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ユーリ・テミルカーノフ指揮読売日本交響楽団(5/27) [演奏会いろいろ]

(会場)よこはまみなとみらい
(座席)2階C5列28番
(曲目)
チャイコフスキー:「くるみ割り人形」第二幕より
チャイコフスキー:交響曲第4番

 今回のこのプログラムはテミルカーノフにとって得意なプログラムであり、しかもけっこうここ一番で演奏されている曲でもある。前半の「くるみ割り」はテミルカーノフがムラヴィンスキーの後を継いでレニングラードフィルのシェフに着任した直後の、同オケとの初の日本公演で演奏されているし(ただしこのときは今回の曲目を含む第二幕全曲)、後半の交響曲第4番は、読売日響との初顔合わせで演奏されている。その二曲をやるというのだからこれは興味津々だった。

 まず前半の「くるみ」は、丁寧かつ詩的なニュアンスに彩られた弦の響きが耳をとらえて離さないほど、じつに水も滴るような響きをたたえており、この指揮者とオケの相性の良さをあらためて実感させられたものでした。

 演奏しじつに表情を多彩に施しながらも劇的なものに傾かず、また舞台を髣髴とさせるような視覚的な面白さに走ることも無く、かなり交響的ともいえるものに終始していました。ただ今回耳についたこととして、リズミカルな部分やキレのよさというものがほとんど無く、ただひたすら長大にメロディーラインを紡いでいくということにこだわったため、ファンタジックな面が強かったものの、音楽のもつ爽快な疾走感や跳躍感といった面はあまり感じられず、このため音楽的に盛り上がったのは「花のワルツ」の後半からというものになり、刺激的な部分が聴き様によっては終盤まで希薄に感じられたのか、けっこうオケの弦の美音も手伝って気持ちよくお休みになられていた方もいらっしゃったようです。

 演奏としては多少評価が分かれるものかもしれませんが、自分としては過去聴いたこの指揮者の特長の一端のようなものが大きく前面に出てきた演奏という気がしたもので、テミルカーノフらしい「くるみ割り」という気がしました。

 後半のチャイコフスキーは冒頭の動機から構えが大きく、その後も以前聴いた同曲の演奏よりも表情も感情の振幅も格段に大きくなっていました。また以前より粘着性のある表情に変化してはいたものの、弦の響きを厚ぼったくなることなく清澄に響かせようという部分が大きく働いていたいたせいか、それによって鈍重になったり小回りがきかなくなったりということはなく、そのため第二楽章はかなりじっくりと紡がれた、それこそ第一楽章より長く演奏していたように感じられたものの、そこに大陸的なゆったりとした表情こそあれ、重ったくなったり引きずったりするようなところが無かったのは、このためだったといえるでしょう。

 終楽章は前楽章の雰囲気を引き継いでの活気に富んだ演奏となってはいましたが、読響初登場時のあの熱狂的ともいえるような迫力と疾走感よりも、表情の大きさと振幅の大きさからくるダイナミックな力の方が強く出たような演奏となっていましたが、以前よりもより冷静に音楽に接しているような感じを強く受けました。たしかに読響初登場時はまだ六十代前半、今回はもう七十歳目前ということもあり、その間の年齢的なものによる変化というものも大きいかもしれません。

 今回のテミルカーノフは以前より構えが大きく、しかも音はより清澄さに傾き、そして冷静ともいえる音楽に対する接し方が強く前面に出てきたように感じられました。これは晩年のスヴェトラーノフにもみられた特長だったのですが、これがテミルカーノフにもみられはじめたというのは面白く、特に両者ともロシアの指揮者という以外あまり共通点が無いだけに、これからのテミルカーノフの音楽がどうなっていくのかとても興味があります。

 しかしそれにしても以前はガラガラだった横浜公演(定期)ですが、今日は当日券が出ないほどの盛況となりました。ただホール内の雰囲気はなんともまったりしておりまして、日曜日の午後ということもあるのでしょう。休憩時間にはホールの中で飲食されている人がいましたが、係りの方がすくそばにいたのに何事もありませんでした。ただこちらもあえてそれに異を唱えるという気もしないほどとにかくなんかまったりとしてました。もっともそれは自分のまわりだけだったのかもしれません。こんな雰囲気の演奏会もたまにはいいのかもしれません。
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サンフランシスコ人

訃報 〓 ユーリ・テミルカーノフ(84)ロシアの指揮者

http://m-festival.biz/38633

サンフランシスコ人はニューヨークで

1990 May

New York Philharmonic

Conductor

Temirkanov, Yuri

Soloist

Lill, John / Piano / S

Works

Slonimsky / Concerto Buffo
Beethoven / Piano Concerto No. 2 in B-flat major, Op. 19

Prokofiev / Symphony No. 5 in B-flat major, Op. 100

変わった指揮の身振りでした...
by サンフランシスコ人 (2023-11-10 08:35) 

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