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時代が動き出したクラシック音楽界(指揮者)。 [クラシック百物語]

ネルソンスが次期ボストン交響楽団の音楽監督に就任した。
史上最年少とのことだそうです。

今までも確かに若い指揮者がここ数年急速に伸してきたという、
そういう印象が強かったが、
今回のこのニュースは「時代が動き出した」、
もっと言わせてもらえれば「時代の動きが速くなってきた」
という感じすらしたものでした。

しかもこのネルソンスと最後までその地位を争っていた対抗馬が、
先月手兵とともに来日していた、あのステファン・ドヌーヴだったとか。
そのドヌーヴもまだ40歳というからこれまた驚きだ。

考えてみると今アメリカのメジャーオケのトップをみると、
ほんとうに風が吹き始めたという気がする。

シカゴ→ムーティ(1941)
デトロイト→スラットキン(1944)
サンフランシスコ→ティルソン=トーマス(1944)
セントルイス→ロバートソン(1958)
クリーヴランド→ウェルザー=メスト(1960)
シンシナティ→Pヤルヴィ(1962)
ニューヨーク→ギルバート(1967)
フィラデルフィア→ネゼ=セガン(1975)
ボストン→ネルソンス(1978)
ロサンゼルス→ドゥダメル(1981)

因みに今から10年前だと、

シカゴ→バレンボイム(1942)
デトロイト→Nヤルヴィ(1937)
サンフランシスコ→ティルソン=トーマス(1944)
セントルイス→ 空席
クリーヴランド→ウェルザー=メスト(1960)
シンシナティ→Pヤルヴィ(1962)
ニューヨーク→マゼール(1930)
フィラデルフィア→サヴァリッシュ(1923)
ボストン→ 空席
ロサンゼルス→サロネン(1958)

これをみると当時三十代というのはひとりもいない。
若いと思われたPヤルヴィでさえ41歳だ。
また空席だった二つもその後迎い入れた指揮者は四十代と五十代ということで、
今とはかなり状況が違う。

アメリカだけでなく他の三十代の指揮者もいろいろなポストに就任している。

フィリップ・ジョルダン(1974)はパリ・オペラ座とウィーン響
ハーディング(1975)はスウェーデン放送響とマーラー室内管
ソヒエフ(1977)はトゥールーズ・キャピトル国立管とベルリン・ドイツ響
ミッコ・フランク(1979)はフランス国立放送フィルとフインランド国立歌劇場
インキネン(1980)がニュージーランド響
フルシャ(1981)がプラハフィル

と虎視眈眈と次を狙えるポジションについている。

そして四十代となるともう爛熟期というかんじすらしてしまう。名前だけあげていけば、

アレクサンドル・ヴェデルニコフ (1964)
マーク・ウィッグルスワース (1964)
シュテファン・ザンデルリング (1964)
ジャナンドレア・ノセダ (1964)
ペーテル・フェラネツ (1964)
ベルトラン・ド・ビリー (1965)
サカリ・オラモ (1965)
カルロス・ミゲル・プリエト(1965)
アンドレイ・アニハーノフ(1965)
ミヒャエル・ザンデルリング (1967)
ハンヌ・リントゥ (1967)
アラン・ギルバート (1967)
サッシャ・ゲッツェル (1970)
ダン・エッティンガー (1971)
キリル・ペトレンコ (1971)
クリスティアン・アルミンク (1971)
ステファン・ドヌーヴ(1971)
ウラディーミル・ユロフスキ (1972)
クリスチャン・ヤルヴィ (1972)

もう凄いとしかいいようがない。
これには日本人は入っていないので実際はさらに分厚いものがある。
しかもありがたいことにかなりの指揮者が来日しているし、
しかも頻繁に来日している方もけっこういる。
これからの音楽界を背負って立つ逸材をリアルタイムで聴いていけるというのは、
ほんとうに今の音楽ファンは幸せといっていいだろう。

そしてこれらの四十代以下の世代が、
こうしてここ数年重要ポジションにつきはじめ、
そして去年今年とネゼ=セガン、ネルソンスと、
アメリカメジャーオケの二つを三十代の指揮者がそのトップについた。
特にネルソンスのそれは、これらの動きに拍車をかけたような気がします。

