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ドゥダメル指揮ロスフィルのジョン・ウィリアムズプロに行く。 [演奏会いろいろ]

グスターヴォ・ドゥダメル指揮
ロサンジェルス・フィルハーモニック 創立100周年記念ツアー

NHK音楽祭2018特別公演「ジョン・ウィリアムズ・プログラム」

【日時】 2019年3月21日(木・祝)17:00開演
【会場】 NHKホール

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に行った。

ロスフィルはじつは創立50周年の時も日本にツァーで来ている。
その時の指揮者はこのオケと8シーズン目に突入していた、
当時33歳だったズビン・メータ。

「英雄の生涯」やベートーヴェンの「英雄」、
そしてブラームスの1番やチャイコフスキーの4番をメインにした、
都合四つのプログラムを17公演に渡り披露している。


今回の100周年ツアーは11シーズン目に突入中の、
現在38歳のドゥダメル。

ただ日本では三公演のみというのは、
これも時代の流れなのかも。


自分が今回行ったのは二種類あったマーラープロではなく、
映画音楽の巨匠、ジョン・ウィリアムズによるプロ。

正直この曲目をみたとき、
申し訳ないけどマーラーの1番も9番も頭からすっ飛んでしまった。

それくらい魅力満点のこれはプログラムだった。

しかも演奏するは今は西海岸だけでなく、
全米、もしくは世界屈指ともいえる名コンビの、
ドゥダメル指揮のロサンジェルス・フィルハーモニック。

内容が悪くなるはずがない。

曲目は以下の通り。

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自分はかつて1993年に、
作曲者自身の指揮によるボストン・ポップスによる、
ジョン・ウィリアムズプロを聴いているが、
その時のプログラムは、

〇バルセロナ・オリンピック・NBC-TV用ファンファーレ
〇11人のカウボーイ、序曲
〇JFK、から
〇スターウォーズ、組曲・ダース・ベイダーのマーチ~王女レイアのテーマ~メイン・テーマ
〇スーパーマン、マーチ
〇未知との遭遇、ハイライツ
〇イーストウィックの魔女たち、悪魔の踊り
〇偶然の旅行者、愛のテーマ
〇E.T.、地上の冒険

というもの。

これ以外の日にも、

「ジョーズ」~サメ狩り/檻の用意
「フック」~ネヴァーランドへの旅立ち

「インディージョーンズ・魔宮の伝説」~とらわれの子供達
「遥かなる大地へ」~ハイライツ
「レイダース」~マーチ

「ジュラシック・パーク」~テーマ
「続・激突カージャック」~テーマ

という曲が別の日のプログラムの公演で、
他の作曲家の曲とともに演奏されているので、
このあたりも考えた末の選曲だったような気がする。

今回はそれらを凝縮して尚且つその後の新作も含めたという超豪華版。

本当はこれに「ホームアローン」や「プライベートライアン」、
さらには「太陽の帝国」もあればもっと嬉しかったけど、
そのあたりはコーラスが必要なので今回はしかたないかなあと。

だったら「タワーリング・インフェルノ」「宇宙戦争」「1941」……、
このあたり考えだすとたいへんなことになるのでこの話はここまで。


この日のNHKホール。

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ホール外

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ホール内

そしてホールの一部はこのような照明に。
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ちょっとしたお洒落な映画館という感じに仕上がっていて、
この手のコンサートとしては、
なかなかお目にかかれない雰囲気となっている。

またオケの山台も一部まるでバンダ風にかなり高めにつくられていて、
しかもそのせいで、
山台の下部が剥きだしになっているのがよく見えるせいか、
なんか映画音楽の録音現場みたいな趣が感じられる。

楽員の登場の仕方はアメリカ式というのだろうか、
全員が整然と開演時刻に入場するのではなく、
開演よりもかなり早く五月雨式に舞台に集まりだし、
各々勝手に音を出しながらスタンバイしていくというもの。

この日のロスフィルは、
弦が対抗配置16型。(コントラバスのみ9本)
※ジョン・ウィリアムズを対抗配置で聴くのは自分は初めて。

木管が三管編成。

金管が舞台向かって左側から、
ホルンが二列で(8)、チューバ(1)、トロンボーン(5)、
そしてそのやや右斜めにトランペット(5)が各一列横隊。

さらに最後列最上段にはパーカッション8名が舞台左右いっぱいに展開している。

木管こそ三管だけど金管や膨大なパーカッションなどをみると、
もうマーラーの第6交響曲を演奏するかのような、
そんな規模の壮観な大編成。


この大編成が一曲目の「オリンピック・ファンファーレ」で早くも炸裂。

とにかく見事というしかない。
特にトランペット五人は素晴らしく、
シカゴのような突き刺さるような輝かしいそれとは違い、
温かさのある手作り的ともいえる響きで一糸乱れず吹きまくる。

