

ただこれはこの日のソリストと指揮者が、
曲をしっかりと掌握していたから成立したからそう思えるものであって、
そうでないとかなり散漫になる危険性をともなう、
なかなか手強い面もあるように感じられました。

尚、協奏曲終了後にアンコールとして、
ステンハンマルの三つの幻想曲から第3曲。

これも素晴らしく心に響く演奏でした。


後半のブラームスはじつに正攻法。

決して声高になったり、
過度にロマンティックになったりすることもなく、
ひじょうに力強い内面と、
意外な程静かな外面が見事に両立した、
ある種の清澄感を湛えた演奏となっていました。

バランスもホルンを除く金管をほとんど響きにブレンドさせ、
突出させることをしないよう注意を払っていたことや、
第一楽章でみせた驚くほどの弱音によるニュアンス付け、
第二楽章のコントラバスの細やかな表情をもったピツィカート、
そして第二楽章以降が続けて演奏されたこともあり、
この曲としてはかなり流動感に富んだ趣がしてたこと等々、
いろいろと印象に残りました。

それ以上に印象に残ったのが第四楽章最後に、
第一楽章の主題があらわれる前に聴かれた弦の一瞬みせた響きの美しさ。

それは「幽谷」とも「霊魂不滅」ともつながるような、
それこそクレンペラーがブルックナーの9番で聴かせたような、
そんな次元の響きだった。


自分はこの曲の楽章がなぜ静かに終わるのかが、
ずっと疑問に感じていた。

この曲が完成した年の初めに亡くなったワーグナーの死を意識したのか、
それとも五十歳をちょうど迎えた自分にとって、
最後華々しく終わることにかえって気が引けたのかと、
いろいろと思いを巡らしたりしていたのですが、
この日のこの音を聴いた時、
この音を書いてしまったことで、
この後に曲が続けようがなくなってしまったのではないかと、
そんなことがふと脳裏をよぎったものでした。


とにかくこれが聴けただけでも充分満足のいく演奏でした。

全曲終了後再度第三楽章がアンコールで演奏されたようですが、
久しぶりの演奏会ということでちょっと疲れてしまったので、
自分はその前に帰途につきました。


ブロムシュテットは前回に比べて、
歩き方が気持ち慎重になった以外は本当に元気で、
年を取ることを忘れてしまったかのような感さえありました。

これからもぜひ健康で末永く指揮を続けてほしいです。



最後に。

ちょっと聴く姿勢がなってない年配の人が目につきます。

正直こういう醜態を目にするとまた演奏会から足が遠のきそうです。
これも老害のひとつでしょうか。

若い方は決して恥知らずなことをされませんように。




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コメント 5

サンフランシスコ人

「これからもぜひ健康で末永く指揮を続けてほしいです....」

ブロムシュテットは、サンフランシスコ交響楽団の演奏会を一度も欠席したことがないと思います....


by サンフランシスコ人 (2019-11-17 06:10) 

サンフランシスコ人

ブロムシュテットは、サンフランシスコ交響楽団を辞めない....

http://www.sfsymphony.org/Buy-Tickets/2020-21/Blomstedt-Sibelius-4-Helene-Grimaud

2/18 サンフランシスコ交響楽団が来シーズンの曲目・日程を発表.....
by サンフランシスコ人 (2020-02-20 02:01) 

サンフランシスコ人

ブロムシュテットは、クリーヴランド管弦楽団の演奏会に昨夜出ました.....

http://www.cleveland.com/arts/2020/02/cleveland-orchestra-delivers-first-rate-bruckner-fifth-with-herbert-blomstedt.html

Cleveland Orchestra delivers first-rate Bruckner Fifth with Herbert Blomstedt

Today 11:23 AM
by サンフランシスコ人 (2020-02-29 02:43) 

サンフランシスコ人

3/5 ブロムシュテットは、シカゴ交響楽団の演奏会に出ました...

http://chicagoclassicalreview.com/2020/03/blomstedt-returns-to-cso-leading-rich-and-spirited-brahms/
by サンフランシスコ人 (2020-03-10 06:27) 

サンフランシスコ人

ブロムシュテットのサンフランシスコ交響楽団の演奏会....

http://www.sfsymphony.org/Buy-Tickets/2022-23/Blomstedt-Conducts-Dvorak

Symphony in D major
[San Francisco Symphony Premiere]
Jan Václav Voříšek

Symphony No. 8
Antonín Dvořák

2023年2月...
by サンフランシスコ人 (2022-12-01 05:16) 

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