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宮沢賢治の新世界交響曲 [宮澤賢治のクラシック]

宮沢賢治の愛聴したベートーヴェンの田園交響曲というと
以前も書きました
プフィッツナー指揮によるレコードですが
http://blog.so-net.ne.jp/ORCH/2005-10-26

「銀河鉄道の夜」に登場する「新世界交響曲」にも
そのイメージとなった演奏があるようです。

それが1924年に録音されたハミルト・ハーティの指揮
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3
(ハミルト・ハーティ(Wikipedia))
ハレ管弦楽団の演奏による
ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」といわれています。

だが残念なことにこの演奏自分は未聴でなんともいいようがない。
録音が1925年に出現したアコースティック録音以前のものなので
音質は古色蒼然といったものだったのではないかと予想できるのですが…。

そこでこの演奏に最も近いのではないかという演奏をひとつ紹介したいと思います。
それはこの1924年と同じ組み合わせによる
ハーティ指揮ハレ管弦楽団による1927年録音の「新世界より」です。

(CD HLT 8000)

これは1924年にアコースティック録音で録音した同曲を
翌年開発された格段に優れた電機録音によって再録音したとおもわれるもので
1929年のプフィッナーの田園同様
アコースティック録音より格段に優れた音質となっています。

演奏は1924年のそれを聴いていないのでなんともいいようがないのですが
三年しか録音が違わないことを考えると
おそらくこの1927年盤は1924年のそれと音質以外
演奏的には大差は無いのではという気がします。

ただ録音に制約が少なくなった分
一度に録音できる時間制約はあいかわらずあったものの
より大胆な解釈になった可能性はあるかもしれません。

ところで演奏ですが演奏時間は
7:36,10:44,5:46,9:53
と比較的早めのテンポですが
かなり緩急の付け方が頻繁かつ大胆で
しかもティンパニーや低音弦が随所に強調された演奏になっており
オケは多少粗いものの
なかなか個性的かつ力強い演奏となっています。

有名な第二楽章は意外なほど淡々としており
力強く劇的ではあるもののそれほどロマンティックではなく
むしろ素朴な感じがしたものでした。
ただメロディの歌いこみなどはなかなか聴かせるものがあり
淡々とした中にも心からの歌が満ち溢れているような詩情を湛えたものとなっていました。
これを聴くと賢治がこの曲に歌詞をつけ
「種山ケ原」という曲をつくったというのもうなづける気がしたものでした。

ただもちろんこれはこの演奏が三年前の録音と同じという上での話しでして
あくまでも仮の上の話しということでご了承ください。

尚一説にはこの1927年の演奏こそじつは賢治が聴いた新世界そのものであるという
そういう説もあるようです。
ただ賢治の「種山ケ原」の歌詞をつくった年を考えるとどうなのでしょう。
このとき聴いた新世界がハーティのものでなければそれも有りなのでしょうが
それはそれでまた新たな疑問がわいてくるものがあります。

とにかく賢治が愛した新世界交響曲、
そしてその元となったハーティ指揮ハレ管弦楽団の演奏。
じっさい聴いていた演奏とは多少違うと思われますが
その一端を垣間見れる演奏として一応ここにご紹介しておきたいと思います。

ただこのCD現在廃盤とのこと、
たいへん残念ですが、ひょっとすると中古やどこかの店頭にまだあるかもしれません。


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大石良雄

拝啓 この奥の深いサイト様には日美お世話になり有難うございます。
今回「宮沢賢治の聴いたクラシック」 ご紹介頂きまして直ちにオーダーをいたしました。何分ど田舎であり、その中でも最大の大手書店でもかなりの時間がかかり、納期が遅れておりますが必ず入手する所存です。
宮沢賢治氏が、実はかなりの音楽愛好者であり、隠れたインテリジェンスだった事は解ってはおりましたが、サイトヘッド様のご教示により、此処まで凄かったのか?と。実は以前より知っておりました「都内幡龍寺ヴェンタインレーベル=吉田哲&児島由美夫妻のスタジオ、レーベル会社」で、「宮沢賢治のオルガンを訪ねる旅」と言うミニ番組があり、実際に現地に赴いてオルガンを弾かせてもらい、音と映像を収録したのですが、何せ時間が短く決して満足しきれないものもありましたが、その企画は見事でとても良かった。このオルガンの始めて聴く優しい音色に、こうして宮沢賢治氏は音楽していたのだと感無量でした。あの時代、あの地方でこれだけのクリエイティヴワークを実践していた人が居た事は素晴らしいではありませんか。富田勲先生が強く影響されたのも解る気がいたします。
更に聴いていた演奏者が凄い、、、「オスカーフリード、プフィッツナー、親父クライバー、ハミルトハーティー、バスターナック、二キシュなど等」物凄いメンバーには驚きました。正直「ハーティー、バスターナック等は、名前だけおぼろに知っていた程度の方」でしたから、、、勉強させて頂きました。また「ストコフスキー、メンゲルベルグが見当たらない」とサイトヘッド様は言われますが、これは何となく想像がつきまして、あまりにクセが多いと。楽譜の改変と言うよりも「編曲、トランスクリプション」と言うべきか、最初にこの方々の演奏を聴いてしまうと「変な勘違い」してしまう場合もあのますからね。賢治氏は本能的に知っていたのかもしれませんね。
そういえば「トスカニーニも見当たらない」様ですがこれは意外で、まぁ本格的録音が1921年以降ということで、当時はこれからの人だったのかもしれませんが。 今回驚くのは「その当時の賢治氏コレクションの再現」と言う事。大抵は「曲目だけは同じでも、最新のDDD音源の演奏を使って茶を濁す」程度の三文企画が通り相場ですが、この企画は本当に素晴らしいと感嘆いたしました。宮沢賢治氏と同じ土俵で同じ音が聴けるって、何か夢の中にいるような気がしてしまいます。今も大手書店の担当者の尻を叩き、早く入れる様にせっつきましたが、今回この様な素晴らしい情報をご教示頂き、本当に有難うございました。 敬具
by 大石良雄 (2017-07-28 12:25) 

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