四千人のホールでも余裕をもって鳴り響いていた。

もっともこの音は金管だけでなくオケ全体にもいえることで、
このあたりの特長はかつてのメータ時代の録音でも感じられており、
(サロネンの時代の音はこうではなかったらしい)
そういう意味では、
かつてのメータが指揮したスターウォーズの録音を思い出した。

全体的にシカゴやクリーヴランドのようなヴィルトゥオーゾではなく、
もう少し大らかでくったくのないサウンドによるジョン・ウィリアムズ。

そのせいか、
以前ボストンポップスで聴いた時のような、
やや硬質で骨太なそれとは違う、
ダイナミックではあるけど柔和さも感じられる、
ある意味心地よい迫力がそこにはあった。


指揮のドゥダメルは、
ジョン・ウィリアムズ自身の指揮が、
曲にすべてを盛り込んでいるというタイプの指揮で、
ほとんど曲そのものをそのまま演奏していたのに対し、
もうすこしいろいろと仕掛けが施されており、
映画を見ていない人にも充分に楽しめる、
それでいて原曲や作品の良さもちゃんと活かした、
かなり起伏と変化も施されたものになっていた。

特に「ハリー・ポッター」からの三曲は、
ホール全体に大きく拡がるダイナミックな演奏で、
ファンタジー要素も充分に感じられるもので、
超大編成オケで聴く醍醐味が満喫できるものとなっていました。


それにしてもどの曲も丁寧だしやっつけ感など皆無。
もう演奏者が全員、真剣に楽しんでいるそれが最高で、
こういう演奏ができる人たちがなんかとても羨ましく思った。

金管は全体によかったけど、
チューバを含む低音楽器も凄いほどズンズンと響いていた。

パーカッションの頑張りも素晴らしいし、
「レイダース・マーチ」のスネアのかっこ良さなどはもう鳥肌もの。

またティンパニーもかなり強烈で、
あれは普通の演奏会でもそうそう聴けるレベルではないと思う。


木管のチャーミングな響きも随所に光ってたけど、
弦のハートウォームともいえる響きは格別で、
「E.T.」ではその良さが最大限にあらわれていた。


「スターウォーズ」からの三曲で大盛り上がりとなった後、
アンコールが演奏。

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演奏会は二時間の予定を三十分程越えて終了。

とにかく大満足の演奏会となりました。


しかしアメリカの第一級のオケと指揮者が、
フル編成でやるジョン・ウィリアムズプロが、
ここまで聴き応えのあるものだとは思いませんでした。

もしポップスだからといって侮って聴きに来た人には、
目から鱗状態になったことでしょう。

というか聴いていて、
途中から何かワーグナーの管弦楽曲プロを聴いてるような、
そんな感覚と同じものをじつは自分は感じていました。

ドゥダメルとロスフィルの素晴らしさはもちろんですが、
ジョン・ウィリアムズの素晴らしさもあらためて再認識させられた演奏会でした。


最後に「シンドラーのリスト」でソロをとった三浦さん。

たった数分の出番だったけど、
その存在感と演奏は素晴らしかった。

もし機会があったら今度はジョン・ウィリアムズ編曲の、
「屋根の上のバイオリン弾き」をぜひ。

以上で〆


因みにこの日はロビーで、
ジョン・ウィリアムズのインタビューをながしていたみたいだけど、
自分のこの日の座席が列の中ほどだったので、
みてると戻るのが遅くなり端にいる人に迷惑になるので、
見るのを断念しました。

できれば5月5日の放送時に、こちらもぜひ一緒に放送してほしいです。
(と思ってたらちゃんと放送されるそうです。嬉しい!)

その後この日と同じプロを、
1月24-27日にロサンジェルスの、
ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールでやったCDを聴く。
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この来日公演直前に発売されたもので曲目はまったく同じ。

雰囲気や内容も当然ほとんど変わらず、
やはりこの演奏も楽しい。

これも愛聴盤に長くなりそうです。
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サンフランシスコ人

「ロサンジェルス・フィルハーモニック 創立100周年記念ツアーに行った...」

http://www.sfgate.com/news/article/Los-Angeles-Philharmonic-tours-Tokyo-with-13705548.php

サンフランシスコの新聞に記事が....

「開演よりもかなり早く五月雨式に舞台に集まりだし...」

他の米オケもそうです...
by サンフランシスコ人 (2019-03-25 05:12) 

阿伊沢萬

soramoyou様、はじドラ様

とにかく楽しかったです。ただそうそうこんな豪華版はないと思うので、次がなさそうなのが残念です。

nice!ありがとうございました。



by 阿伊沢萬 (2019-03-26 16:19) 

阿伊沢萬

アメリカのオケでも自分がみたいくつかの日本でのそれでは、通常に開演と同時に出てくるやり方をしていたので、廃れたのかと思っていました。指揮者による意向もあるのかもしれません。
by 阿伊沢萬 (2019-03-26 16:20) 

サンフランシスコ人

「ロサンジェルス・フィルハーモニック 創立100周年..」

San Francisco Classical Voiceに....

