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コルネリウス・マイスター指揮読売日本交響楽団を聴く。 [演奏会いろいろ]

第105回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2018 6.23〈土〉14:00開演
会場:横浜みなとみらいホール

指揮=コルネリウス・マイスター
管弦楽=読売日本交響楽団
ヴァイオリン=長原 幸太(読響コンサートマスター)

曲目
スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
ブルッフ:スコットランド幻想曲 作品46
ドヴォルザーク:交響曲 第8番 ト長調 作品88

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ヨーロッパでひじょうに評価が高いといわれている、
マイスターの指揮による演奏を初めて聴く。

マイスターの指揮は本当にすべてを満遍なく兼ね備えている。

オケのバランスの良さ、
濁りの無さからくる見通しの良いクリアな響き。

弱音の見事なコントロール。

強音も決して濁らず余裕をもって鳴り響き、
細部の表情もひじょうに丁寧に仕上げられ、
ティンパニーと中低音の響きも、
見事にセットで力強く骨太で、
しかもそこそこシャープな重さをもって鳴っているため、
オケ全体に適度な重厚さとキレも感じられる。

メロディもしっかり歌われているし、
音楽の起伏も見事に描かれており、
ここという時にはかなり激しいアタックも聴かせる。

ある意味ロサンゼルス時代のメータを彷彿とさせるが、
マイスターの方がより洗練され隙が無い。

そのため今回のこの国民楽派プロでは、
いい意味での土臭さや土俗的な迫力は皆無。

また弦が大きく伸びやかに歌うものの、
音がクリアかつ洗練されすぎているためなのか、
厚みやホール全体を包み込むようなものはない。

もちろんそれは欠点や短所というわけではなく、
あくまでもこの指揮者の個性や長所の裏返しというかんじ。


たがこれだけのものを兼ね備えているにもかかわらず、
自分は今回演奏された三曲どれも、
とても感心したし驚嘆すらしたものの、
なぜかその音楽に巻き込まれたりするようなことはなく、
感動したかといわれると、
どうなんだろうというなんとも不思議な感想を持ってしまった。


極端に言ってしまうと、
どの曲も冒頭はどれも強く惹きこまれるものの、
しばらくするとひとつのパターンみたいなものがあらわれ、
音楽こそよどみなく流れていくものの、
おかしな表現かもしれないが、
次第に音楽にからみえている風景が、
「静止画」の連続のように感じられはじめ、
確かにそのひとつひとつは美しく高い完成度ではあるものの、
ただそれがひたすら連続して続いているようで、
結果確かに流れは存在しているものの、
聴いているこちらには、
なんか常に「凪」というか「静かな」景色を、
ひたすら細かく次々とみせられるているような、
そんな感覚がしてきてしまうのです。

なのでその世界に入りきる前に、
次々と画面が細かく切り替わっていくため、
なんか音楽の核心が見えはするけど、
こちらがそこに踏み込もうとする前に、
とても丁寧にそこから弾かれてしまうような、
そんなことの繰り返しが延々と続いていったような、
とにかくそんな演奏会でした。


もっともこれは言い悪いではなく、
好き嫌いや感性との相性もあり、
ある意味庵野監督の「シン・ゴジラ」に対する、
その評価の別れ方にも共通したものがあるようにも感じられました。

とにかくかつて経験したことのない演奏で、
1980年生まれという、
ネルソンスやネゼ=セガンよりも若い指揮者ということで、
ひょっとして新しい世代の新しい感覚によるこれは演奏なのかもしれないと、
そんなことも感じさせられたこの日の演奏でした。

尚、この日のブルッフで、
ソロの長原さんの弦が、
始まってすぐに切れてしまうというアクシデントがあった。

結局弦を張り替えての演奏となったが、
そういうアクシデントにもかかわらず、
清潔感のある詩的な演奏が見事に展開された。

自分のいた場所のせいか、
音量的にもう少しだけほしかった気がしたけど、
前の方にいた方にはちょうどよかったのではと思う。


ここでもマイスターの指揮はひじょうに上手くコントロールされていて、
ソロとオケがじつに見事に調和していた。

これにはハープが第一と第二ヴァイオリンの、
各々の第一と第二プルトのあたりに位置し、
指揮者、ヴァイオリンソロ、ハープが、
見事に一列に並ぶという配置をとったことが、
コントロールのとれた絶妙なブレンド感を生み、
このような見事なそれに繋がっていたと思う。

この響きの美しさは極上でした。

マイスター、
できればまた違う曲、
それこそ起伏と切り替えの激しい曲で、
再度聴いてみたい指揮者です。


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コメント 5

サンフランシスコ人

コルネリウス・マイスターは、サンフランシスコで全く馴染みのない指揮者です...
by サンフランシスコ人 (2018-06-24 05:04) 

阿伊沢萬

ひょっとすると彼もラザレフとはまたタイプの違う、音楽に対する動態視力が桁外れにすごいタイプの指揮者なのかもしれません。そこから生まれた音楽とすると、なかなか自分には難しいタイプの指揮者かもしれません。とにかくもう少しいろいろ聞いてみたい指揮者です。

ハムサブロー様、Ujiki.oO様、soramoyou様、サンフランシスコ人様、nice!やコメント等ありがとうございます。
by 阿伊沢萬 (2018-06-26 07:46) 

サンフランシスコ人

訂正....コルネリウス・マイスターは、サンフランシスコ歌劇場に登場していました...

http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id1869.pdf
by サンフランシスコ人 (2018-08-15 06:34) 

サンフランシスコ人

2019年1月にメトロポリタン・オペラに登場するみたいです...

http://www.metopera.org/season/2018-19-season/don-giovanni/
by サンフランシスコ人 (2018-08-15 06:46) 

サンフランシスコ人

メトロポリタン・オペラのラジオ放送を、今聴いています....コルネリウス・マイスターのフィガロの結婚.......好きになれないんです...
by サンフランシスコ人 (2020-02-23 03:30) 

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