おそらくこれからはどこのメジャーオケも、
年齢に関係なくどんどん若い指揮者をそのトップにもってくることだろう。
そのときその少し上のこの四十代が集中的に抜擢されるような気がします。
そしてそうなればさらに世代交代は加速していくことでしょう。

考えてみればフルトヴェングラーがベルリンフィルに着いたのは36歳の時だった。
ニキシュは40歳、カラヤンは47歳、ラトルも47歳だった。

それを思えば、2018年のラトルの後任が今四十代以下の指揮者から選出されても、
じつはそれほど不思議ではないし、むしろ当然なのかもしれません。

それになんと言ってもこのあたりの世代は個性的かつ大胆不敵な指揮者が多い。
これはそれより上の世代に行けば行くほどみられなくなっていく傾向だ。
このことから、これからはより多彩で型にとらわれない、
ある意味かつての19世紀生まれの指揮者のような、
それこそより豪快な芸風の指揮者もあらわれるかもしれない。

そういえばこれらの現在の動向を、
山崎浩太郎さんや東条碩夫さんといった方たちが
それとなく数年前にすでに予見し発言されていたことがあった。
お二人とも「温故知新」のバランスがひじょうによくとれた方なので、
おそらくこれらの動きから過去のそれとが重なり合っての発言だったのだろう。
たいしたものです。

はたしてこの加速がついた時代の風がこれからどう吹いていくのか。
ほんとうに興味がつきないものがあります。
これからの音楽界、特に指揮者の動向はとても楽しみです。
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サンフランシスコ人

「デトロイト→スラットキン...」

2017年7月にレナード・スラットキン&デトロイト交響楽団が日本へ演奏旅行..

http://www.freep.com/story/entertainment/music/2016/12/06/dso-asian-tour-2017/94954772/
by サンフランシスコ人 (2016-12-15 03:12) 

サンフランシスコ人

デトロイト響の日本演奏旅行..

"In Japan, the DSO will perform at Seitoku University outside Tokyo on July 14, Toyota City on July 15, and Osaka on July 16. The DSO then returns to Tokyo for a concert on July 17 and performance as part of the Tokyo Nippon Festival on July 19. The Japan leg of the DSO’s tour concludes in Fukui on July 20. Guest soloists in Japan will be pianist Makoto Ozone and violinist Akiko Suwanai."

http://www.dso.org/DSOnewsdetail.aspx?pid=10684&Title=DETROIT%20SYMPHONY%20ORCHESTRA%20ANNOUNCES%20HISTORIC%20ASIA%20TOUR%202017
by サンフランシスコ人 (2016-12-18 06:44) 

サンフランシスコ人

「セントルイス→ロバートソン..」

St. Louis Symphony extends David Robertson’s contract through 2019, his final season
By Alex Heuer • 1 hour ago

http://news.stlpublicradio.org/post/st-louis-symphony-extends-david-robertson-s-contract-through-2019-his-final-season
by サンフランシスコ人 (2016-12-21 03:57) 

阿伊沢萬

デトロイト響の公演。ほんとうはボタペックでガーシュウィンを聴き立ったのですが、日本での集客を考えると小曽根さんという選択は正解なのかなあ。ひどく残念ですが。
by 阿伊沢萬 (2016-12-21 12:38) 

サンフランシスコ人

アメリカのオーケストラは、ガーシュウィンをあまり演奏しませんから...
by サンフランシスコ人 (2016-12-22 01:40) 

サンフランシスコ人

デトロイト響の新音楽監督...

http://slippedisc.com/2020/01/detroit-takes-huge-risk-on-unknown-music-director/

Detroit takes huge risk on unknown music director

By norman lebrecht
on January 22, 2020
by サンフランシスコ人 (2020-01-23 03:20) 

阿伊沢萬

デトロイトはほんと大冒険です。一時ある大物と交渉していたようですが不発だったのかなあ。

どうなるかお手並み拝見です。
by 阿伊沢萬 (2020-01-27 01:59) 

サンフランシスコ人

デトロイト交響楽団はトロント交響楽団を真似した?
by サンフランシスコ人 (2020-02-04 02:45) 

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