http://www.sfcv.org/reviews/los-angeles-philharmonic/esa-pekka-salonen-explores-stravinskys-late-period-sacred-works

Esa-Pekka Salonen Explores Stravinsky’s Late-Period Sacred Works
By Richard S. Ginell ,
April 16, 2019
Los Angeles Philharmonic

エサ=ペッカ・サロネン (ロサンジェルス・フィルハーモニックの桂冠指揮者)のロサンジェルス公演は大好評....

by サンフランシスコ人 (2019-04-18 02:18) 

サンフランシスコ人

ロサンジェルス・フィルハーモニックを絶賛...

http://www.newyorker.com/magazine/2019/07/01/meredith-monks-atlas-and-the-la-phils-extraordinary-season

Musical Events

Meredith Monk’s “ATLAS” and the L.A. Phil’s Extraordinary Season

In staging Monk’s peerless and demanding opera, the orchestra again proved that it has no equal.

By Alex Ross

June 24, 2019
by サンフランシスコ人 (2019-06-28 06:38) 

サンフランシスコ人

10/24 ロサンジェルス・フィルハーモニック創立100周年記念特別演奏会....

http://www.laphil.com/events/performances/644/2019-10-24/centennial-birthday-celebration-concert-gala

Centennial Birthday Celebration Concert & Gala

A once-in-a-lifetime event! Three music directors, past and present, collaborate on this milestone celebration.
Thu / Oct 24, 2019 - 7:00PM


Artists

Los Angeles Philharmonic
Gustavo Dudamel, conductor
Zubin Mehta, conductor
Esa-Pekka Salonen, conductor

Program

WAGNER
Overture from Die Meistersinger von Nürnberg

RAVEL
La valse

LUTOSŁAWSKI
Symphony No. 4 (LA Phil commission)

STRAVINSKY
The Firebird Suite (1919)

Daníel BJARNASON
From Space I saw Earth for three conductors (world premiere, LA Phil commission with generous support from the Lenore S. and Bernard A. Greenberg Fund)


by サンフランシスコ人 (2019-10-23 06:14) 

阿伊沢萬

メータは50周年の時LAPOと来日していましたが、ひとりの指揮者がひとつのオケの50周年と100周年の指揮台に立つというのは極めて稀という気がします。

メータにはまだまだ元気でやってほしいです。
by 阿伊沢萬 (2019-10-27 08:27) 

サンフランシスコ人

「10/24 ロサンジェルス・フィルハーモニック創立100周年記念特別演奏会.....」

http://variety.com/2019/music/artists/l-a-phil-celebrates-centennial-bridging-past-and-future-1203384065/

October 25, 2019 4:00PM PT

L.A. Phil Celebrates Centennial Bridging Past and Future

メータはちゃんと登場した!
by サンフランシスコ人 (2019-10-28 02:45) 

サンフランシスコ人

「メータにはまだまだ元気でやってほしいです....」

http://www.sfcv.org/reviews/los-angeles-philharmonic/a-reunion-of-music-directors-at-la-phils-centennial-gala

"Now recuperated from recent surgery, walking to the podium with the aid of a cane and conducting while seated, Mehta played the grand old master, revisiting some signature Wagner (Prelude from Die Meistersinger) and Ravel (La Valse). "
by サンフランシスコ人 (2019-10-30 06:18) 

サンフランシスコ人

2020年1月1日にロサンジェルス・フィルハーモニック&ズービン・メータがニューイヤーコンサート......

http://www.laphil.com/events/performances/683/2020-01-01/a-viennese-new-year-with-zubin/

A Viennese New Year with Zubin
Wed / Jan 1, 2020 - 8:00PM

Welcome the New Year in delightful Viennese style!

「メータにはまだまだ元気でやってほしいです....」
by サンフランシスコ人 (2019-11-01 03:00) 

サンフランシスコ人

ドゥダメル....ニューヨーク・フィルハーモニックに鞍替え....

http://www.sfcv.org/articles/music-news/gustavo-dudamel-leave-los-angeles-new-york-philharmonic

Gustavo Dudamel to Leave Los Angeles for New York Philharmonic

Tom Jacobs on February 8, 2023.
by サンフランシスコ人 (2023-02-11 03:21) 

サンフランシスコ人

8/24 久石譲がロサンジェルスでロサンジェルス・フィルハーモニックを指揮.....

http://www.hollywoodbowl.com/events/performances/2343/2023-08-24/joe-hisaishi-and-la-mer

Joe Hisaishi and La mer
Thu / Aug 24, 2023 - 8:00PM

Los Angeles Philharmonic
Joe Hisaishi, conductor
Janet Todd, soprano

Program

Joe HISAISHI: Symphonic Variation “Merry-Go-Round” from Howl’s Moving Castle

DEBUSSY: La mer

Intermission

Joe HISAISHI: DA•MA•SHI•E

Joe HISAISHI: Princess Mononoke Suite


by サンフランシスコ人 (2023-06-09 07:01) 

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